2011年の創業以来、ブロックカレンダーやレコードコースターなど、他社にはないユニークな製品を生み出してきた株式会社エーワークス。代表の浅野達生さんは、家業の成形業で培った技術を強みに、独自のものづくりを追求してきました。そんな同社が2025年8月、さらなる成長と経営基盤の強化を見据え、オリグレスグループへの参画を決断します。
なぜ今、この選択に至ったのか。その背景には、一人の経営者としてのリアルな葛藤と、日本の製造現場が抱える課題、そして次なる飛躍に向けた明確な意思がありました。浅野さんに、これまでの歩みとグループ入りによって描く「これからのものづくり」について話を聞きました。
「他にないもの」をつくる。成形技術から生まれた、エーワークス15年の歩み
──浅野さんご自身のこれまでのキャリアについてお話しいただけますでしょうか。
浅野:実家がプラスチックの成形業を営んでおり、私も入社して長く関わってきました。代表も務めてきましたが、50歳になったのを機に、成形品にとらわれない様々な商品づくりに挑戦したいと考えるようになり、自ら開発したブロック製品や、IP関連のライセンス権をもとに独立し、2011年にエーワークスを立ち上げました。
なるべく他社にない商品を自社で開発していくことが、競争力につながると思っています。最初から順調だったわけではありませんが、試行錯誤を重ねながらオリジナル製品を増やしていき、徐々に事業としての基盤を築いてきました。特に近年はブランドとしても確立してきて、商材の幅も広がり、受注も増えてきています。
背景としては、為替の問題や海外の生産力低下があって、国内回帰の流れがあります。それとキャラクター業界でも、単純なアクリルキーホルダーや缶バッジだけでなく、もう少しこだわったものを求める声が増えていて、そういうニーズで当社にたどり着いている印象があります。
──どのようなオリジナル製品を手がけていますか?
浅野:まずは基幹商品のブロックカレンダーです。25年ほど販売しています。ブロックを組み替えることで繰り返し使える万年カレンダーとして設計していて、IPやブランドごとにカスタマイズできるのが特徴です。大口のご注文をいただいた際には売上へのインパクトも大きいですね。
数量ベースでいうと、レコードコースターが主力です。アナログレコードの質感や世界観をそのまま落とし込んだグッズとして開発したもので、当初は音楽イベントのノベルティを想定していました。ただ、ここ数年は若い世代にもレコード文化の認知が広がってきたこともあり、アニメやキャラクターグッズとして採用いただくケースが増えています。
ブロックカレンダー
なぜ今、オリグレス参画を決断したのか。転機が導いた、次なる組織づくり
──昨年、オリグレスグループに参画しましたが、そのきっかけについて教えてください。
浅野:もともと、65歳を目処にリタイアしたいという思いはありました。いつまでも年長者がトップに立ち続けるのは健全ではないとも感じていたんです。また、働き方改革などの流れを踏まえると、従業員20人未満の企業が単独で対応し続けるには限界もあります。
そうした中で、4年ほど前にスキー中の事故で腰椎を損傷し、1ヶ月半ほど身動きが取れなくなったことも大きな転機となりました。幸い復帰はできましたが、いつ何が起こるか分からないという現実を強く意識するようになりました。
自分が不在でも事業を継続できる体制を整え、若い世代へバトンを渡していく。そのための選択肢として、M&Aを検討し始めました。
M&Aにあたっては候補が数社ありましたが、最終的にオリグレスを選びました。もともと当社は問屋や小売を通じた販売が中心で、自社で営業や売り場を持つ機能が弱いという課題がありました。
一方でオリグレスは、営業体制を持ち、イベントの企画・運営まで自社で手がける、いわば「売り場をつくれる会社」です。さらに海外展開も視野に入れている点で、相性がいいと感じました。
また、これまでオリグレスは製造を外部に委託するケースが多かったと聞いており、当社の製造機能を組み合わせることで、より強い体制がつくれるのではないかと考えました。そうした意味でも、今回の参画は自然な流れだったと思います。
──グループインから8カ月ほど経ちましたが、シナジーは感じていますか?
