メタジェンセラピューティクス(MGTx)は2026年4月、川崎拠点で治験薬製造・品質管理に従事する若手社員3名による座談会を実施しました。登壇者はいずれも、既存の製薬GMP工場[1]や食品工場・バイオベンチャーから転職してきたメンバー。「菌を排除すべき対象」として扱ってきた現場から、「菌そのものが医薬品」になる現場に飛び込んだ3人の目に、腸内細菌叢移植(FMT: Fecal Microbiota Transplantation)[2]の製造現場はどう映っているのか。リアルな声をお届けします。
「うんちを薬にする会社」に辿り着いた理由
鬼頭:鬼頭一平と申します。入社は2025年1月で、普段は山形県鶴岡市の採便・原材料サイト[3]で製造を担当しています。今は川崎に出張で来ています。前職は2社で、ジェネリック医薬品の品質管理工場と、再生医療系のバイオベンチャーで細胞培養の製造法・試験法を担当していました。
中島:中島健太です。2025年2月に入社して、川崎拠点で品質管理を担当しています。これまでバイオ医薬品の製造・品管と、ジェネリック低分子の品管を経験してきました。
小暮:小暮彰太です。2024年4月入社で、ちょうど2周年を迎えたところです。川崎の治験薬工場でカプセルの製造を担当しています。前職は食品工場でヨーグルトを作っていました。大学は畜産系で、乳酸菌の研究をしていました。
鬼頭 一平(きとういっぺい) MGTx CMC部。ジェネリック医薬品の品質管理、再生医療系バイオベンチャーでの細胞培養製造を経て、2025年にMGTxへ。普段は鶴岡の採便・原材料製造サイトに勤務し、現在は川崎に出張中。
中島 健太(なかしまけんた) MGTx CMC部 品質管理担当。複数の製薬企業・バイオベンチャーでのQC経験を経て、2025年にMGTxへ。川崎拠点の品管立ち上げに参画。
小暮 彰太(こぐれしょうた) MGTx CMC部 製造担当。大学で乳酸菌を研究し、食品工場でヨーグルト製造を3年経験した後、2024年にMGTxへ。川崎拠点の最年少メンバー。
鬼頭:僕はそもそも潰瘍性大腸炎[4]の患者です。自分ごととして調べていたら腸内細菌叢移植(FMT)という治療法があることは知っていたんです。学生時代も腸内細菌に近い研究をしていて、「バイオベンチャーで腸内細菌をやっている会社」で探したら、MGTxしか出てこなかった。他の人みたいにエージェント経由じゃなく、ここ一本で応募して、入りました。なるべくしてここに来た、という感覚はあります。MGTxじゃなかったら、たぶん前職で正社員になっていたと思います。
中島:僕はバイオベンチャーが2社目、昔ながらの製薬企業でのQCが2社、という経歴で。働き方としてはバイオベンチャーのほうが自分に合ってるなと感じていました。その上でもう一度バイオベンチャーを探したときに、「便を使った薬」というのがめずらしくて、興味を持ったんです。いえ、意外とウケはいいんですよ(笑)。
小暮:僕の場合は、食品業界にいましたが、自分の会社の先行きも見えにくくなっていて、転職サイトに登録したのが始まりでした。MGTxの応募要項には1つも当てはまっていなかったんですけど、「薬を作れるぞ」という内容が面白そうで、ダメ元で応募してみた。面接で話す方がみんなキラキラ未来を語っていて、「ここは楽しそうに働けそうだな」と感じました。気づけば最終面接まで進んで、運よく拾っていただけた、という感じです。
菌を排除しない世界?
鬼頭:前職のジェネリックの注射剤は、菌がいちゃいけない世界でした。細胞培養もコンタミしたら終わり。リスクを徹底的に排除していく考え方。
そこから来ると、ここは真逆なんですよ。「菌が大事」という世界に来た。最初は、「じゃあ、いい菌がいる状態ってどうやって評価したらいいんだろう?」というところから、全部自分たちで組み上げていく必要がある。
ただ、そこをゼロから設計できるのが、この職場の一番いいところだと思っています。
中島:同じだなと感じるのは、GMPを遵守するという意識そのものですね。そこは会社が違っても変わらない。違うのは、人数が少ないぶん、「満点を目指すより、まず最低限を満たして、足りないところに優先順位をつけていく」という発想で仕事ができることです。大手企業だと、分業化が進みプロジェクトの目的を見失って、手段が目的化してしまう。例えばGMPの要件を満たすために仕事をしている、みたいな状態に近づいていく。うちは、ちゃんと目的に沿って仕事ができるんです。
小暮:僕は食品業界から来ているので、そもそも比較対象が違うんですけど(笑)。前職だと、年上の方に「これどうですか?」と意見を求められる機会は、ほぼなかったんです。教わる側・指示される側。ここに来て一番驚いたのは、新卒上がりみたいな経歴の自分の話でも、先輩から部長まで、最後まで聞いてくれることでした。「それは経験上いいよ」で切られない。
──いわゆる減点方式か、加点方式かで言うと?
