城の天守に映像を投影する。言葉にすると一行ですが、実際には「城の形をした立体に、ゆがみなく絵を貼る」という難題です。
まず、建物を測るところから
天守は平面ではありません。軒が出て、屋根は反り、壁面は角度を持ち、石垣は不揃いです。そこに複数台のプロジェクターから光を重ねて、一枚の絵として成立させる。
そのために、建造物を3Dデータとして起こし、どの位置から、どのレンズで、どの範囲を担当させるかを設計します。台数が増えれば重なる領域が生まれ、エッジブレンディングで境目を消す必要も出てきます。
一旗は50台以上のプロジェクターと映像機材を自社で保有しています。「この演出をやりたい」と「その機材で足りるのか」を、社内で同時に検証できる。これは制作側にとって、かなり大きな意味を持ちます。
文化財は、触れないという前提から始まる
国宝や重要文化財が相手のとき、いちばん最初に決まるのは「できないこと」です。
建物に器具を固定できない。壁面に近づけて機材を置けない。ケーブルを地面に這わせられる範囲も限られる。照度の上限も決まっています。
その制約のなかで、どこにプロジェクターを立てれば必要な明るさと解像度が出るのか。仮設のやぐらを組むのか、離れた位置から長いレンズで狙うのか。設計の大半は、この折り合いをつける作業です。
現場は、一発勝負ではない
「本番一発勝負」と思われがちですが、実際はその逆です。仕込み期間に、暗くなってから夜ごとに調整を繰り返します。
気温で機材の挙動が変わる。前日は合っていた位置がわずかにずれる。雨で予定が飛ぶ。その全部を織り込んだうえで、初日の定刻に必ず点灯させる。地味に聞こえるかもしれませんが、ここが一番の腕の見せどころです。
会期が始まってからも、機材は毎日動きます。ランプの光量は徐々に落ちていくし、屋外なら風でわずかに向きが変わる。運用まで含めて設計できるかどうかが、最後の品質を決めます。
3DCG・音響・照明まで、担当範囲は広い
クリエイター/エンジニア職の担当範囲は、3DCG制作、映像制作、音響・照明システムの設計まで及びます。
分業が細かく分かれた組織であれば、「自分はモデリングまで」「自分は現場調整だけ」と線を引けます。一旗の場合は、つくったものを自分で現場に持っていき、自分の目で見て直すところまでが1セットです。
つくって終わりではなく、自分がつくったものが人の前でどう見えるのかを最後まで見届けたい人には、これ以上ない環境だと思います。
こんな方と働きたい
・クリエイティブと技術、どちらか一方に閉じたくない方
・制約条件のなかで最適解を出すことを楽しめる方
・現場に出ることを前向きにとらえられる方
自分が設計した光が、何百年も前に建てられたものの上に乗る。その日の夜のことは、しばらく忘れられないと思います。