浅野:当社は製造に特化しているため、すぐにイベントと直結する形での連携は難しい部分もあります。ただ、現在は商品開発やデザイン面でのサポートなど、できるところから関わりを深めている段階です。
ものづくりに関するノウハウをグループ内で共有していくことで、エーワークスの役割や強みへの理解も進んでいくはずです。そうした土台を整えることで、今後もっと連携の幅を広げていきたいですね。
先日も吉武さんと話をしたのですが、ヒット商品で一気に売上を伸ばすというよりも、中長期目線で積み上げていくべきであるという考えで一致しています。
かつてiPhoneカバーやプリクラ専用キーホルダーで数百万個規模の大ヒットを経験しましたが、ブームには必ず終わりがあります。
金型を資産とするメーカーとしては、「一時的に大きく売れて、その後落ちる」よりも、「年間を通して安定的に売れる商品」こそが真の強みになります。需要の波を抑えて製造現場を安定させ、アイテム数を積み上げていく。メーカーとしては、そうした成長の仕方が理想だと思っています。
レコードコースター
再生素材が生む新たな価値。浅野達生が語る、環境×ものづくりの可能性
──今後、オリグレスグループに入ったことで、今後取り組みたいことはありますか?
浅野:環境分野での取り組みはさらに広げていきたいと考えています。実際に、企業と連携しながら再生樹脂を活用した商品開発をOEMで手がけていますが、こうしたエコ商材は、消費者向けというよりも企業価値の向上を目的に採用されるケースが多いのが特徴です。
だからこそ、単なるノベルティとしてではなく、企業の中に入り込み、「廃棄される素材をどう活用するか」という段階から一緒に考えていく。そのような形のものづくりに大きな可能性を感じています。
実際、この領域に本格的に取り組んでいるメーカーはまだ多くないため、差別化にもつながりますし、オリグレスとしても企業への提案の幅を広げていけると考えています。
──確かに、プラスチックの再生は企業イメージやブランド価値の観点からも、企業にとって非常に魅力的な話ですよね。
浅野:そうですね。例えばヤクルトさんの場合、容器を再生し新たな製品として活用しています。ヤクルトは自社工場で一貫生産を行っているため、膨大な生産量の中でどうしても一定数の不良品が出てしまいます。廃棄するのではなく、ペレット状に再加工し、素材として再利用し、ブロックカレンダーなどの製品を製造しています。
この取り組みのきっかけは、大手材料メーカーから展示会でお声がけいただいたことでした。展示用ノベルティとして、1年目はスマホスタンド、2年目は消臭剤を入れるキーホルダーを製作しました。
そこから、相模原市の小学校と連携したプロジェクトにも発展しました。子どもたちが自宅で飲んだヤクルト容器を集め、それを再生して製品化する取り組みで、ジャケットデザインを自分たちで描いたり、シール貼りといった工程にも参加してもらっています。
また、去年からは「どうすれば効率的に運べるか」についても授業に取り入れました。容器をそのまま送ると中身はほとんど空気で、輸送時のCO2排出も増えてしまいます。そこで、子どもたちに容器を踏み潰してから回収してもらうようにしました。
相模原市の小学校のヤクルト容器回収の様子
──最後に、読者の皆さんに向けたメッセージをお願いします。
浅野:今の製造現場では人材の確保が年々難しくなっており、いわゆる町工場も減少しています。だからこそ、これからどう生き残っていくかを真剣に考えていく必要があります。
その中で、オリグレスグループとして連携することで、単体では実現が難しかった取り組みにも挑戦できるようになりますし、工場の環境改善や収益性の向上にもつなげていきたいと考えています。
また、「メイド・イン・ジャパン」という価値は、今もなお海外に対して大きな強みを持っています。品質の高いものづくりを継続していくことで、将来的には国内にとどまらず、海外市場でもしっかりと戦っていけるはずです。そうした視点を大切にしながら、これからのものづくりに取り組んでいきたいですね。
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