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【特別インタビュー】新組織「Innovation Hub」とは?「技術は本分」を掲げ、変革を率いる少数精鋭ユニットに迫る
こんにちは!株式会社NTTデータフィナンシャルテクノロジー(以下、NTTデータFT)決済イノベーション事業部です。
「大手企業は安定しているけれど、変化が少なそう」
「技術への挑戦よりも、既存業務の維持が中心なのでは?」
こんなイメージを持つエンジニアの方も多いのではないでしょうか。
決済イノベーション事業部では、2025年4月に新組織「Innovation Hub」(以下、iHub(アイハブ))を立ち上げました。iHubのミッションは、「自ら手を動かしてつくる」という原点に立ち返り、現場の変革を促進することです。
メンバーは、経験豊富なエンジニア4名とマネージャー2名の少数精鋭。始動からわずか半年足らずで、「生成AI環境の事業部全体への展開」や「大規模システムの運用現場におけるAI活用」など、次々と成果を上げています。
今回のストーリーでは、iHub設立の背景から現在の取り組み、今後の展望まで、発起人である森永さんに話を聞きました。ぜひご覧ください!
森永 浩史
NTTデータ フィナンシャルテクノロジー 決済イノベーション事業部 事業推進担当 プロフェッショナル
キャリア採用入社。データベースエンジニア、インフラエンジニアとして活躍後、NTTデータに出向しSREとしてデジタル開発組織の立ち上げに関与。現在はInnovation Hubのリードエンジニアとして決済システムのアーキテクチャ統制、AI活用推進、情報発信、エンジニア育成などに取り組んでいる。
「Innovation Hub」とは?~事業部を変革する少数精鋭の技術者ユニット~
――本日は、2025年4月に新設された「Innovation Hub」(略称:iHub)について、発起人の森永さんに詳しくお聞きします!まずは組織の概要を教えてください。
森永:iHubは決済イノベーション事業部の事業推進担当内に立ち上げた、エンジニア4名とマネージャー2名、計6名の小さな組織です。「ユニット」と呼んだ方がしっくりくるかもしれません。「量」や「数」で勝負するのではなく、事業部全体の変革に「質」で貢献することを目指しています。
――「Innovation Hub」の名称には、どのような想いが込められていますか?
森永:iHubのメンバーの多くは、NTTデータの「Payment Innovation Lab」(以下、Paylab)に参画し、ペイメント領域での変革に取り組んできました。Paylabにも、そして私たち決済イノベーション事業部にも、組織名に「イノベーション」がついています。
「自分たちが変わり、その先で提供価値を変え、世の中に影響を与える」――こうした連続性のある変革への想いから、「Innovation Hub」と名付けました。「Hub」には、変革の意志を持つ「人の集まり」という意味合いも込めています。
――事業部全体の変革に向け、どのような活動を展開していくかお聞かせください。
森永:iHubを設置する際に、活動の柱として次の6つの項目を掲げました。
- 情報発信
- アーキテクチャの検討
- 開発支援(プロジェクト支援)
- プロダクト開発支援
- デジタライゼーション支援
- 新人育成
「支援」とつくものが多いように、現場組織のサポートに軸足を置いています。先ほどお話ししたとおり質的な関わりを重視しており、「相談したい」「使ってみたい」と手が挙がったところから順に対応する方針です。
――メンバーは「エンジニア」と「マネージャー」とのことですが、森永さんはどちらのポジションで参画していますか?
森永:私はエンジニアとして参画しています。以前は課長でしたが、2年ほど前に技術系のキャリアパスである「プロフェッショナル」に転換しました。iHubでは、技術のプロフェッショナルとして方針や戦略の策定などを担っています。
ちなみに、初期メンバーは希望を募ったわけではなく、「こういう組織を立ち上げるから、一緒にやってみないか」とこちらから個別に声をかけました。
――皆さん本業との兼務と聞いていますが、どれくらいのウェイトで活動されているのでしょうか。
森永:人によりますが、だいたい現場のプロジェクトが8割、iHubの活動が2割くらいの比率ですね。「現場を手放さない」現場主義を基本にしています。現場の課題感を理解していなければ、相手に響く話はできません。自分たちも現場に身を置いているからこそ、実効性のある支援ができると考えています。「お前、現場を分かっていないだろ」と言われてしまったら、それまでですからね。
ねらいは「技術への原点回帰」と「居場所づくり」
――森永さんはiHubの発起人と伺っていますが、どのように設立を進めたのですか?
