MONKEY TECHの中心で、ASP「MONKEY」をはじめとした自社プロダクト群を作り続けてきた箱守 崇さん。
新卒で広告代理店のエンジニアとして入社し、DSP・DMP・ASPの開発、データ基盤の刷新、そして自社ASPの立ち上げを経て、現在はCTOとして組織を率いています。
「事業会社のエンジニアリング」と「少人数で成果を出すチーム」という、似ているようで両立が難しいテーマに、箱守さんはどう向き合っているのか。
キャリアの軌跡、技術選定の思想、マネジメントの判断軸まで、ご本人にお話を伺いました。
▮キャリア:なぜ、未経験エンジニアがCTOになったのか
── まず、これまでのキャリアを教えてください。
新卒でインターネット広告代理店にエンジニアとして入社しました。
未経験からのスタートでしたが、自学と実務を通じてDSP・DMP・ASPシステムの開発に携わり、Java / JavaScript / Struts / AngularJS を用いた管理画面のフロントエンド・バックエンド開発からキャリアをスタートさせました。
その後は広告計測の根幹を担うシステム開発へと移りました。
「絶対にデータをロストできない」という緊張感の中で、パフォーマンス・整合性を含めたデータ設計・DB設計に従事していました。
── 転機になった出来事はありますか。
ある時、広告クリック後の応答速度がエンドユーザーの購買体験や購入率に直結していることに気づいたんです。
そこから既存のデータキャッシュ機構を見直し、更新速度を10分から30秒に短縮する改善を主導しました。他にも様々な変化に取り組んで挑戦しているうちに、気づいたら、チームのリーダーを任されていましたね。
そのタイミングで、新卒同期でもあった現SARUCREW社長の石井さんから声がかかりました。
「新しいASPを作るから手伝ってほしい」と。
当時の後輩と2人でチームを組み、開発をスタートさせました。
これが、のちのMONKEY TECHの原点になります。
── ASP「MONKEY」の立ち上げですね。
はい。2018年当時としてはモダン寄りだった Docker / Vue.js / Kotlin、高圧縮なカラムナDB、AWSによるマネージド構成を採用しました。
少人数でも運用しやすいアーキテクチャを、攻めた構成で実現したかったんです。
2019年にASP「MONKEY」をリリースし、以降は機能追加・広告媒体とのAPI連携・柔軟なレポート集計機構などを積み上げてきました。
2021年にMONKEY TECH社のCTOとして参画し、現在に至ります。
▮なぜMONKEY TECHだったのか
── 前職にも開発プロジェクトはあったと思います。なぜジョインを決めたのでしょう。
正直、迷いもありました。
それでも決断したのは、石井社長が掲げた「3年で売上100億」という目標が、口だけではないと確信できたからです。
新卒から同じ環境で働いてきた同期だからこそわかる、「あの人ならやる」という感覚があったんです。
大変だろうとはわかっていましたが、その環境にワクワクしました。
── 入ってみて、いかがでしたか。
想像通り、刺激的な毎日でした。
それ以上に印象的だったのは、「どうやったらできるか」を全員が常に考えているパワフルさです。メンバーの姿勢そのものが、自分を動かし続ける原動力になっています。
▮ エンジニアリングへの思想
── 受託やSaaSではなく、事業会社のエンジニアリングを選ぶ理由は。
受託・SaaS開発では「何を作るか」が先に決まっていることが多いと思いますが、事業会社のエンジニアリングは「なぜ作るか」から関わり、ビジネスの結果に直結します。
どちらが正解という話ではなく、どちらを面白いと思えるか――自分は間違いなく後者ですね。
── 「何を作るか/作らないか」をどう判断していますか。
顧客の要望をそのまま実装するのではなく、その背景にある業務フローや本質的な課題(Why)を理解した上で、複数の要望を一度に解決するシンプルな機能を作る組織にしたいと思っています。
エンジニアは仕様策定の段階から関与し、フロントエンド・サーバーサイドを問わず一気通貫で開発することで、コミュニケーションコストを削減し、プロダクト価値の最大化に直結させる。これが理想形です。
逆に、「言われた通りに作る」「使われない機能を積み上げる」「作ること自体が目的化する」組織にはしたくありません。
機能を追加する前に必ず「何がしたいのか」を問い、Whyを掘り起こし、抽象化で本質課題を解く。それが機能肥大化を防ぐ方法だと思っています。
── いま、AI×ビジネスの領域で動かしていることを教えてください。
これまで分断していた広告媒体データ・自社トラッキングデータ・広告主データを統合し、クリエイティブごとの効果の可視化から「どの媒体・配信面にどれだけ予算を投じればどれほどのリターンが得られるか」という予算最適化分析まで実現するデータ基盤・プロダクトを開発中です。
また、案件の受注から制作・入稿・運用・レポーティング・改善に至る一連のフローにAIを参加させる取り組みも進めています。
── 技術選定で大事にしていることは?