鬼頭:ミスに対して、そんなに重く見られる環境ではないですね。もちろんミスは良くないんですけど、「そのミスは何にチャレンジした結果なのか」のほうを見てもらえる。新しいことをやろうとしない文化じゃないんです。
中島:ルールが全部決まっていない領域なので、「これ、こうしたほうがよくないですか」を上司に相談して、取り入れてもらえる。そこがやりやすさの源だと思います。
3人で、すべてを担う。
小暮:1日のスケジュールは、正直、生産スケジュールにすごく依存します。忙しい日はお昼以外ずっと製造室で、製造業務のない日は一度も入らない日もある。年間でも、文書整備に集中する期間と、製造がぎゅっと集まる期間でぜんぜん違います。
中島:品管もまったく同じで、検体が来ない日は書類準備やデータまとめ、製造が走る日は試験、と、日によって役割をコロコロ切り替えるイメージです。
鬼頭:鶴岡と比べると、川崎はとにかく一人あたりのカバー範囲が広いです。治験薬GMP[6]として満たさないといけない基準・試験がいろいろあって、それを少人数で回していく。自分の担当領域では、自分が第一人者。裏を返せば、責任を持ってやらないとすぐに詰む、ということでもあります。
──雰囲気は「おとなしめ・真面目」と聞いていましたが、実際どうですか?
鬼頭:それ、外からよく言われるんですけど、ぜんぜんそんなことはないと思ってます(笑)。普通におしゃべりです。
小暮:人数が増えるほど喋らなくなるタイプではある気がしますね。
中島:3人で入ったら、けっこう話してますよね。
鬼頭:あと、鶴岡から原材料が川崎に届く瞬間は、個人的にはすごく感慨深いんです。自分が鶴岡で作った菌叢が、自分の手元に来て、カプセルになって、最後は患者さんに届く。「我が子を育てる」じゃないですけど、鶴岡の現場を見ているぶん、思い入れはあります。
中島:僕は鶴岡での製造は経験していないので、そこは正直、「仕事がやってきたな」くらいの気持ちですね(笑)。ただ、これがないとカプセルが作れないわけで、ありがたいな、とは思っています。
──経営層との距離感はどうですか?
小暮:前職だと、工場勤務で社長と話す機会なんてほぼなかったんです。「存在を知っている」くらい。当社は飲みに誘ってもらえるくらい気軽な距離感で、社長が何を考えているか分からない、という感じはないですね。
鬼頭:社長とランチに行って、味がわからなくなることはないですね(笑)。
誰かの治療の選択肢になる、という実感
鬼頭:川崎での僕のタスクは、わりと補助的な位置づけなので、「これが生産者の顔です」みたいな出方はできないんですけど、それでも、自分たちが作っているものが、潰瘍性大腸炎の患者さんの治療の選択肢になるかもしれない、というのはすごく大きな実感です。僕自身もその診断を受けた経験があって、僕は症状が軽いほうでしたけど、日常生活が守れないほど大変な方もいる。そういう方の選択肢の一つに、自分たちの製剤が並ぶ可能性がある。これはちゃんと、インパクトのある仕事をしているな、と思えます。
中島:バイオベンチャーの魅力は、これまでの医薬品では治せなかった病気に、新しい治療法を届けられる可能性があること。そこに携われるのは、誇りだと思っています。
──失敗からの学び、という意味ではどうですか?
中島:「失敗を無駄にしない」というのは意識的に持っています。失敗そのものは仕方がないけど、そこで終わらせずに次に必ず何か一つでも繋げる。それが止まった瞬間に、失敗だけが残ってしまう。
鬼頭:最初に僕がよく勘違いしていたのは、「全部ゼロから自分たちで作り上げなきゃいけない」と思い込んでいたことなんです。でも視野が広がってから気づいたのは、治験薬GMPの他のモダリティや、小暮さんのいた食品業界のやり方など、参考になる前例はいくらでもある、ということ。ゼロから作り上げるというより、前例を見つけてきて、うちの文脈にどう応用するかを考えるのが、本質的な仕事なんだな、と最近は思っています。
小暮:失敗は、まあいっぱいしてますよ(笑)。製造工程では逸脱[7]がいちばん分かりやすい失敗なんですけど、一度もやらかさないで製造工程を作れるはずもないので、「やらかしたところで、次どう対処する?」というのを考えやすい職場だな、というのは2年やってみて感じます。
採便という一番上流から最終製品までの流れを、自分の目で全部見ていること——それが、自分がこの拠点にいる意味だと思っています。
ルールは自分たちでつくる
──MGTxで働く上で、大事なマインドセットは?
鬼頭:参考にすべき前例はあるけれど、そこからどう派生させるか、どうメリットとリスクを比較するかは、自分で考えないといけない。そういうのが好きな人、自発的に学んで、自分の意見をちゃんとアウトプットできる人が向いていると思います。
逆に「自信がないです」と言い続ける人は、たぶん辛い。もちろん、自信がなくて助けを求めるのは全然OKで、この会社はちゃんとフォローしてくれます。ただ、もじもじしたまま動けないと、本人も周りも困ってしまう。
中島:能動的に動けないと厳しいと思います。特に、昔ながらの製薬GMPでルールに乗って仕事をしてきた方は、うちだと「そのルール、まだ作っている途中です」という状況に戸惑うかもしれない。薬事や周りと相談しながら、一緒に作っていく感覚が必要です。
──新卒や未経験の方でも大丈夫ですか?
