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タニタさんが「社員の個人事業主化」を始めた理由と社会への影響を考察してみた

100の生業を持つ現代版百姓を目指す、破天荒フリーランスのざき山です。

今日も複業メディア「ウィズパラ」で取り扱ったテーマ「タニタさんが「社員の個人事業主化」を始めた理由と社会への影響を考察してみた」について紹介していきたいと思います。(元記事:https://wizpara.com/2700/)

皆さんは、体重計や体組成計など健康計測機器の大手メーカーの株式会社「タニタ」はご存じでしょうか?

最近では健康に良い監修食品をスーパーやコンビニで見かけることも多いので、ご存じの方も多いと思います。

このタニタさんですが、2008年に創業家3代目の谷田千里氏が社長に就任して以降、社員の働き方を中心とした組織改革を断行しています。

その最たる取り組みが、2017年から取り組んでいる社員の個人事業主化です。

タニタではこれを「日本活性化プロジェクト」と名付けており、この取り組みでは希望した社員を雇用契約から業務委託契約に切り替え、個人事業主となって仕事を継続してもらうというものです。

元社員にとってはタニタ以外の会社で並行して働けることや、個人事業主化することによって手取り金額が増えるメリットがあります。

大手企業としては、かなり画期的な取り組みであり、電通も21年から同様の制度を導入しています。

電通は40代以上のミドル世代をターゲットにしているのに対し、タニタはすべての年代が対象世代です。

今日は「社員の個人事業主化」という働き方の変革が個人に・企業に・社会に何をもたらすのか?を考察してみたいと思います。

タニタさんが導入した「社員の個人事業主化」制度のしくみ・からくり

タニタさんが導入した「社員の個人事業主化」制度とはどんな制度で、会社や社員、そして社会に対してどんな効果を波及しているのか?

ざっくりと解説していきたいと思います。

タニタ社流の働き方改革「日本活性化プロジェクト」を簡単に説明すると希望する社員は会社との雇用関係を終了し、独立した事業主として業務委託契約で仕事をしていこうという提案です。

会社と個人の関係性を雇用契約にとらわれずに見直していこうという試みです。

この試みに至る経緯・きっかけ

タニタは2008年に谷田千里が社長に就任し、先代からさまざまなものを引き継いでいく中で、とりわけ「タニタで働く人を引き継いだ」と考えたそうです。

そこで働く人にフォーカスして考えたとき、大きくふたつの課題が見えてきたそうです。

ひとつめは「業績が悪いと、会社も人も共倒れになる」ということ。

社員も会社もどちらも依存している状態では、万が一の事態に耐え切れない。

業績が悪い会社にはいられないからと、退社する人も出てくるかもしれない。

社員各々が「自分で魚を獲れる」状態になっていれば、多少業績が悪くなったとしても、タニタの仕事のほかに自分で生活の糧を探してくることもできます。

会社が率先して制度として、この働く人たちを「自分で魚を獲れる」状態に導いていくというイメージでしょうか。

ふたつめは「長時間労働の全てが悪なのか」ということ。

タニタは「健康をつくる」ことを事業の柱にしていますが、そんな会社であってもメンタル不調になる社員が一定数出ていたそうです。

長時間労働も理由のひとつかもしれませんが、例えばスタートアップ企業の社員が寝る間も惜しんで仕事をしているとき、全員メンタル不調になっているかというとそうではない。

つまり“やらされている仕事”、“他人ごとの仕事”でなくて“自分ごとの仕事”に変えてみたらどうかという発想に至ったそうです。

・・・これは確かにそうですよね。

じぶんもサラリーマン時代を思い返したときに、長時間労働が嫌だったというよりも、無能で理不尽な上司に長時間仕事を「やらされる」ことが嫌なだけでしたもんね。

受動的に「指示されたことだけをやっていればいいや」というスタンスでは、どうしても仕事はつまらなくなっていくもの。

日本の今の仕組みや制度に基づいて考えていくと、個人事業主に移行することが解決策のひとつなのではと。

個人事業主になれば、これまで“指示”であった仕事が“依頼”という形になり、「引き受ける」・「引き受けない」の選択が生まれます。

時間や場所にも縛られすぎることなく働けるようになります。

会社が個人に、個人が会社に依存するのではなく、会社と個人がお互いに引きつけ合う関係にシフトしていこうという試みです。

社員の反応は?

じぶんとしては、なんて先進的で社員思いの会社だろうと感心するのですが、実際の社員の声はどうなのでしょうか?

働き手側からの意見として「リストラの準備段階では?」という声が一定数あがったそうです。

会社側からも社長以外の経営陣から、個人事業主になると指揮命令権がなくなるから「自分の言うことを聞いてくれずに業務が滞るのでは」や「組織崩壊に繋がるのでは」という声もあがったそうです。

まぁ、思い切った変化ですからね、そういった不安の声も上がることも仕方ないことですけどね。

実際にはそこまで急激な変化が起きないように配慮されており、「現在の仕事を委託業務とする」とし、その仕事に対する報酬は現在の給与・賞与をベースに固定額で契約することを原則としたそうです。

また「複数年契約を毎年更新する」という配慮もとられ、働く人たちが業務委託形態となっても先の見通しが立てやすくしたそうです。

制度を開始してもたらされた効果

社員が個人事業主化したことで勤務場所や勤務時間など多様な働き方ができ、報酬についても自ら考えるようになっていったそうです。

不安を感じ、雇用契約にこだわる人は一定数いるものの、報酬面や仕事内容では最大限の配慮・フォローもあり、個人事業主化を受け入れた人たちは多くの恩恵を享受できたのでしょう。