最小限の依存で薄く入れられるか、生成AIとの相性はどうかを考えながらも、最終的な基準は「実現すべきことに対してアウトカムが出しやすいか」です。
モダンかどうかより、それが問いの核心だと思っています。
▮ チームとマネジメント
── 少人数で成果を出すために、意識していることは?
エンジニア全員がユーザーの悩み・課題・やりたいことを理解し、ドメイン知識を獲得することです。
それによって「的を射たアウトプット」が生まれ、アウトカムに直結します。
知識なきコードは、問いの立て方から間違えてしまいますから。
── 失敗から学んだことはありますか。
業務フローが不確定な状態でプロダクト開発を始めてしまったことがあります。
プロダクトとして作り込む前に、別の方法で業務フローの検証やサービス運営を先行できたはずでした。
不確実性が高い状態でプロダクト開発を進めると、ブレが大きく投資対効果が低下するだけでなく、ユーザーへの価値提供も遅れる。
場面に応じた計測・検証・改善のサイクルを先に回す。この教訓は、今も判断の軸になっています。
── メンバーとはどう関わっていますか?
メンバーによりますが、週次で1on1を実施しています。
進捗の確認というよりは、「いま自分が向き合っているものが、本当に解くべき課題になっているか」を一緒に確かめる時間にしたいと思っています。コードの話よりも、ユーザーの業務フローや、その奥にある「何が困っているのか」を話すことの方が多いかもしれません。
毎週月曜にはチーム全体の課題や改善を話す定例も設けています。
ここでも、目線を合わせたいのは進捗ではなく、いま向いている方向が"作るべきもの"に向いているか。
そこさえ揃っていれば、あとは少人数でも、ちゃんと前に進める実感があります。
▮ 一緒に働くメンバーへ
── 最後に、これから一緒に働きたい人に向けて。
MONKEY TECHは「コスト削減のための組織」ではありません。
約2,000社のメディアと積み上げてきた広告データと、広告・マーケティング・制作をワンストップで動かすオペレーションを、エンジニアが事業の中枢として動かしていく組織にしていきたいと思っています。
求めるのは、ユーザーの悩みや課題を自分ごととして理解し、どうすれば解決できるか・より良くなるかを考えられる人。
AIの進化も、会社としての挑戦も、変化そのものを楽しめる人です。
SARUCREWが守りたい文化がひとつあります。「必死になることが恥ずかしくない場所」であること。クールぶらなくていい、格好つけなくていい。課題に全力で向き合い、ちゃんと悔しがり、ちゃんと喜べる――そういうエンジニアと景色を見たいですね。
▮ 編集後記
取材を通じて一貫していたのは、「いいプロダクトを作る前に、いい問いを立てる」という姿勢でした。
技術選定もチーム運営も、語り口はとても穏やかなのですが、その根っこには「機能を増やすことを目的にしたくない」という強い意志がありました。
新卒未経験からCTOまで歩んできた箱守さんが、いま一番時間を使っているのは、コードを書くことよりも、メンバーと一緒に「なぜ作るのか」を問い直すこと。少人数で事業の中枢を動かす組織の手触りが、少しでも伝わっていたら嬉しいです。
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