こんにちは。インターンの樽見です。
今回は、大学院の研究をしながら、アーリーリフレクション(以下:アーリー)でインターンをされている修士2年の国方さんにお話を伺いました。
-大学院での専攻と研究内容を教えてください。
情報工学を専攻し、手のハイパースペクトル画像を用いた生体認証の研究をしています。
ハイパースペクトル画像は、通常のカメラが赤・緑・青(RGB)の3チャネルの情報を有するのに対し、数十から数百の波長帯域で構成されるより詳細な情報を有します。この詳細な情報をもって、メラニン色素やヘモグロビンの含有量など人の目では確認できない個人間の差異を捉えることが可能です。この特性を活かし、被写体の状態を詳細に評価し、生体認証への応用を探る研究を行っています。例えば、「ハイパースペクトルカメラで撮影された手、それも限られた一部の画像領域だけからその手が誰の手か分かる」といったような具合です。
-なるほど。とても興味深い内容ですね。アーリーでインターンを始めたきっかけは何だったのでしょうか。
去年、修士1年の夏に画像の認識・理解シンポジウム(MIRU)に参加した際、大学院の先輩であり、アーリーで働いている脇田さんにお会いしました。そのときにインターンを紹介していただいたのがきっかけです。
初めての学会で周りのレベルの高さを実感したことによる焦りや、特にこれといった経験を積めなかった学部時代への後悔もあり、このままではいけないと思っていた矢先に舞い降りたチャンスでした。
研究だけでは自分の専門領域以外に触れる機会が少なく、IT関連で他の分野にも触れてみたいという思いもあり、新しい環境で学びながら成長できるインターンに挑戦しようと決めました。
-実際にアーリーでインターンを始めてから、どのようなプロジェクトに携わってこられたのですか。
1年間で主に二つのプロジェクトに携わりました。一つ目は、点群を用いた河川の異常検出のプロジェクトです。現在、河川の異常(例えば、斜面の土砂崩れの兆候など)は人が現地に足を運んで目視で確認するのが一般的ですが、これには時間やコストがかかります。そこで、アーリーのプロジェクトの一貫として、点群データを活用して自動的に異常を検出することの有用性や実現可能性について調査しました。
点群データとは、レーザースキャナーや写真測量などの技術を用いて取得する3次元の座標データの集まりです。例えば、専用のセンサーを搭載した車両を河川沿いに走らせ、地形データを取得することで、異常が起こりそうな部分を検出できます。
実際の業務では、点群データの解析や、関連する論文の調査を担当しました。
-業務を通して苦戦したことや、新しく学べたことなどはありましたか?
学校で点群に触れる機会があったため基本的な理解はあったものの、研究分野外の領域ということもあり、分からないことだらけでした。特に、専門的な論文を読むのは最初は難しく、苦戦しましたが、少しずつ理解が深まり、新しい技術について学べることがとても面白かったです。
とはいえ、実務において自分がどれだけ貢献できているのかという点では、もどかしさを感じることもありました。社員の方々にサポートをしていただく中で学んだこととしては、業務の進め方や実務で求められる視点です。特に、社員の方が作成したクライアント向けの報告書を見て、リサーチ結果をどのように整理し、伝えればよいのかという具体的なアウトプットの方法を学べたことは大きな収穫でした。
また、データの取得方法によって精度が大きく変わるため、どのようにすればより正確なデータを取得できるかという点も重要な課題でした。
完全な自動化は難しいという見解に至ったものの、「異常がありそうな場所が分かるだけでも現場の職員の負担が大きく減る」というクライアントの声を聞くことができ、とても意義深い経験ができたと感じています。人の作業を少しでも減らせるということに、技術の価値を改めて実感しました。
-実案件に携わられていたのですね!もう一つのプロジェクトについても教えてください。
もう一つのプロジェクトは、緊急対応リソースの適正配置の予測です。
限られたリソースの中で、緊急対応が必要となる場所や時間帯を予測し、どこにどれくらい配置すれば効率的かを検討する必要があります。そこで、過去の対応データと機械学習を活用し、発生確率を予測するモデルの開発に携わりました。
この予測には、過去の記録データに加え、対応の緊急度(低~高など)、その日の気象条件、地域の人口など、さまざまな情報を組み合わせています。こうしたデータを基に、事前に適切な場所へリソースを配置できれば、対応時間の短縮や迅速な対応に繋げることができます。
