(前回までのあらすじ)
型にはまったモノづくりに飽きたらなくなった山根は、技術力を活かして効率の悪い特殊コンクリート製造を本格化。同業者から冷ややかな目で見られつつも、着実に成果を上げていった。
CG、写メ、新しいものには飛びついた
狭い業界内でコンクリートの安売り合戦をしていては、未来がない。そう思って新しいチャレンジを始めるのですが、それには私自身の気質も関係しています。
私は昔から新しいモノや技術が大好き。なんでも積極的に試す性格です。CGが出始めの頃、「これは面白い!」と感じた私は、写真にCGを重ねて、コンクリートの完成予想図を作り、営業に回っていました。午前中に役所などに行って話をし、急いで事務所に帰ってCGを作り、打ち合わせの内容を反映したCGを午後には持っていく。担当者は驚いていました。そもそも、中国地方でCGを使った営業をしていたのは、うちしかありませんでした。
今では「写メ」なんて言っても通じないかもしれませんが、携帯に「写メール」がついたときも、すぐに飛びつきました。現場の様子を撮って、さっと先方に送れる。こんなに便利なツールなら、仕事に使わない手はないと思ったのです。おかげで、クレーム対応も早くなり、信頼もしてもらえるようになりました。
染まっていない人とチームを組む面白さ
だから、「kooge.co」でのコンクリートの挑戦も、不安よりむしろワクワクしていました。外部の若いデザインチームと一緒に、写真を撮影したり、Webサイトや見せ方を考えたり、プロダクトデザイナーと一緒にプロトタイプを作ったり。自分がずっと取り組んできたコンクリートを、外側の目線で見ると、こうも変わるのか。新しい発見がたくさんありました。
新しい人と一緒に仕事をする。その時、年齢は関係ないのだと思います。お互いが知っていることと知らないことを持ち寄り、そこで新しいものを作り出すのは、ものづくりの醍醐味とも言えます。
さらに、それが外に伝わって、効果が出ればもっと嬉しい。そんなことが、現実に起こり始めました。雑誌やメディアで名前を聞く、有名建築家の方の事務所から、いろんな問い合わせが舞い込んでくるようになったのです。
「こんなことができないか」
「サンプルキットを見せてほしい」
「工場見学に行きたい」
私たちのチャレンジが、こんな反響を呼ぶとは、思ってもいませんでした。
業界誌でもたくさん取り上げられるようになります。なんせ、コンクリートでチャレンジをしている会社は他にないから、注目されるんです。とは言っても、注目されているだけではダメで、先方が望むものを形にして、期日や予算通りに納品することが使命。浮かれていられるはずもなく、試行錯誤の日々は続きました。
(つづく)