森永:2024年の12月頃に、大野事業部長(当時)に「こういう組織をつくりたい」と提案しました。話し合いながら内容を固めて、2025年4月1日に正式な組織として発足させました。
――設立の背景には、どのような課題があったのでしょうか。
森永:NTTデータFTは、手を動かしてものづくりをする技術の会社です。しかし、会社が成長する中で開発スタイルも変化し、再委託が増加。自分たちは要件を伝え、実際の開発は協力会社にお願いする案件も増えつつあります。
「自分たちもできる」前提で他にお願いする形であれば良いですが、「本当に自分たちでつくれる組織なのか」と強い危機感を抱いていました。
――ここで一度、NTTデータFTの根幹である「つくる」に立ち返る必要があると。
森永:そのとおりです。iHubの設立前、私はNTTデータに出向してPaylabにいたのですが、そこでの経験も大きな原動力になっています。新しい技術へのアクセスが早く、失敗に寛容な環境で、技術力がどんどん向上していく。NTTデータのエンジニアたちの進化を目の当たりにして、「技術の会社であるNTTデータFTも負けていられないぞ」と強く感じました。
これが公式に話している設立の背景です。ただ、私個人の本音を言うと、根底にもう一つ切実な課題がありました。
――それは何ですか?
森永:優秀なエンジニアたちがチームの中で孤独になりがちなことです。組織が大きくなると、機能ごとに分割され、各チームの戦力が均等になるように人員が配置されます。その結果、テックリードのような高い技術を持つ人材は、各チームに一人いるかいないか、という状況になりがちです。
テックリードは、時に厳しいことも言いながら開発を率いる立場です。ビジネス上の制約がある中で「本来はこうあるべきだ」と言わなければならない。孤独な中でそれを言い続けるのは、結構なストレスになります。
――その問題は、NTTデータFT社内でも実際に生じていたのでしょうか。
森永:実際に私が1on1で話をする中で、「孤独な気持ちを共有する場がない」とつぶやく人もいました。そうなると、早い話で離職リスクが高まってしまいます。
NTTデータのPaylabは、ツーカーで話が通じる「強いエンジニアの集団」でした。NTTデータFTの中にも、技術に秀でたエンジニアが安心して息を吸えるような「居場所」をつくりたい。これもiHub立ち上げの大きな動機です。
“やらない理由”をなくし、事業部全体で生成AI活用へ
――ここからはiHubの活動について深掘りしていきます!
設立から5か月経ちましたが、活動状況をお聞かせください。
森永:4月は準備期間として、ミッションや活動方針を固めることに時間をあてました。その後、5月に開催された事業部のキックオフで「iHubという組織をつくりました」と正式にお披露目し、技術支援の受付を本格的にスタートしました。
6月には配属された新人の教育を始め、7月にはチャット型の生成AI環境を決済イノベーション事業部全体に展開。
8月には後ほど詳しくお話しするCAFISチームでのAI活用事例の運用が始まり、9月からは新人育成の一環としてインターンシップの受け入れも担当しています。
※本インタビューは2025年9月に実施
――かなりのスピード感ですね。今のお話にもありましたが、初年度は「生成AI」を主なテーマに設定したとか。
森永:はい。時流に合うキャッチーなテーマですし、これを掲げることで皆の関心を引きつけるねらいもあります。
生成AIの活用を進める上でまず重要なのは、「持つ者」と「持たざる者」の環境格差を是正することです。一部の人しか使えないと、「どうせ自分は使えないから」と他人事になってしまう。このため、もともとデジタル部門だけで使っていた生成AI環境を、決済イノベーション事業部の全員が使えるようにしました。
――誰もが使える環境を整えながら、情報発信や技術支援をしているのですね。
情報発信はどのような方法で行っていますか?