-実際の社会問題に関わる、とても意義深いプロジェクトですね。このプロジェクトでも難しかったことや新たな学びなどがあれば教えてください。
大学院では機械学習の研究室に所属しているため、その知識を活かせる場面もありましたが、実際の業務では統計の知識が求められることが多かったので、畑違いの分野のキャッチアップに苦労しました。学部時代に統計を学ぶ機会はあったものの忘れてしまっている部分も多く、最初はなかなか思うように進められずに焦りを感じることもありました。
そんな中で、統計学を学んでいる友人に相談しながら少しずつ理解を深め、手探りではありますが、業務に活かせるようになりました。自分の専門外の分野に挑戦する難しさを実感すると同時に、新しい知識を身につけることでできることが広がるという面白さも感じています。
-大学院の研究とインターンを両立されていて素晴らしいです。国方さんの稼働形態(出社/リモート)や稼働頻度について教えてください。
フルリモートで働いており、主に大学の研究室で作業することが多かったです。
稼働頻度は時期によって異なり、週4日働くこともあれば、論文執筆や学会、就活などで忙しい時期は月3回程度のこともありました。スケジュールが柔軟に調整でき、忙しい時期を考慮していただけたのはとても助かりました。
-大学院での研究とアーリーでの実務経験の相乗効果を感じた点はありますか?
情報工学という同じ分野で、研究と実務の両側面から触れ続けることができたのが良かったです。相乗効果としては二つありました。
一つ目は、論文を読むことへの抵抗感が薄れ、読むスピードが上がったことです。私の研究テーマは新しい分野で先行研究が少なく、以前は論文を読むことに苦手意識がありました。しかし、アーリーの業務を通じて多くの論文を読むうちに、次第に慣れ、知らない分野を学ぶ面白さにも気づきました。その結果、自分の研究と異なるテーマの論文でも、タイトルを見て興味を惹かれたら読んでみるということが増えました。
二つ目は、コーディング能力の向上です。研究だと同じコードしか書かないのでそこまでコーディング能力が上がらなかったのですが、アーリーの業務ではゼロから新しく作るので、新しいコードを触る機会が増え、コーディング能力が上がりました。
-なるほど。論文を読むスピードが上がったという点に関しては、私もアーリーの市場調査で論文を読む機会が多いので共感しました!コーディングの言語は何を使われているのでしょうか?
アーリーの業務でも私の研究でも、使用する言語はPythonで共通しています。しかし、研究では画像データ、アーリーでは点群データを扱うため、データの構造や処理方法が大きく異なります。さらに、使用するモジュールも異なるので、できるコーディングの幅が広がりました。
-インターンをする中で、アーリーの社員の雰囲気についてはどう感じましたか?
皆さん仲が良く、とても楽しそうな雰囲気だと感じました。SlackにはTwitter(X)のようなチャンネルがあり、社員の皆さんが日々つぶやいているのも面白かったです(笑)。
また、業務で分からないことがあり社員の方に質問する機会が多くあったのですが、皆さん忙しい中でもSlackですぐに反応してくださったり、必要に応じてミーティングを組んでくださったりと、とても親切に対応していただきました。
説明の際は自分の理解度に合わせて分かりやすく話してくださり、社員の方々の気遣いや知識の深さを改めて実感しました。
-インターン全体を通して得られたことは何ですか?
ITという枠組みで自分の研究テーマ以外のことにも挑戦できたのは貴重な経験でした。自分の至らなさを痛感し、もっと勉強しなければと感じる日々でしたが、新しい分野を学べることは面白かったです。
また、学校で研究をしているだけの時は、ITがビジネスの文脈でどう使われるかということが分からなかったのですが、アーリーでの業務を通して、ITがどのように仕事として成り立つのかを学ぶことができたのは大きな収穫でした。
-最後に、どんな人にアーリーのインターンをおすすめしたいですか?
一番向いているのは、研究テーマを持ちつつ、それ以外の分野にも挑戦してみたい人です。
また、「これがやりたい」と明確に決まっているわけではないけれど、ITのさまざまな分野に触れてみたいと考えている人にも、アーリーのインターンはピッタリだと思います。
国方さん、ありがとうございました。卒業後のさらなるご活躍をお祈りしています!
▼卒業前最後の社内交流イベントで、大学院での研究・アーリーでの取り組みについて発表していただきました!