QIX EXPO 2025では、業界をリードする専門家の方々をお迎えし、特別な記念講演を実施しました。
動物医療のこれからを見据えたセッションは、多くの学びと気づきを与えてくれる貴重なひとときに。
前編では、2組の講師による講演内容をレポートします。
講演①「現場で活きる力をどう届けるか──臨床教育の最前線と大学の使命(挑戦)~大学の第一線で臨床も教育も担う2人が本音で語り合う~」
登壇者:
- 枝村一弥 (日本大学 動物病院 病院長/教授)
- 井坂光宏 (酪農学園大学 伴侶動物外科ユニット 教授)
現場で即戦力となる獣医師・看護師を育てるために、大学教育はどうあるべきか。
臨床と教育を両立するお二人の対談では、「ジェネラリストとスペシャリストの教育バランス」や「大学と現場との連携」など、実感を伴う課題と展望が語られました。
井坂先生は、欧州認証を活かした「参加型臨床実習」の取り組みを紹介。学生の主体性を引き出し、判断力を育てる実践的な教育手法が注目されました。
一方、枝村先生は「卒後1日目からプロである」という意識を育むため、学生の段階から現場に近い医療行為に触れる重要性を強調。机上では得られないリアルな経験の必要性が語られました。
また、両氏が共通して挙げたキーワードが「人間力」。
動物と飼い主に信頼される医療人に求められるのは、確かな知識や技術に加えて、共感力やコミュニケーション力といった“人”としての力。
「教育は卒業で終わらず、卒後教育・地域医療とシームレスにつながるべき」と語る姿勢からは、次世代育成への強い責任感が伝わってきました。
講演②「生体におけるオメガ3脂肪酸の重要性」
登壇者:
- 守口徹 (株式会社食機能探索研究所BABILON 代表取締役/日本脂質栄養学会 理事長)
- 白畑壮 (プリモ動物病院古淵 歯科内視鏡センター 院長)
続いてのセッションは、近年注目されている「オメガ3脂肪酸」の講演。
栄養と医療の交差点に位置するこのテーマについて、研究と臨床、両視点から深掘りされました。
守口先生は、オメガ3脂肪酸の基本的な生理作用を解説。
細胞膜の構成要素としての役割に加え、抗炎症・免疫調整・脳機能サポートなど、動物の全身にわたる影響が明らかにされています。
白畑先生からは、実際の歯科治療や皮膚疾患などの症例をもとに、補助療法としての活用事例が紹介されました。
術後の炎症抑制や回復促進といった面での効果が期待され、今後の臨床応用の可能性に大きな注目が集まっています。
課題として挙げられたのは、「摂取量設計」「製剤の品質管理」「エビデンスの蓄積」。
それでも、「栄養は単なる補助ではなく、動物のQOLを左右する医療の一部である」と語る言葉には、今後の展開に向けた強い展望が込められていました。
次回のレポート(後編)ではQIX代表・生田目も登壇した注目のセッションをお届け予定です。最新の知見と実践から、動物医療の“これから”を深掘りしていきます。お楽しみに!