~久保田に聞く、ゲーム分析の面白さ~
こんにちは。セガ 第2事業部 戦略分析室 室長の柏田です。
前回は、戦略分析室のマネージャーである鈴木に話を聞きながら、私たちがなぜ「課題起点」の分析を重視しているのかをご紹介しました。
今回は、戦略分析室で分析業務を担当している久保田に話を聞いてみたいと思います。
「分析」という仕事に対して、以下のようなイメージを持つ方もいるかもしれません。
- データを集計する仕事
- レポートを作る仕事
- 分析結果を出す仕事
しかし、戦略分析室では少し違う考え方をしています。分析結果を出した先に何があるのか。ゲーム分析の現場で何が求められているのか。実際の仕事を踏まえて聞いてみました。
📌 今回話を聞いた人
- 久保田(戦略分析室)
セガ入社後、エンジニアとしてキャリアをスタート。その後、『甲虫王者ムシキング』『オシャレ魔女 ラブ and ベリー』などのキッズ向けアーケードゲーム開発に従事し、プロデューサーとして複数タイトルの運営・開発を担当。現在は戦略分析室に所属し、コンシューマーゲームを中心とした分析支援を担当している。
開発から分析へ移ったきっかけを教えてください
柏田: 久保田さんは元々プロデューサーとして活躍されていましたが、分析業務へシフトした経緯を教えていただけますか。
久保田: もともとはエンジニアでしたし、その後は開発や運営をずっと泥臭くやっていましたので、最初から分析をやりたかったわけではないんですよね(笑)。
きっかけは、柏田さんが当時担当していたタイトルでした。当時、現場でも分析の必要性は感じていましたが、まだ専任で動ける人が少なくて。私にエンジニア経験もあったので、「ちょっと手伝ってもらえませんか」と声をかけてもらい、一緒に分析を始めたのが最初でした。
やってみるとこれが意外と面白くて。プレイヤーがどう遊んでいるのかを客観的に見られますし、開発とはまた違う角度からゲームを観察することができました。そこから徐々に分析業務の比重が大きくなっていったという流れです。
開発経験は分析に活きていますか?
柏田: 開発やプロデューサーとしての経験が、分析に活きる場面はありますか?
久保田: かなりあると思います。開発現場を経験していると、「なぜこの仕様になっているのか」という意図が分かります。だから数字を見たときにも、単純な結果の良し悪しだけではなく、「開発側はここを狙ったんだな」と裏側まで考えられるんですよね。
逆に、分析結果を持って開発チームと話をするときも、彼らと同じ言葉、いわゆる共通言語で話せます。単なる分析担当というよりは、「開発と分析の橋渡し役」のような感覚で動けるのは、これまでのキャリアがあるからこそだと思っています。
分析者の仕事とは何だと思いますか?
柏田: 久保田さんは、分析者の仕事をどのように捉えていますか?
久保田: 一言で言うなら、「分析結果を出すこと“だけ”が仕事ではない」ということです。もちろん分析作業はしますが、それだけではゲームは1ミリも変わりません。
例えば、データとして以下のような結果が出たとします。
- 特定機能の利用率が下がっている
- 継続率が下がっている
- 想定した行動が起きていない
ただ、この数字を見せるだけでは現場は何も変わりません。「その結果をどう解釈するのか」「何が原因だと考えるのか」「どういう解決の選択肢があるのか」。そこまで筋道を整理して、初めて分析に価値が生まれると思っています。
分析を始める前に考えていることはありますか?
柏田: 「分析者」というと、まずPCに向かってデータを見始めるイメージがありますが、久保田さんはどうでしょうか。
久保田: 私の場合は、まずゲームを見ます(プレイします)。データを見る前に、何が起きているのかを自分の手で体感してみます。
例えば「継続率が下がった」と言われても、数字の羅列だけでは何も分かりません。「誰が離脱したのか」「何が変わったのか」「プレイヤーは何を感じたのか」を、ゲームを触りながらまず仮説として組み立てます。データを確認するのはその後です。ですから実際の仕事では、データを見ている時間より、こうして考えている時間の方が長いかもしれません。
ゲーム分析ならではの面白さは何でしょうか?
柏田: ツールを動かすだけではない、ゲーム分析特有の面白さはどこにありますか?
久保田: やっぱり「プレイヤー体験」という、目に見えない感情を扱うところですね。ゲームって本当に数字だけでは語れないんです。
例えばログデータに「同じ行動」が記録されていたとしても、それが「楽しいから繰り返しやっている」のか、「やり方が分からなくて困って迷っている」のかは、数字だけを眺めていても判別がつきません。だからこそ自分でもゲームを徹底的に遊びますし、開発チームとも話します。プレイヤーが何を感じているのかを想像しながら分析するプロセスこそが、ゲーム分析の一番面白いところだと思っています。
戦略分析室で活躍する人の特徴はありますか?
柏田: どのような人が戦略分析室に向いている、あるいは活躍できると思いますか?
久保田: 根底として「ゲームが好きな人」ですね。別にゲームがものすごく上手である必要はなくて、「なぜこのゲームは面白いんだろう?」「なぜこれほど遊ばれているんだろう?」と、その仕組みを考えるのが好きな人です。
あとは、「答えがない問題を考えるのが苦にならない人」ですね。分析の仕事って、教科書のような正解がないことばかりです。ああでもない、こうでもないと仮説を組み立てるプロセスそのものを楽しめる人は、とても向いていると思います。
おわりに
今回は、ゲーム開発と分析の両方を経験してきた久保田に話を聞きました。
話を聞いていて改めて感じたのは、戦略分析室における分析者の仕事は、分析結果を出すことではなく、「ゲームをより良くするための判断を支援すること」だということです。
課題を整理し、仮説を立て、分析し、開発チームと議論し、意思決定につなげる。そこまで含めて初めて「分析者の仕事」だと私たちは考えています。
次回はいよいよ最終回です。戦略分析室が目指している姿や組織として大切にしている考え方、そして実際の働き方についてご紹介したいと思います。どうぞ最後までお付き合いください!