メタバース教育スタートアップのゲシピ株式会社、シリーズBの1stラウンドをクローズ 累計調達金額が5億円超に
ゲシピ株式会社のプレスリリース(2024年11月28日 10時00分)メタバース教育スタートアップのゲシピ株式会社、シリーズBの1stラウンドをクローズ 累計調達金額が5億円超に
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000085.000031716.html
先日、ゲシピは資金調達のシリーズB 1stラウンドをクローズしたことを発表しました。
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今回の記事では、シリーズBの調達活動に至るまでの背景や、決断の裏側にあった葛藤、そしてゲシピの存在意義について、CEOの真鍋さんにお話を伺いました。
_____シリーズB 1stラウンドのクローズを発表されましたが、今回の資金調達の狙いや背景を教えてください。
2022年の資金調達 シリーズAでは、いわゆるPMF(プロダクトマーケットフィット)の証明を目指していました。まだグロースやスケールはしていないけれども、市場に対して適切な商品が投入されていて、イノベーター層だけでなく一定の顧客に受け入れられている状態です。
その成果を踏まえ、さらなる事業拡大に向けて「シリーズB、動いていこう」と考え始めたのが2023年10月ごろでした。
実は2023年の9月に、eスポーツ英会話の月額料金を8,800円から9,900円に引き上げました。値上げがどのように影響するか慎重に見極めていましたが、実際に退会した方は想定内に留まり、新規顧客の獲得にも大きな影響はありませんでした。
この結果からも、サービスが市場に一定受け入れられていることを実感し、次のシリーズBというラウンドに進んで大丈夫だという判断ができました。
シリーズAまでは、どちらかというとユーザーの課題解決に焦点を当てたフェーズでしたが、シリーズBに進むとなると、事業は明確にグロースステージに入ります。そこで待ち受けているのは全く異なる課題です。一部のお客さまに受け入れられる段階から、大多数のお客さまに受け入れられていると証明しなければならないため、具体的な販売計画を立てる必要がありました。
そのなかで、僕らがどの方向に事業を拡大すべきかは悩ましく、2023年の秋頃から翌24年の1、2月にかけては、本当にシリーズBに進むべきかどうかすごく悩んでいました。
何が悩ましかったのかというと、eスポーツ英会話には2つの進む道があったからです。
eスポーツ英会話は、従来の英語学習を否定するものではありませんが、そこに対する課題感からスタートしたサービスです。受験に役立ったり、英検などの資格を取得したりすることよりも、より実用的な英語のコミュニケーション力の習得を重視していたので、当時のeスポーツ英会話の公式サイトにも、受験や資格に関する記載は一切ありませんでした。
この方向性は「受験勉強だけでは英語を話せるようにならず、留学などの体験を通じて話せるようになった」という実体験を持つ多くのコーチたちから共感を得ており、僕自身もCQOのYasさんも、この方向で事業を進めたいと思っていました。
一方で、「その道に本当に勝てる市場があるのか?」という疑問もありました。確かに続けていくことで、既存の英語学習から私たちのeスポーツ英会話に移行する流れが生まれるかもしれません。しかし、受験や学校のテスト、資格取得などの結果は、子どもたちの成長において無視はできない要素です。親としては、結果がはっきり見えない道を選ぶことに不安を感じるのも理解できます。実際に、「eスポーツ英会話はすごくいいサービスなので続けたいけれど、塾に行く時間を確保するために辞めます」という方もいらっしゃいました。
こうした状況を踏まえて、「eスポーツ英会話は学校の勉強や英検などの資格取得にも役に立つ」という方向に進むべきかどうかは非常に悩みました。要は、これまで自分たちが課題として認識していたものにすり寄っていっていいのか、という葛藤ですよね。
1月から2月にかけては、事前の投資家まわりを始め、多くの方とディスカッションをしました。その中で、「元々目指していた方向性のみに固執した時に、市場が十分に広がっているのか」「IPOの計画が成り立つのか」という点については、投資家の中には疑問を感じる方もいました。僕は一貫して最初の方向性を目指したいと考えていましたが、次第に「自分たちが目指していきたいこと」と「周囲の方が支持するもの」の間に隔たりが生じてきました。
最終的に、自分の中で結論を出すことは非常に苦しかったです。これまで進んできた方向とは異なる道を選ぶ際に、どうすればその選択を仲間たちに理解してもらえるのか、また、何より自分自身がもう一つの方向性に心から共感できるのか悩み続けました。
今振り返ると、eスポーツ英会話の方向性として「自分たちがやりたい課題解決」と「事業として大きくしていくこと」のバランスをどう成立させるか、その点に悩んでいたんだと思います。
自分なりに出した結論は、eスポーツ英会話として追求したい方向性、つまり「エンタメの楽しさを活用して、英語コミュニケーション力を鍛える」という軸は諦めないということでした。この軸はぶらさずに「それだけでは不足だ」と感じる方々に向けて、eスポーツ英会話の良さや要素を保ちつつ、 学校の勉強や受験、資格取得といった面でも役立つものをどう作れるかを考え、この方向で立ち向かおうと決めたのが2024年3月ごろでした。
