【第2回】なぜ戦略分析室は「課題起点」にこだわるのか
~鈴木マネージャーに聞く、分析組織の価値~
こんにちは。セガ 第2事業部 戦略分析室 室長の柏田です。
前回の記事では、戦略分析室が「データを見る組織」ではなく、「ゲーム事業の意思決定を支援する組織」であることをご紹介しました。
今回はもう少し踏み込んで、私たちがなぜ「課題起点」の分析を重視しているのかについてお話ししたいと思います。戦略分析室のマネージャーを務める鈴木に話を聞きました。
📌 今回話を聞いた人
- 鈴木(戦略分析室 マネージャー)
コンサルティング会社を経てセガへ中途入社。「エンターテインメントに関わる仕事がしたい」という思いから、セガへ転職。入社当初は管理部門に所属していたが、入社後数か月で分析組織の立ち上げに参画。分析プロトタイプの作成や分析テーマの整理などを担当し、戦略分析室の立ち上げメンバーとして組織づくりを推進。現在はマネージャーとして複数タイトルの分析支援やメンバー育成を担当している。
なぜセガに入社したのでしょうか?
柏田: まずは鈴木さんがセガに入社した経緯を教えてください。
鈴木: 前職はコンサルティング会社で働いていました。仕事自体は面白かったのですが、次第に「自分が本当に好きなエンターテインメントに関わりたい」という思いが強くなりました。
その中でセガに入社し、最初は管理部門に配属されました。ただ、ちょうど分析組織を立ち上げるタイミングだったこともあり、入社後数か月で立ち上げに参画することになりました。
当時はまだ組織も小さく、分析の進め方もこれから作る段階でした。最初の分析プロトタイプを作ったり、分析テーマを整理したりしながら、現在の戦略分析室の土台作りに夢中で関わってきました。
分析組織の価値はどこにあるのでしょうか?
柏田: 鈴木さんはよく「分析組織の価値は分析そのものにはない」と話していますよね。これはどういう意味でしょうか?
鈴木: 少し誤解を招く言い方かもしれませんが、「分析結果そのもの」には価値がありません。価値が生まれるのは、その分析が意思決定に使われたときです。
例えば、以下のような分析結果があったとします。
- 売上が下がっている
- 継続率が下がっている
- 特定機能の利用率が低い
これらを知っただけでは、現場は何も変わりません。その結果をもとに、
- 何が起きているのか?
- なぜそう考えられるのか?
- 次に何をするべきなのか?
これらを整理し、実際の判断(アクション)につながって初めて、分析の価値が生まれると思っています。
なぜ戦略分析室は「課題起点」にこだわるのでしょうか?
柏田: 戦略分析室ではよく「課題起点」という言葉を使います。なぜそこまで重視しているのでしょうか?
鈴木: 分析者はどうしても「データ」から考え始めたくなります。しかし私たちは、「何のデータを見るか」より先に、「何を解決したいのか」を徹底的に考えます。
例えば、開発チームから「継続率が下がったので分析してほしい」という相談があったとします。そこでいきなり分析を始めるのではなく、まずは以下のような点を整理します。
- それは本当に(今すぐ解決すべき)問題なのか?
- 誰に起きているのか?
- どれくらい影響があるのか?
- 最終的に何を判断したいのか?
「課題」の定義がズレている状態では、どんなに高度な分析をしても意味がありません。だからこそ、私たちは課題起点を何よりも重視しています。
鈴木さんがよく話している「視座・視野・視点」とは?
柏田: チーム内でもよく出てくる言葉ですが、候補者の方にもぜひ知っていただきたい概念ですよね。それぞれ詳しく聞かせてください。
- 👁️ 視座(誰の立場で考えるか)
私たちが支援しているのは、プロデューサー、ディレクター、開発・事業責任者といった「意思決定者」です。そのため、自分が知りたいことではなく、「相手が今、何を判断しなければならないのか」という経営や開発トップの視座で考える必要があります。 - 🌐 視野(どれだけ広く捉えるか)
例えば、ゲーム内のある機能だけを見るのではなく、「タイトル全体」「プレイヤー体験全体」「事業全体」まで視野を広げて考えることが重要です。局所的には正しい改善でも、全体で見ると逆効果になることがあるため、分析者には広い視野が求められます。 - 🎯 視点(どこに注目するか)
先ほどもお話しした通り、私たちは「データ起点」ではなく「課題起点」で考えます。分析を目的化すると「分析はしたけれど何も変わらなかった」という状態になりがちです。そうではなく、「何を解決したいのか」という視点を常に忘れないようにしています。
戦略分析室で活躍している人の共通点はありますか?
柏田: 実際、どのような人がこの組織で活躍していると思いますか?
鈴木: 一番は「構造化が好きな人」ですね。問題が起きたときに、焦ってすぐ答えを出そうとするのではなく、
- 何が分かっているのか
- 何が分かっていないのか
- 本当の課題(ボトルネック)はどこか
を冷静に整理できる人は強いです。
また、ゲームそのものへの興味もやはり重要です。数字だけを追うのではなく、「なぜプレイヤーはこういう行動をしたんだろう?」と、ユーザーの心理や体験にまで思いを馳せるのが好きな人は、この仕事を心から楽しめると思います。
育成で意識していることはありますか?
柏田: マネージャーとして、メンバーの育成で大切にしていることは何でしょうか。
鈴木: 「分析手法」を教えることよりも、「考え方」を教えることです。
分析ツールやトレンドの手法は時代とともに変わります。しかし、「課題を整理する力」「仮説を立てる力」「意思決定を理解する力」は、普遍的で長く使える能力です。そのため、安易に答えを教えるのではなく、「一緒に問いを考える」というコミュニケーションを大切にしています。
おわりに
今回は、戦略分析室のマネージャーである鈴木に話を聞きながら、なぜ私たちが「課題起点」の分析を重視しているのかをご紹介しました。
分析の価値は分析結果そのものではありません。その分析が意思決定につながり、ゲームをより良くすることにこそ価値があります。戦略分析室では、「視座・視野・視点」を大切にしながら、日々ゲーム事業の意思決定を支援しています。
次回は、長年ゲーム開発と分析の両方に携わってきた久保田に話を聞きながら、「分析者の仕事はどこまでが仕事なのか」についてご紹介したいと思います。
分析結果を出して終わりではない、ゲーム分析の面白さをさらにお伝えできればと思います。どうぞお楽しみに!