SARUCREWのTECHチームに、ちょっと変わったエンジニアがいる。 前職はブロックチェーンゲーム会社の経営者。 面接は1社しか受けていない。冷やかしだったらしい。 そんな園田さんに、今やっていることを聞いてみた。
■ 8時間かかる仕事を、ボタン1つにした
広告運用には「複製」という作業がある。
地域別、年齢別に広告動画をパターン化し、何百本も量産する。新宿に住んでいる人向け、吉祥寺に住んでいる人向け──内容はほぼ同じだが、1本ずつ手作業で作らなければならない。1本5分。100本で500分。丸1日、人間がそれだけをやる。
園田さんはこの作業を見て、動画を3つの要素に分解した。音声、テロップ、映像。この3つをGoogle Driveのフォルダに入れておけば、自動で組み合わせて動画を量産するツールを作った。
500分かかっていた作業が、100分以下になった。しかもツールが動いている間、人は別の仕事ができる。携帯からでも動く。ボタンを1つ押せば、動画が大量に出てくる。今では8種類のパターンに対応し、誰でも使えるツールになっている。
──それ、職を奪ってませんか。
「逆に、それがスタンダードになるんだと思います。仕事ってピラミッドだと思ってて、一番下に複製とか反復作業があって、上に行くほど考える仕事になる。下の段をツールに任せれば、全員が1段上がれる。複製をやらされていた人が、何を作るか、どう届けるかを考えられるようになる。そっちの方が会社も強くなるんじゃないですかね」
■ 作ったのに、使われなかった
ここまで聞くと順調に見えるが、園田さんには「やらかした」経験がある。
入社して最初に感じたギャップが、まさにこれだった。
「ツールを作ってほしいと言われて作ったのに、実際には使ってくれないっていうのがめちゃくちゃ多くて。」
「現場の運用者は目の前の課題を解決したいだけなんですよね。でも作ったツールを組織として活かすには、使い方を教えて、他の人と連携させて、ベルトコンベアみたいに流れを作らなきゃいけない。そこが全然足りなかった」
象徴的だったのが、さっきの動画複製ツールだ。
ヒアリングしたのは複製作業をやっている現場の担当者だけだったが、実際の制作フローでは、その上流に台本を考える人、動画を作る人がいた。
対応出来るフォーマットは1〜2パターンしか対応していなかったが、実際には7~8パターンが存在しており、多彩な動画を発注してくるから、ツールが対応できない。
結果、「使えない」と判断されてお蔵入り。マンパワーで解決する原始時代に逆戻りした。ここから実際に今のツールが使われるまで、プロジェクトは1ヶ月ほど遅れることになる。
「線の中の1つの点だけを見て作ってしまった。
本流が見えていれば、もっと点を打てたのにー」
この失敗から、園田さんは作り方・考え方を変えた。
現場の担当者だけでなく、その上流である台本を考える人、動画を作る人にも聞きに行くようになった。
どういうパターンの動画が必要なのか、どんな構成で発注が来るのかを全部聞いて、対応するパターンをどんどん増やしていった。
「エンジニアって、一応作れば終わりなんですよ。でも会社単位で見ると、作ったものをうまく使えるところまで引っ張る人がいなかったら回らない。だったら僕がやるよね、っていうぐらいの勢いですね」
ツールが使わず失敗に終わった時、誰も彼を責めることはなかった。
それじゃあ「次どうする?」から始まる。園田さんはそれを「たまたま」と言っていたが、たまたまが続く環境は、恐らくそれが認められる環境なのだ。
■ ブロックチェーンゲームの経営者が、なぜここに
園田さんの前職は、ブロックチェーンゲーム開発会社の経営者だ。
8人で立ち上げ、自社でゲームを開発し、ツールも他社に提供していた。
その前は── と園田さんは付け足す。
「大学生の時からゲーム制作がずっと好きで、趣味でSteamにゲームを上げたりしてたんです。」エンジニアとしての下地は、そこから続いている。