ただ、この方向性を打ち出した当初は、出来上がりのサービスイメージがまだぼんやりとしていたので、投資家の方に「こういう方向に進む」と話しても、「それって具体的にどんな形になるの?」と聞かれると、解像度高く答えられないことが多々ありました。
今では「英検面談レッスン」の提供が実現したり、商品開発部門に新たなメンバーが加わったことで、「中学生向け文法準備コース」や「中学生コース」などを作り出すことができました。それも、eスポーツ英会話の「エンタメの楽しさを活用して、英語によるコミュニケーション力を鍛える」という軸を維持したまま実現できたのです。
実現した今だからこそ言えますが、従来の英語学習に課題を感じていた1年前には、これほどいいものができるとは思っていませんでした。むしろ、学校の勉強や資格取得といった方向に進むこと自体に大きな葛藤があったので、本当に上手くいくのかという不安は常につきまとっていましたね。
商品開発を進める中で、中学生、高校生、といった成長段階に合わせてレッスンを継続してもらい、大学受験やTOEIC、英検などでも成果を上げてもらうこと、さらには大学生以降では留学や英語力を活かした仕事につなげられるような、中長期のeスポーツ英会話の学習のプランが描けるようになりました。このビジョンを基に事業計画を再構築したのが4月〜5月ごろのことです。
「年齢が上がるにつれて英語力を高めながらも継続してもらうことで、これだけユーザーが積み上がる」という具体的な事業計画を持って、投資家まわりを本格的に進める頃には、だいぶ心が吹っ切れていたと思います。
とはいえ、実際に資金調達を進める中では、精神的に参ってしまう時期もありました。資金調達は時間がかかるだけではなく、肉体的にも精神的にもかなり身を削るような活動なんですよね。
投資家の方とのディスカッションを通じて事業の将来に対する解像度が高まる一方で、これまで見えていなかった別の「リスクや課題」が指摘されたり、自信を失うこともありました。正直なところ、投資家の元に足を運ぶのが辛くなる時期も少なくありませんでした。
そうした中でも既存の株主のみなさんや、会社のメンバーがサポートし続けてくださったことは、特に心理的にとてもありがたかったですね。
_____事業の方向性や資金調達についての葛藤が続いていたと思いますが、真鍋さんはどのようにして乗り越えたのでしょうか?
様々な活動をしながらも、常にメンタルケアは意識するようにしています。その中でも、メンターの方の存在はとても大きかったですね。
シリーズBに進んだ時期は、メンバー数が急増したこともあり、社内の問題も徐々に増えていたタイミングでした。特定の部署にひずみが生じてしまっていたり、現場のケアが必要な場面もありました。
そのような状況で、外部に対しては事業計画や未来のビジョンを伝えていく必要があり、本来はそのことに集中すべきでしたが、実際には社内の問題解決に多くの時間を割いていました。今ではある程度慣れてきましたが、当時は事業やサービスについて考える時間が取れないことを本当に辛く考えてましたね。
そんな時、メンターをお願いしているとある経営者の方にこの悩みを打ち明けると、「経営者として事業やビジョンなど本当に考えたいことを考えられる時間は、2割あるかどうか。会社として緊急度の高い問題を優先しないといけないことはこの先もあるんだから、そんなもんだよ」と言われたんです。
悩みの渦中にいると、その人には問題がとても大きなものに感じますが、実際にそれを乗り越えた人たちからは「こんな理由があって、実はそれほど大きな悩みではないんだよ」教えてもらえるので、実は多くの人が似たような経験をしていること知り、心が軽くなりました。
この頃は、リフレッシュのためにサウナにもよく通っていましたね。元々好きだったんですが、週2〜週3回行くようになったのはまさにこの時期です。理由はシンプルで、サウナにいると熱さと冷たさで、その瞬間だけ頭をからっぽにすることができるからです。みなさんも、普段電車の中などで常に仕事のことを考えちゃうことってあると思いますが、 それが積み重なっていくと段々と仕事に向き合うのが辛く感じるようになってしまう。だからこそ「思考しない時間」を作ることもすごく大切だと実感しています。
実はつい先日、メンバーから「真鍋さんでも仕事が怖いって思うんですね」と言われたことがあったのですが、実は誰よりもトップの人って仕事が怖いと思っているはずなんですよね(笑)。人間誰しもがスーパーマンではないので、時にはメンタルが弱ったり、大なり小なり波がある時もあるのは自然なことです。もちろん、それは僕自身にも当てはまります。
でも、そんな時こそ誰かからヒントをもらったり、好きなことをしてリフレッシュしたりしながら、自分なりの方法でうまくメンタルケアすることが大切だと思います。そうして一歩ずつ進むことで、怖さや不安を抱えながらでも、結果的には前に進むことができるのだと思います。
シリーズBの資金調達に至るまでの葛藤、そして「eスポーツ英会話」の未来を模索する日々。真鍋さんの言葉からは、理想と事業成長のバランスを取る難しさや、悩みとどう向き合ってきたのかがリアルに伝わってきました。
次回の後編では、シリーズB前後のサービスや組織の変化と、真鍋さんの考えるゲシピの存在意義についてお話を伺います。お楽しみに...!