いくらWebページが一般的となったとはいえ、少なくとも私の知る限り、初めての病院がどんな雰囲気なのかは、受診してみなければ分からないものです。窓口で冷たくされないだろうか、ちゃんと話を聞いてもらえるだろうか、医師は怖くないだろうか、そんな不安を感じながら最初のドアを開くのはもうやめましょう。
例えばファミリーレストランに、あなたはドキドキしながら入店することがあるでしょうか。病院とは何が違うのでしょうか。ただの食事と健康上の問題。違いはそれだけでしょうか。
大手のサービス業では、接遇そのものを大切にしていることは、医療以外の職務経験が無い私でも分かります。一方、ほとんどの医療機関で、接遇は非常に軽んじられ、時には無視されてすらいます。
病院を受診して、ただでさえ健康問題で不安を抱えているのに、不愉快な思いまでしては、本末転倒です。患者が受診行為自体に感じる不快感は、医学的には精神的にストレスという侵襲なのです。その侵襲は治療上必要なはずがない。日々の院内で、あなたは患者に無駄な侵襲を与えていないかと、私はすべての医療者に問いたい。医療機関は、サービス業以上に接遇や院内の環境が整っていなければならないはずなのです。挨拶、笑顔、言葉遣い、それ以前に、職員の私語や、院内の清掃、照明、匂い、騒音といった基本的な点から環境を作る。いつ訪れても同じ寛ぎが保証される。
ファーストフードを食べに行けば笑顔で挨拶され、髪を切りに行けば寛げる空間が待っています。同じことが医療機関でできない訳がありません。重視していないだけなのです。
元々、医療従事者には、守秘義務や、病状への配慮といった、独特な気遣いや気づきのスキルが求められています。ほとんどの関係者は難なくこなしています。それだけの能力のうち、ほんの幾分かを接遇にも注力すれば、環境は容易に変えられると、強調したいと思います。