森永:週に1回、業務時間内に、事業部全体を対象としたLT(ライトニングトーク)会を開催しています。4名のエンジニアメンバーが週ごとに持ち回りで担当しているので、それぞれ月に1回は発表の機会がありますね。
事業部全体では約250人いますが、平均して30人、多い時では45人ほどが参加。Q&Aの時間を長めに取り、その場で質問や相談を受け付けています。
――LT会の参加者からは、どのような声が寄せられていますか?
森永:全体としては好意的に受け止めてもらえているかなと。他のチームで活躍しているハイパフォーマーなエンジニアから、直接「LT楽しみにしています」と声をかけてもらえることもあり、活動を続ける大きなモチベーションになっています。
時には厳しい意見をいただくこともありますよ。「もっと現場に寄った話はないのか」「AI、AIと言っているけど、具体的な成果はどこかで出たのか」といった鋭い質問が飛んできます。ちょっとしょんぼりしますけど(笑)、率直なフィードバックはとても貴重ですね。
――続いて、技術支援について状況と手応えをお聞かせください。
森永:月に数本のペースで、継続的に相談が寄せられています。先ほどお話ししたとおり、手が挙がったところから対応していますが、最初に手を挙げてくれるのはいわゆる「アーリーアダプター」です。まずは意欲的な人たちと成功事例をつくることで、徐々に周囲へ浸透させていきたいと考えています。
すでにいくつか事例が生まれていて、特に象徴的なのはCAFIS(※)の担当チームでのAI活用ですね。
※CAFIS・・・接続社数・取引量ともに日本最大級のキャッシュレス決済プラットフォーム。1984年からサービス開始し、40年にわたって日本のキャッシュレス市場を支えてきた豊富な運用実績を持つ
――あのCAFIS、ですか?
森永:そうです。CAFISはミッションクリティカルなシステムなので、リアルタイム監視だけでなく、ログの分析も毎日やっています。人間だけでは見落とすリスクがあるので、「生成AIを活用できないか」と相談がありました。
そこで、自然言語でログを分析する環境や、普段と異なる傾向をAIが通知する異常検知の仕組みをつくって提供しました。途中から、「これどうやっているの?」とどんどん乗ってきてくれて。今では彼ら自身で、私たちが支援した範囲以外にもAIやクラウドの活用を進めています。
――この短期間でそこまで変化したのはすごいですね。
森永:大きな手応えを感じましたね。ただ前提として、新しいものを積極的に受け入れようとしてくれるスタンスが相手にあったからこそだと思っています。
CAFISチームのメンバーには今度、LT会での発表もしてもらう予定です。CAFISのような大規模なシステムが成果を上げれば、他のチームもついてきやすい。良い意味でのインパクトを与えられると期待しています。
技術は「手段」ではなく「本分」。次世代のエンジニアとともに
――これまでの活動の中で、「iHubを立ち上げてよかった」と感じたエピソードはありますか?
森永:いくつかありますが、一つは「隠れた才能を持つ若手エンジニア」を発見しやすくなったことです。膝を突き合わせて課題に取り組んでいると、「この人はこんなにできるのか」と気づく瞬間があって。つい先日も生成AIをうまく使いこなす若手を見つけ、彼の上司に伝えたところ、「そうなの?」と驚いていました。普段の業務では見えにくい才能に光を当てられるのは、嬉しいですね。
――iHubメンバーにとっての学びや変化はいかがでしょうか。
森永:LT会でのフィードバックを通じて、現場のリアルな課題感を学べたことが大きいですね。私たちiHubのメンバーは、デジタルトランスフォーメーションの最前線を走ってきたぶん、トラディショナルな領域の制約や課題感が少し分からなくなっていたんです。率直な意見をもらうことで、現場の困りごとを再認識できました。
LT会のテーマや内容は各メンバーに委ねていますが、フィードバックを受ける中で、「参加者が聞きたいことにコンテンツを合わせよう」とそれぞれが見直し始めています。
――ほかに、今後に向けた課題や取り組みたいことはありますか?
