そのDXは投資ですか? | Magazine | FirstDigital
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今なお遅々として進まないDXですが、その要因の一つに、デジタル活用を過去のビジネス活動の延長線上で考えている、ということが挙げられるのではないかと思います。
たとえば電話、あるいは携帯電話が普及したことにより、それまでは郵便や対面でなければ不可能だったコミュニケーションが遠隔で行えるようになりました。またEメールの活用が一般化したことで、非同期でのコミュニケーションが可能になりました
しかしこれらは、あくまでそれまでの郵送や対面によるやり取りをより便利に行えるようになったというだけで、ビジネスの進め方自体は過去の延長にあるものです。
DXにおいては、デジタル技術の特性を把握し、デジタルファーストでの業務の再構築というパラダイムシフトが必要になります。
すなわち、
という特性を踏まえ、まずは全ての業務をゼロベースでデジタルによる再構築を目指す必要があるのです。
その上で、どうしても複雑な判断が必要な場面において「人間がデジタルツールを補助する」というスタンスで業務フローを設計していく必要があります。(NTTドコモ社のahamoなどはその意味でもDXにおけるの良い取り組みの例ではないでしょうか)
昨今見られる大半のDXへの取り組みのように、既存の業務フローは最大限維持したまま、人的運用の負荷を減らすためにデジタルツールを利用して「人間の補助をする」という発想では、コストばかりがかかり成果はほとんど得られない、という結果に終わってしまいます。
DXへの取り組みにおいては、DXへの投資には効果が出る閾値が存在する、という点も理解しておく必要があります。
たとえばマーケティングにおいては、1度のキャンペーンにおいて1000万の予算を投下すると1000人のユーザーを獲得できるとしても、100万の投資では100人のユーザーを獲得できるとは限らない、場合によっては1000万未満の投資では獲得ユーザーは限りなく0に近い、ということが起こり得ます。
この場合、逐次予算を投下してトータルでは1億円以上の投資額に達したとしても、1回の投資で閾値である1000万を超える投資を行わない限りは、何の成果も得らないことになります。
DXへの投資もこれに似た部分があります。
例えばごく一部の部署のみにチャットツールを導入したとしても、その部署と別の部署のコミュニケーションが頻繁に発生するのであれば、単にコミュニケーションの経路が増えただけでむしろ生産性が下がる可能性すらあります。
また、その投資が本当に「投資」なのかどうかも吟味が必要です。
例えば競合他社に対しデジタル化が遅れているがために、採用や生産性において遅れを取っているとするならば、そのギャップを埋めるための出資はもはや「投資」ではなく「借金返済」と捉えたほうが良いのではないでしょうか。
ペーパーレス化ができておらず全てのデータはデジタル化されていない、チャットやWebミーティングツールが導入できておらずリモートワークができない、紙の領収書で経費精算を行っており必ず経理に書類の提出が必要etc etc……
そのような状況におけるDXへの投資は、残念ながらもはや「費用対効果の見極めのためにスモールスタート」ができるレベルを超え、計画的に返済が必要な借金と化していると捉えるべきです。
グローバル化の進む現在、製品開発だけではなく営業や販売、さらには人材の採用に至るまで、今後ますます海外の競合との競争は激化するでしょう。
そのような環境の中で、データを活用し、ルーチンワークを廃して生産性を向上させ、従業員のクリエイティビティを最大限に発揮させて企業として生き残っていくためには、まずその前提条件として全ての情報をデータ化し、業務を自動化できる地盤づくりが必要不可欠です。
一方で企業体力的にDXへの対応は難しい、という場合には、いっそ極めてドラスティックな方向に振り切るのも、戦略としては有効かもしれません。
DXは、デジタルであるがゆえに、投資額においても対応の有無においても、0か1かの極めて明確な選択を強いてくるのです。
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