昨日から始まった「AIは広報の仕事を奪うのか?PR「再定義」(PR×AI)」連載。最初に取り上げるテーマは消費者行動の変化です。本日は2026年に我々の消費行動はどう変わるのかを考えていきたいと思います。
~情報収集から意思決定まで~
生成AIとパーソナルエージェントがもたらす変化
前提として理解して頂きたいのは、2026年には、商品やサービスを探し、購入を決める、この一連のプロセスが、生成AI、そしてパーソナルAIエージェントによって、根本的に変わる可能性がある、ということです。
これまでは自分で検索したり、お店をハシゴしたり… アナログな情報収集が主流でした。しかし。これからは違う。AIとの『対話』を通じて、必要な情報を、最適な形で手に入れる。この「検索から対話へ」というシフト、これはもう避けられない大きな流れなのです。
現に、ChatGPTのような生成AIツール、これを製品選びに活用している消費者は、すでに大勢います。ある調査によれば、なんと約6割が製品選びの際に生成AIを活用しているそうです。従来の検索エンジンではなく生成AIに対してSNSや公式サイトといったプラットホームを跨いで情報をまとめさせ、それを参考にしているそうです。
そして、ここが面白いんですが、AIとの対話は、単なる情報収集に留まらず消費者が自分自身では気づいていなかった『真のニーズ』、いわば潜在的な欲求を、AIが掘り起こしてくれるケースすらあるそうなんです。
例えば、ある消費者がAIに「週末にリラックスできる近場の旅行先を探している」と相談したとしましょう。AIは単に候補地を挙げるだけでなく、「どのような過ごし方でリラックスされるのがお好みですか?」「自然の中で静かに過ごしたいですか、それとも美味しいものを楽しみたいですか?」といった対話を重ねるかもしれません。その中で消費者が「普段、仕事でデジタル画面ばかり見ているから、とにかく緑が多い場所で目を休めたい」といった(本人もそこまで強くは意識していなかった)本音を漏らしたとします。
するとAIは、当初本人が考えてもいなかったような、「それでしたら、温泉地よりも、むしろ森林セラピーが体験できるこちらの高原リゾートはいかがでしょう。豊かな自然の中で過ごす時間は、デジタルデトックスにもなり、きっと心身ともにリフレッシュできるはずです」といった提案をしてくる。
これは、単なる「近場の旅行先」という表面的な要求の奥にあった、「デジタル疲れを癒やし、自然の中で心身を回復させたい」という、より本質的な、しかし本人も明確には言語化できていなかった潜在的なニーズを、AIとの対話によって引き出した、ということなんです。こういうことが、これからのAIとの関わりの中で、より頻繁に起こり得るわけです。
劇的に変化する意思決定のプロセス
意思決定のプロセスも、劇的に変わります。「自分で比較検討して悩む」のではなく、「AIエージェントと共に最適解を導き出す」。AIが膨大なデータ、過去の購買履歴、ユーザーレビューを瞬時に分析し、的確な選択肢を提示する。だから、比較検討にかかる時間と労力、これは大幅に削減されるんです。
結果、どうなるか。たとえ高額な商品であっても、よりスピーディに、より直感的に、そして「これだ!」という納得感を持って購入できるようになる。そういう時代が、もうすぐそこまで来ているんです。
さらに未来的な話をしましょう。AIによる『自動購買』です。AIエージェントに、購入手続きそのものを、いわば「アウトソース」する。定期購入品の自動補充、最適料金プランへの自動切り替え… 面倒なルーティン作業は、AIがバックグラウンドで処理してくれる。想像してみましょう、これが当たり前になった社会を。
この『自動購買』、今はまだ黎明期ですが、これが本格的に普及した時… 我々が知るマーケティング戦略は、その根幹から変革を迫られることになるでしょう。企業にとってはどうか。自社の商品情報が、これらのAIに正しく理解され、そして『推奨』リストに載るかどうか。これが、まさに企業の生命線を握ることになるんです。
消費者は何を『信じる』のか。AI時代の信頼のカタチ
次に考えて頂きたいのは、信頼の源泉です。情報が溢れる中で、消費者は何を基準に選ぶのか。2026年には、SNSの口コミやインフルエンサーの発信といった『人』を介した情報。これと、AIがデータに基づいて生成・集約した『推奨』情報。この二つが、購買判断を左右する二大潮流となる。そのように考えて頂きたいのです。
しかし、考えて頂きたいのですが、ネット上に溢れる膨大なレビュー、一つ一つ読んでいられますか。無理ですよね。だから消費者は、「AI、要点をまとめてくれ」と期待するようになる。これは自然な流れです。そしてAIのレコメンドも進化します。単なる平均点ではなく、ユーザー一人ひとりの好みや状況、文脈に合わせて「あなたにとってのベストアンサー」を提示する。ここまで来るんです。
ただ、ここで絶対に忘れないで頂きたいのが、『透明性』と『公平性』です。AI主導のレコメンドが力を持つほど、その根拠が問われる。「なぜ、これを勧めるのか」、その理由が見えなければ、消費者は「どうせ広告だろう」「何か裏があるのでは?」と、たちまち不信感を抱きます。これは当然です。専門家も指摘するように、企業は推奨ロジックの透明性を確保し、説明責任を果たす。これができなければ、信頼は得られないんです。