「資金がない中で開発に1〜2年かけて、やっと出せたゲームだったんです。ユーザーが数千人いて、要望のやり取りも全部自分でやってた」
その経験が、今の「聞いてから作る」スタンスの原点になっている。
「エンジニアって、"こうしてください"って言われたら"実装しました"で終わるのが普通だと思うんです。でも、自分はエンジニア畑の出身じゃなかった。
会社経営の中で、相手が何を欲しがっているのか、その裏に何があるのかまで考える癖がついた。
"Aをやって"って言われたら"Aをやりました"と返すだけじゃなくて、なぜこの人は声をかけてきたのか、本当は何を求めているのかまで考えるようにしています。」
そんな会社を離れた理由は2つ。
共同創業者との方向性の違いと、ブロックチェーンゲーム市場の縮小だった。
「次にどこに行こうか考えていた時、興味があった広告業界を少しだけ覗いてみようと思ったんです。
広告業界は何億円規模のお金が動く。自分の行動が大きな利益に直結する方が面白いじゃないですか。」
SARUCREWを偶然見つけたのはWantedlyだった。
実は、面接は1社しか受けていない。最初は冷やかしのつもりだった。
「自分に合わなさそうだったら、AIの会社を知り合いと新しく作ろうと思ってたんですよ。でも話を聞いたら、少人数で何でもやっていいって言われて。
最初、マニュアル的な教育は一切なく、現状の課題を共有されて、話を聞いてきて解決してあげてきて…って。」
「自分で会社を経営していたからこそ、もう一度何かに熱くなりたかった。
面接を受けたその場で、内心入社を決めていましたね。」
■ AIと共に働くということ
── AIに全部任せていると、人が育たなくなりませんか。
「そこは結局人がスクラップ&ビルドしないといけないんですよ。
意思決定をする事って、ものすごいストレスじゃないですか。だからAIに決めさせてしまう人が出てくるリスクもあるし、AIに逃げたくなる気持ちはわかる。
でも、それを放棄しないことがすごく大事だと思ってます。
開発のスピードが10倍、20倍になってる今、試せることはどんどん回す。
本当にダメだったらやめればいい。
失敗しても誰も責めないし、次に行こう!っていう環境があるから、やれるんです。」
──園田さんが、この先一緒に働きたい人は、どんな人ですか?
「ヒアリングして、形にして、フィードバックもらって、ワンストップで全部回す事が出来る、やりたい人ですかね。」
「完璧じゃなくてもいいんです。失敗しても億劫にならず、めげずに次に挑戦できる人。そんな人ですね。見ての通り、うちは失敗してもダメだったことが1回もないんで(笑)」
「そんな環境だからこそ、"次いこう!"の精神でチャレンジできる人とは、どこまでも一緒に成長していける気がします。」
技術力だけでは武器にならなくなった時代。園田さんは共に戦えるチャレンジャーを強く求めていました。
■ 編集後記
取材の最後に「SARUCREWってどんな会社?」と聞いた。
園田さんは少し考えて、こう言った。
「挑戦する人を馬鹿にしない会社。後押ししてくれる会社ですね。」
印象的だったのは、失敗談を話す時の表情だ。
「使われなかった」と言いながら、どこか楽しそうだった。
500分を100分にするツールも、最初は「とりあえず作ってみた」から始まっている。
動いたら使ってもらう。ダメだったら直す。誰も責めない。
だから、次に行ける。
元経営者だった人が、"次どうする?"から始まる新しい環境で挑戦を続けている。
それこそが、この会社の輪郭の一部であり、魅力なのかもしれません。
[後編]「ツール作りました」で終わらない。作ったものが「浸透」するまでが仕事
後編は、園田さんがGoogleの2段階認証を突破するボットを作った技術的な話から、SARUCREW社内の全AIエージェントをSlackに移した理由まで──
「作ったものをどう浸透させるか」の思想を掘り下げた記事です。
▶ [後編を読む] (2026年7月26日 10:00以降 公開予定)