AIは広報の仕事を奪うのか?PR「再定義」の全貌
はじめまして。株式会社アンティルの経営企画室長を務めております、中野晋太郎と申します。アンティルは、アジア最大のPRグループであるベクトルグループの一員として、主にPRのコンサルティングを提供している会社です。
この度、アンティル社のnoteにて『AIは広報の仕事を奪うのか?PR・マーケティング「再定義」』と題した連載を開始させていただくことになりました。
近年、生成AIをはじめとするAI技術の進化は目覚ましく、私たちの社会やビジネスに急速な変化をもたらしています。それは、私たちが身を置くPR・マーケティング業界においても例外ではありません。
「AIの登場によって、広報やマーケターの仕事はなくなってしまうのではないか?」
――そんな漠然とした、しかし無視できない不安を感じている方も少なくないのではないでしょうか。
メディアリレーションズ、コンテンツ作成、効果測定、レピュテーション管理… これまで私たちが担ってきた業務の多くが、AIによって自動化・効率化される可能性が示唆されています。例えば、消費者の情報収集は従来の「検索」からAIとの「対話」へシフトしつつあり、商品やサービスの意思決定プロセスにおいても、AIエージェントが個人の嗜好や過去のデータを分析し、最適な選択肢を提示するようになる未来がすぐそこまで来ています。これは、私たちがこれまで前提としてきたコミュニケーション戦略の根底を揺るがしかねない変化です。
では、本当にAIは私たちの仕事を「奪う」のでしょうか?
私は、その答えは「No」であり、同時に「Yes」でもあると考えています。より正確に言えば、AIは既存の仕事を単純に奪うのではなく、PR・マーケティングという仕事そのものを「再定義」する触媒となる、というのが現時点での私の見解です。確かに、プレスリリースの草案作成や、大量のデータ分析、定型的なレポーティングといった業務は、AIが得意とするところでしょう。これらの領域においては、AIを活用することで、人間が行うよりもはるかに高速かつ効率的に業務を進められるようになるはずです。しかし、それは必ずしも「仕事がなくなる」ことを意味しません。むしろ、これまで時間のかかっていた作業から解放されることで、私たち人間は、より本質的で付加価値の高い業務に集中できるようになるのではないでしょうか。
さて、PRの本質とは何でしょうか?
私は、企業やブランドを取り巻く様々なステークホルダー(生活者、メディア、株主、従業員など)との間に、良好で長期的な関係性を構築し、「共に動いてくれる仲間を作ること」だと捉えています。この本質は、AI時代においても変わることはありません。しかし、その「関係」に至るためのアプローチ、つまり戦略や手段は、AIによって大きく変わらざるを得ません。AIが生成する膨大な情報の中で、いかにして自社のメッセージを届け、共感を呼び、信頼を獲得するか。AIによるレコメンドが消費者の意思決定に大きな影響を与える中で、どのようにして自社ブランドが「選ばれる」存在となるか。AIが自動化できない、人間の持つ共感力、創造性、倫理観、そして複雑な状況を読み解き、最適解を導き出す戦略的思考力こそが、これからのPR・マーケティングパーソンにとって、より一層重要なスキルとなるはずです。
この連載では、AIがPR・マーケティング業界にもたらす具体的な変化を読み解きながら、これからの時代に求められるスキルセット、AIとの協業のあり方、そして変化に対応するための組織戦略などについて、戦略PRの最前線で得た知見も交えながら深掘りしていきたいと考えています。また、その考察の過程においては、情報収集や分析、アイデアの壁打ちなどにAIを積極的に活用し、その実践的な知見も共有できればと考えています。AIという未曾有のテクノロジーとどう向き合い、それを活用してPR・マーケティングを進化させていくのか。この連載が、業界に関わる皆様と共に未来を考え、創造していくための一助となれば幸いです。
次回以降、具体的なAI活用事例や、求められるスキルの詳細について掘り下げてまいります。どうぞご期待ください。
※本記事(及び本連載)の作成にあたっては、情報収集や構成案の検討においてAIを活用しています。