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60年前から地域密着のSDGsを実践中。継続のためには、高付加価値のリサイクル商品の開発と安定的な販売が不可欠です。

 近年、循環型経済に少しでも近づくことが産業界の重要課題になっています。繊維業界も例外ではありません。石川メリヤスにも、残糸や残反の再利用について取引先や他メーカーから相談が寄せられるようになりました。
 岡崎市を中心とする西三河地方では、戦前から繊維のリサイクルが盛んでした。落綿や残糸、残反をワタに戻す工程を担う反毛工場が数百軒もあり、そこから供給される再生綿を主原料とした特紡(特殊紡績)が発達。昭和50年代に特紡糸の生産はピークを迎えたと言われています。
 生産量は愛知県が常に全国1位(2位は大阪府)で、その中核を担うのが西三河地方です。1957年創業の石川メリヤスは、まさにその特紡糸を使った作業用手袋の生産から始まりました。現在も「サイコロ印シリーズ」として定番商品であり続けています。
 特紡糸の特徴は、バージン(新品)と比べてふわっとしたボリューム感があること。手袋にすると、強度も増し風合いも良くなります。しかし、反毛工場も特紡工場も近年は減少の一途をたどっています。
現場を見学させていただいて強く感じるのは、いわゆる3Kの職場であり、後継者も働き手も少ないことです。
 このままでは特紡が消滅し、石川メリヤスも定番商品を作れなくなってしまいかねません。本当に意味のある高付加価値のリサイクル商品を作り出し、安定的に売り続けることが特紡の存続と発展に不可欠だと私たちは考えています。
 残糸などをくだいてワタに戻す工程はとても手間がかかり、そこでできた特紡糸はバージンの価値を超えることはできません。つまり、付加価値が低い繊維をリサイクルしてもより安いものにしかならず、工賃を上げることも設備投資もできなくなり、工場は疲弊する一方なのです。

繊維原料商の岡田完司さんに特紡工場を案内してもらう三代目社長の大宮裕美。岡田さんは特紡の生き字引だ。取材協力:谷崎特殊紡績(西尾市)

 トレンドに流されて一時的に大量の仕事を発注することも現場に無理を生じます。機械を動かすには職人が必要だからです。
 一定量の仕事を継続して発注することが安定供給につながります。石川メリヤスの2代目社長である石川君夫は、アラミド(耐切創性に優れた高機能繊維)をリサイクルする仕組みを取引先と協力して作り上げました。
 アラミドはもともと高価な繊維なので、特紡糸にして強度を増したものをバージンより低価格で供給することには大きな意味があります。この糸を様々な品番で使えるように共通化。原料の供給元に再販売もしています。作業用手袋だけでなく、織物として消防服などにも使えるそうです。
 この特紡糸の場合は、汎用性も付加価値も高いため、半年ぐらいは在庫しても問題ありません。そのため、特紡工場にも一定の量を継続して発注することができます。
 石川メリヤスは工業用に大量生産している「サイコロ印シリーズ」の手袋を個別包装にして小売にも挑戦中です。この手袋は肉厚でつけ心地も良く、ホームセンターなどで売っている輸入物のペタッとした手袋とは比べ物になりません。西三河が誇る特紡のストーリーも消費者にお伝えできれば、価値のある商品になると思っています。このような試みを続けることで、SDGsへの関心が高い取引先から「次はこういう商品を作ってみたら?」とアイデアをいただけるような会社になりたいと思っています。

 2021年10月18日から20日に開催された「IFFT/インテリア ライフスタイル リビング」に出展し、3人間で234人の方が石川メリヤスのブースを訪れてくれました。

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