鬼頭:新卒でも、リーダーシップを持って自分の領域を回したい人なら、全然いけると思います。自分の担当範囲では、ひとりチームのリーダーみたいなものなので。
中島:僕は少し違う意見で、新卒には実はやや厳しい環境かもしれないと思っています。バイオベンチャーは中途入社の方が多いので、「社会人の基礎」を教える体制としては正直整っていない。まず一般的な会社で基礎を作ってから来るほうが、本人のためになるケースもあると思います。
小暮:僕がこの会社で一番言わないといけない立場だと思うんですけど——未経験は全然いけます。応募要項に1つも当てはまらなかった僕が、2年間ずっと楽しく働いているので。
福利厚生などは、大手と比べると差があるのは事実です。なので「この会社が全てだ」と思い込んでしまうと、ちょっと狭い視野になってしまう。「こういう働き方の会社もあるんだ」と、一つの知識として吸収できる姿勢があれば、新卒でも十分いけると思います。
最後に
鬼頭:最後にひとつだけ。腸内細菌を医薬品に応用するというサイエンスは、本当に面白いんです。世界でもどんどん進んでいる領域で、この会社でできることは、まだまだ広がっていく。いろんな病気の患者さんのために働きたい、という人には、すごく合う職場だと思います。お待ちしています。
中島:僕は、仕事内容じゃなくて川崎という場所の話をさせてください。職場近隣の家賃はそこそこ高い。拠点の立地も通勤のアクセスが決して良いとはいえないので、家探しはかなり重要になります。そこをクリアできる方は、ぜひ。
小暮:働くのは、楽しいです。入社した当時からずっと楽しい。新しいことを学べる、挑戦できる、失敗しても「どんどんやって」と言ってもらえる。向上心があって、いろんなことに挑戦したい——そういう方に、ぜひ来てほしいなと思っています。
CMC人材募集中
メタジェンセラピューティクスでは、鶴岡拠点の原材料製造・品質管理を中心に、CMC人材の採用を強化しています。医薬品業界の経験がある方はもちろん、食品工場や医療機関からのキャリアチェンジも歓迎です。「地元・山形で医薬品づくりに関わりたい」「新しい挑戦をしてみたい」——そんな方のご応募をお待ちしています。
以上、当社CEO中原拓のNote(2026年5月2日)より。
<注釈>
[1] GMP工場:Good Manufacturing Practice。医薬品の製造管理・品質管理の基準に準拠した工場。手順・文書・逸脱対応まで含め、医薬品を安定的に作るためのルールブックのようなもの。
[2] 腸内細菌叢移植(FMT):Fecal Microbiota Transplantation。健康なドナーの便から調製した腸内細菌を、カプセルなどの形で患者に移植する治療法。MGTxはこのFMTを医薬品として開発している。
[3] 採便・原材料サイト:山形県鶴岡市に所在するMGTxの拠点。ドナーから提供いただいた便から菌を生きたまま冷凍保存し、原材料として川崎へ搬送する。
[4] 潰瘍性大腸炎(UC):大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる指定難病。FMTの主要な開発対象疾患の一つ。
[5] CMC:Chemistry, Manufacturing and Control。医薬品の「化学・製造・品質管理」に関する開発業務の総称。医薬品の"品物としての中身"を組み立て、規格や製造方法を定義していく領域。
[6] 治験薬GMP:治験に用いる未承認薬の製造に関する基準。商用GMPに比べて運用が柔軟な部分があるが、品質保証の基本的な考え方は同じ。
[7] 逸脱:定められた手順や規格から外れた事象のこと。どう記録し、どう原因究明し、どう再発防止に繋げるかがGMP運用の核心。
【免責事項・利益相反(COI)の開示】 中原拓はメタジェンセラピューティクス株式会社の代表取締役社長CEOであり、博士 (理学)を有する基礎的な科学(バイオインフォマティクス)の専門家です。本記事は、マイクロバイオームサイエンスおよびFMT(腸内細菌叢移植)に関する最新の科学的知見や業界動向の共有、ならびに当社のビジョンをお伝えすることを目的としており、特定の医薬品の広告・宣伝、および個別の患者様への医学的アドバイス(診断・治療の推奨)を目的とするものではありません。 本記事で言及されるFMTや関連技術には、現在研究開発段階にあり、薬機法上の承認を得ていない未承認医薬品・治療法が含まれる可能性があります。これらの有効性や安全性は確立されたものではなく、将来的な承認を保証するものではありません。 ご自身の病気や治療に関しては、必ず主治医や専門医療機関にご相談ください。また、中原拓は当社の株式を保有しており、本記事の内容には当社事業に関連する利益相反(COI)が存在します。