こんにちは、はよんです!
気付けばもう年が明けております。
年々時間が経つのが早すぎてびっくりしております。
更新に少し日が空いてしまいましたが、
今日は前回書いた「看護師の当たり前」と少し関連した内容になります。
日々様々な病院の色んな現場を見させて頂く機会があるのですが、
多くの現場看護師は、
可能の範囲でこの「当たり前」を実践しようとしています。
看護師にとっての「当たり前」-たった5分の出来事-
先日とある病棟であったことです。
ポータプルトイレ(ベッドの隣に置く簡易的なトイレ)を設置している患者が、
「歩いてトイレに行きたい」とナースコールをされました。
点滴も多く、足元もおぼつかない様子だったので、
具体的な症状がわからない私ですら、
この人を歩いてトイレまで行くのはかなり配慮が必要な患者だと感じました。
担当看護師は、歩いてトイレに行くと危ないからここでした方が良い(=ポータブルトイレを利用した方が良い)と思う旨を伝えました。
しかし患者は、歩いてトイレに行きたいと訴えます。
担当看護師は、何故歩いてトイレ行きたいかを聞きました。
すると患者は、看護師に自分の排泄物を処理させるのが申し訳なさ過ぎて辛いと言いました。
看護師はすぐに、私に気は使わなくて良い、大した仕事じゃないから良いという旨を伝えます。
しかし患者は、部屋でするのは恥ずかしい看護師にも申し訳ないしトイレに行きたいと訴えます。
結局その看護師がはもう1名の看護師を呼んで2名がかりで患者をトイレに連れて行きました。
たかが5分程度のこのやり取りと、
その後担当看護師が患者の要望に寄り添ってもう1名の看護師を呼んでトイレに連れて行った一連の流れに、
私は本当に心が打たれました。
患者の意思関係なく「あなたはポータブルトイレでしてください」、
と言い切ることもできました、
そしてそっちの方が早いしこけるリスクもないです。
しかしこの看護師は患者の想いを聞いて、
それに寄り添うことにしました。
認知症とか意識レベルの低下がない方にとって、
排泄はかなり羞恥心が伴うデリケートな行為の1つです。
ポータブルトイレを使用する、
おむつで用を足す、
という行為は、
ある意味ではその方の尊厳にも関わる行為だと私は認識しています。
皆さん今オムツを着用して、
そこで排尿してください、
と言われても案外できないと思います、
今ここでしてと言われても、
意識レベルがクリアな方にとってこの行為はかなり抵抗があるのです。
看護師にとっての「当たり前」-待つという行為-
私は会社代表の仕事と並行して、
非常勤で母校の教員をしています。
将来看護師や助産師になりたい学生の指導をしています。
正直「指導」らしい「指導」はあまり出来ないのですが、
学生と共に教科書に振り返り、考えディスカッションをする過程は、
私自身にも学びが本当に多く、
この仕事をさせて頂いていることにとても感謝をしています。
と少し余談が入ってしまいましたが、
先日、学生と共にとある分娩介助を見学させて頂きました。
夫婦で立ち会い出産を希望されていて、
配偶者はあと15分で到着予定、
一方で赤ちゃんはもう産まれそうという状況でした。
このままだとパートナーは間に合わないかもしれないなと
いち助産師の感覚で内心私が思っていた矢先に、
担当助産師は、産婦さんに対していきみを逃すように指導をしました。
少しわかりやすい表現をすると、
すぐに産ませないために、
いきまないよう指導をしたのです。
つまり配偶者の到着を待ったのです、
それまで赤ちゃんがなるべく産まれないように工夫をしていました。
(少し専門的な話を補足すると、
もちろん全ての分娩でこれができる訳ではなく、
諸々医療条件が重ならないと出来ないことです)
結果、配偶者が到着して元気な赤ちゃんが産まれました。
看護師にとっての「当たり前」を見て私が感じたこと
私はこの2例を拝見して全身に鳥肌が立ちました。
効率や利益という観点で言えば、患者の要望に沿う必要は全くありません、
ポータブルトイレで排泄すれば良いし、
さっさと生んでしまった方が良いです。
むしろトイレまで歩く方が時間もかかるし転倒のリスクも発生します、
いきみを逃した方が、狭い産道にいる時間が増えるので赤ちゃんの心音が低下したり母体から出血するリスクもあります、
かなり雑な言い方をすると、
さっさとなるべくローリスクで終わらせて、
他の業務に携わった方が、
効率的で働き方改革の世の中にも合っています。
しかし私が拝見したこの2つのケースでは、
看護師は利益や業務量、効率とは無縁の世界で働いていて、
目の前の方にとって最適なことは何なのかを最優先していました。
そしてそのような看護師は、
この2ケースだけに限らず全国にたくさんいらっしゃると私は思っています。
今私がこのnoteを書いている瞬間にも、
資本主義社会や働き方改革ではなく、
目の前にいる方の想いを大切にして行動している看護師がたくさんいらっしゃると思います。
改めて考えたことと決心
病院は営利企業ではないので、利益を追求する必要はありません、
しかし赤字になってしまっては運営が成り立ちません、
極端な話赤字続きでは、従業員の給料を支払えなくなってしまいます。
従業員も満足して患者に安全と安楽を提供する経営が理想ではありますが、
マジでその匙加減は本当に難しいのではないかと改めて思いました。
私は病院経営に関わったことがないし、
もちろん専門家でもないので、
病院経営に関してはこれ以上何も言えないのですが、
断言できることがあります。
今の看護師がしていることは絶対に間違ってはいません。
本当に素晴らしく尊い、
世界中に誇れることだと確認しています。
だからこそこの看護師にとっての「当たり前」が、
看護師の一部を犠牲にするような方法でしか実践できない環境はおかしいし、
看護師個人の感性やその時の状況に任せる世の中も違うと思っています
いわゆる、
ラッキーな患者とそうじゃない患者が発生するのはアンフェアです。
ケアが必要な方全員が、
このようなケアを当たり前に享受できる社会、
私はそういう社会を真剣に目指しています。
今自分がしていることは微力だがこの一助やきっかけになるとも思っています。
これからも諦めず前を向いて一歩一歩前に進もうと改めて感じております。