働き方や報酬面で自分に裁量があるだけでなく、他の会社との仕事も開拓していけるわけですしね。

サラリーマンより、一段自立した存在になることを、会社が後押ししてくれたわけです。

会社に縛られすぎない働き方、キャリア形成、報酬のあり方、多くの裁量の獲得、収入源増など、働き手にとって実に魅力的な仕組みといえそうです。

社員の個人事業主化を推進した会社側のメリット

社員フリーランス化の制度は、当然、社員のためだけを思っての制度ではなく、会社側にも恩恵をもたらす制度であったりもします。

そのいくつかを紹介していきたいと思います。

裁量があるほうが、幸福感も高いし仕事のやる気も段違い

サラリーマンがフリーランスに比べ、必ずしも幸福感も少なく裁量が少ないと言い切ることはいたしませんが、裁量が大きいことは間違いなく幸福度やモチベーションを高めることに結びついています。

社会的なステータスという意味では、フリーランスに比べサラリーマンのほうが大きいでしょう。

しかし、社会的ステータスを気にして生きるということは周囲からどう見られるかを常に気にして苦しむことにつながります。

他人からどう見られるかという呪縛から解き放たれれば、裁量の大きい働き方への移行がいかに素晴らしいものであるか、理解できると思います。

最近の若い人たちはとくに価値観が変遷・多様化してきているようです。

終身雇用にはそもそも期待せず、目先の収入や肩書よりも、やりがい・裁量・スキルアップ・ライフワーク・幸福度などを重視するようになってきていると言えます。

働く人の幸福度やモチベーションが高いことは、仕事を発注したり、ともに仕事をする会社にとってメリットが大きいことは言うまでもありません。

会社が傾いたときに人材が重しにならない

社員のフリーランス化の目的は、前述でもありますが、会社にもしものときがあったときに、社員自ら単独でも”魚を捕る術”を身に付けておいてもらうことで、会社・社員それぞれの負担を減らそうというものです。

もしもの時が起きた時に、会社は社員のクビを切らなくても済みますし、社員は自分自ら新しい収入源の確保に手を打っておけるわけです。

これは双方にとって負担が少なく、過度に依存しすぎない、よりよい関係性の構築にひとやく買っていると言えるでしょう。

脱終身雇用・独立志向のある若手の反応がいい

最近は副業解禁が時代の流れですから、当然、その上をいく社員のフリーランス化は、じぶんが事業主なので副業どころかじぶんで自由に事業を行なえるわけですから、独立志向の高い若手からは非常に好感を持たれるようです。

この社員フリーランス化制度は年配の社員よりも考え方が柔軟な若者から、とくに支持されているようです。

年配の人はいかに大きな組織に属し、長くしがみつくかを考える傾向が強いですね。

それもひとつの処世術ではありますが、時代の流れでそれも難しくなっています。

今の若い人たちは冷静に時代の流れを肌で感じていますね。

先進的な働き方を推進することで社会的な企業イメージアップ

この制度は働き手側だけでなく、会社側にも多くの恩恵をもたらすことがわかってきたようです。

社会的な風潮としてブラックな労働環境は、社会全体で撲滅していきましょうという昨今、自由で幸福度の高い働き方の典型ともよぶべきこの制度を積極的に推進しているこの会社のイメージは良くなるに決まっています。

働き手に裁量がありモチベーションが高ければ、必然的に生産性も上がりますし、イノベーションも起きやすくなるでしょう。

当然、この会社の商品やサービスを利用する購買層や、そのような会社と取引する企業側にも恩恵が大きくなるという話です。

他社も追随するか?社員フリーランス化の流れ

タニタのほかにも、あの電通も社員フリーランス化の制度を導入しています。

ただ、これらの制度を導入するには、導入する企業それぞれに思惑があり、当然制度の内容も異なるので、働き手側にとってメリットがあるかないかを慎重に吟味したほうが良いかもしれません。

最近は少子高齢化でどこも人手不足が叫ばれていて、人の囲い込みにやっきになる企業も多いですが、終身雇用が崩壊した今、個人個人がそれぞれ長い人生のなかでピボットしながら、キャリアを渡り歩いていかなければならない時代です。

それならば初めから会社に依存することを放棄し、自らのスキルセットをつねに考えて錬磨し、自ら事業主として世の中を渡り歩いていきたい・・そう考える人が増えるのは必然でしょう。

そしてそういった人たちを上手く働き手に組み込むために、社員フリーランス化のような柔軟な働き方の制度を導入する企業に人が集まるようになるでしょう。

タニタのプロジェクトが社会にもたらす影響は

かつて日本の年功序列・終身雇用制度にもとづく働き方が大きな成果を上げ、世界を席巻した時代がありました。

時代は流れ、そのザ・日本の働き方では大きな成果を発揮できなくなり、各国との競争に破れるようになってきました。

端的に言えば、スピード感がなく、社員はジェネラリストばかりで、スペシャリストがおらず、イノベーションが起きない・・・。

要は時代の流れにマッチしていない働き方となってしまっていたわけです。

時代に率先して、タニタさんのような試みをしてくれる会社が増えれば、日本の生産性が向上することは間違いないですし、何より働く人たちの多くが、幸せを感じやすくなると確信しています。

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