森永:まずLT会については、現状では管理職層からの意見が多いですが、もっと若手の声を吸い上げたいですね。下期からはアンケートも実施して、より多くの本音を聞ける仕組みをつくっていきたいと考えています。
また、リモート開催が中心で双方向性が不足しがちなので、終了後に対面で交流できる場を設ける予定です。お茶会のような感じで、より気兼ねなく意見交換できたらなと。発信自体についても、ゆくゆくはゲームデイやハッカソンといった参加型のイベントを企画していきたいですね。
――双方向性が高まると、より活動が盛り上がりそうですね。「生成AIの活用」についてはいかがですか?
森永:現在は開発現場での活用が中心ですが、事業部全体のAIトランスフォーメーションもさらに進めていく方針です。特に広げていきたい領域が大きく2つあります。
一つは、開発の上流工程。たとえば、要件定義の際にAIと壁打ちができるようなユースケースやアセットを構築・展開していきたいと考えています。
もう一つは、総務などスタッフ系の業務への展開です。もっとデジタル化できるところ、AIを活用できるところがあるはず。総務スタッフの課題を掘り下げながら活用を広げ、業務負担を減らしていきたいですね。
――生成AIについては、「新人にどこまで使わせるか」も悩ましいですよね。
森永:これは2、3年続いている課題で、線引きが非常に難しいです。安易な使用は考える機会を奪いかねない一方で、ただ禁止するだけでは反感や不公平感が生まれてしまうので。
今年の方針は、「アウトプットの生成はやめよう」「壁打ちに使うのはいいよ」としています。今後は「壁打ち」のユースケースとアセットをたくさん用意し、「このケースに使って」とポジティブな形で利用を促していく予定です。
――iHub自体の今後についてもお聞きしたいのですが、規模を拡大する計画はありますか?
森永:実は、iHubメンバーを増やすつもりはないんですよ。少人数であることに意義を感じていて。テックリードの居場所をつくりたいと言いましたが、人数を増やすとその中でまた役割が分かれ、孤独な人が生まれてしまいます。だから最大でも10名まで、“中華料理店の円卓を囲めるくらい”の人数が理想です。
iHubを拡大することはしませんが、私たちの活動をきっかけに、若い世代を中心とした新しいユニットが生まれてほしいですね。いつか私たちのことを、「モダンって言っているけど古い」「自分たちの方がすごいぜ」と言う人が出てくることを期待しています(笑)。
――最後に、iHubの活動やエンジニアの未来について、森永さんの意気込みをお聞かせください。
森永:ビジネスの世界ではよく、「技術は手段だ」と言われます。それは一面では正しいです。でもそれだけを言われ続けると、エンジニアは情熱を注げなくなり、技術を突き詰めることに後ろめたさを感じてしまいます。
NTTデータFTは、もともと技術の会社です。「自分たちは技術でやっていくんだ」という原点に立ち返る。そのために、優れた技術者たちを集め、彼らのパフォーマンスや発信が見えやすいようiHubという一つの形をつくりました。
「技術を追求していい」「NTTデータFTにとって、技術を高めることは単なる目的や手段ではなく“本分”だ」――こうしたメッセージを強く発信し続けていきます。
――これからの展開に期待しています。森永さん、本日はありがとうございました!
今回は新組織「Innovation Hub」(略称:iHub)について紹介しましたが、いかがでしたか?
少しでもNTTデータFTや決済イノベーション事業部について知っていただけたら幸いです。
当社に興味を持ってくださった方は、ぜひ一度カジュアル面談でお話ししてみませんか。
お会いできることを楽しみにしています!
企画・編集:株式会社スリーシェイク 文・撮影:三谷恵里佳