もちろん、インフルエンサーや一般消費者の「生の声」も依然として重要です。しかし、AIが多様なデータを公平に分析することで、一部の極端な意見に流されない、バランスの取れた視点を提供できるというメリットもあります。企業が本当に目指すべきは何か。それは、幅広い顧客の『満足』を追求すること。結局はここに尽きるんです。
『体験』が価値を生む時代へ。テクノロジーとリアルの融合
さあ、次は『体験』の話です。買い物は、もはや単なる「モノの入手」ではなくなります。
リアル店舗では何が起きるか。『感情認識AI』です。お客様の表情、声のトーンから、その心の動き、満足度や興味の度合いをリアルタイムで読み取る。そして、接客応対やプロモーションを、その場で最適化する。オンラインでも同様の動きがあります。個々の顧客に合わせた、究極のパーソナライズへの挑戦です。もちろん、プライバシーへの配慮や、技術的な精度、文化差への対応など、課題はあります。しかし、この流れは止まらないでしょう。
そして、デジタルとフィジカル(リアル)の『融合』。店舗は、単なる販売拠点から、ブランドの世界観に浸る『体験空間』へと進化します。「そこでしか味わえない体験」こそが、価値になるんです。ARやVRで、購入前にリアルな使用感をシミュレーションする。リアルとバーチャルを行き来し、深く納得してから購入する。これが、後悔のない、満足度の高い買い物へとつながるわけです。店舗での魅力的な演出、五感を刺激するイベント… こうした『体験』こそが、顧客の心を掴み、ブランドへの愛着を育む。ここも押さえて頂きたいポイントです。
消費者の『動機』、そして我々の『ビジネスモデル』は?
これらの変化は、当然、消費者の『買う理由』、すなわち購買動機、そして我々企業側のビジネスモデルにも、大きなインパクトを与えます。
まず、『利便性』への飽くなき欲求。「手間をかけずに、良いものを手に入れたい」。この思いは、ますます強くなるでしょう。AIが最適な商品を提案し、購入までスムーズに導いてくれるなら、多少価格が高くても選ばれる。サブスクリプションモデルが様々な分野で普及しているのが、その証左です。
しかし。ここに落とし穴もある。便利になりすぎることで、特定のブランドへの『こだわり』が薄れる危険性があるんです。「AIが勧めるなら、何でもいいか」と。AIの最適化の陰で、自社ブランドが埋没してしまうかもしれない。だからこそ、企業は今、コミュニティ醸成やD2C(Direct-to-Consumer)といった手法で、顧客との『直接的な関係構築』に必死になっているんです。この動き、見逃せませんね。
同時に、『価値観』による消費。環境問題、社会課題への配慮。これも、もはや選択の前提条件です。サステナブルな素材か。公正な取引か。消費者は企業の『誠実さ』を見ている。D2Cブランドが支持を集める理由の一つも、ここにあるでしょう。そして忘れないで頂きたいのが、生成AIの普及です。これにより、比較的小さなチームでも、高度なマーケティング戦略を実行できるようになった。つまり、競争のルールそのものが変わりつつあるんです。
では、我々はどうすべきか。未来への戦略的視点
長くなりましたが、まとめです。これらの変化を踏まえ、我々PRやマーケティング、そして経営に携わる者は、どのような視点を持つべきか。重要なポイントは5つです。
- 『AIファーストの情報整備』: AIが「なるほど」と理解できる商品データ、コンテンツを用意する。これは大前提です。今後はAI-SEOも重要視されてくるでしょう。
- 『徹底した透明性と説明責任』: レコメンドの根拠、データの扱い、これを誠実に開示する。信頼なくして未来はない。
- 『パーソナライズド体験の深化』: 技術を駆使して、「あなただけ」の特別な体験を創造する。ここで差をつける。
- 『ダイレクトな関係構築』: コミュニティを育て、顧客とのエンゲージメント、絆を深める。ファンを作るんです。
- 『らしさ』による価値創造: 価格や機能だけじゃない。そのブランドならではの価値、ストーリーで心を掴む。これが本質です。
2026年の購買行動。それは、消費者主導、体験重視へと、大きく、そして不可逆的にシフトしています。これは、企業にとっては挑戦です。しかし、見方を変えれば、真に顧客と向き合い、戦略を転換するならば、AIという強力な羅針盤を手に、顧客との関係性を、かつてないほど深める絶好の機会でもある。新しい技術を、単なる効率化の道具と見るか、顧客理解を深め、未来を切り拓く武器と見るか……ワクワクしてきませんか?
2026年の変化ですら、これほどダイナミックです。しかし皆さん、技術の進化というものは、決して止まることはありません。そのわずか一年先、2027年には、今回見てきた動きはどのように加速し、深化し、我々のビジネス、そして生活をどう塗り替えているのでしょうか。 さあ次回は、さらに未来へと視点を進め、2027年の購買行動とそのインパクトについて、より解像度高く読み解いてまいります。この目まぐるしい変化の最前線、しっかりと見据えていきましょう。ご期待ください。
※本記事(及び本連載)の作成にあたっては、情報収集や構成案の検討においてAIを活用しています。