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「再配達ゼロ」を目指すSaaSスタートアップが、物流のラストワンマイルを変革する

私たちの生活を支える物流は、近年ますます存在感を強めています。特にeコマースの分野では、コロナ禍の拡大により巣ごもり需要が増加。個人向けの荷物が増えました。

国土交通省の調査によると、宅配便の取り扱い数は2008年の約32億個から増加し、2019年には約43億個になりました。この状況のなかで更に課題を深刻にしている問題があります。それが「再配達問題」です。

2020年、再配達される荷物は全体の約11%にのぼり、労働力に換算すると年間9万人のドライバーが再配達に時間を費やしています。人件費だけでなく、荷物の保管費用や配送車の燃料代など、コストも増加します。

207株式会社は物流のラストワンマイルの大きな課題を、テクノロジーを用いて解決しようとしている企業です。207株式会社がどのような事業を行ない、何を目指しているのか。CEOの高柳慎也に聞きました。


学生時代に思いついたビジネスアイデアが、物流業界に導いてくれた

――はじめに、207の事業について教えてください。

高柳:僕たちは、物流のラストワンマイルにフォーカスしたITプロダクトを開発・提供している会社です。具体的には、配達員さんの業務効率を高めるアプリ「TODOCUサポーター」や、物流企業向けのクラウドツール「TODOCUクラウド」などを提供しています。
これらのツールは、受け取り先の在宅確認や配送先住所の自動入力、配送先住所の一覧表示機能などを備え、業務を効率化するお手伝いをしています。

――高柳さんはなぜ、これらのプロダクトを手掛けようと思ったのでしょうか?

高柳:遠いきっかけは学生時代に思いついたビジネスのアイデアでした。当時僕はバックパッカーをしていて、2〜3ヶ月家を空けることも多かった。その間の家賃をどうにか減らせないだろうかと考えていました。

――たしかに、使ってない家の家賃を払い続けるのはもったいないですね。

高柳:とてもモヤモヤしていましたね。たとえばインドは物価が安く1泊100円の宿がたくさんあります。しかし、旅行期間は日本のマンションに家財道具を置いておくだけで月に5〜6万円のコストがかかってしまう。家具や家電をトランクルームに預けて家賃を浮かせられたらいいのに、と考えていましたが、2007年の当時はそのようなサービスはありませんでした。


――そのアイデアは現在の事業とは異なりますね。事業立ち上げまでにどのような経緯があったのでしょうか?

高柳:創業までの経歴から話すと、2011年に大学を卒業後、僕は新卒で営業会社に入社しました。この会社は4ヶ月で独立してフリーランスに。その後東京に上京してWebの受託開発のスタートアップに2人目の社員としてジョインして、3年間ディレクターとしてプロダクトの開発に携わりました。

207を立ち上げるきっかけになったのは、2015年にサマリーポケット社で働かせていただいただいたことです。同社は僕が学生時代に思いついたアイデアを形にしていたので、「働かせてください」とお願いしまして。この業務を進めるなかで物流業界の課題と可能性に気づきました。

――それが物流業界との出会いになったと。

高柳:その通りです。物流業界では倉庫のオペレーションやUIの改善が進んでいましたが、サービスの受け手である消費者側のUXの改善が進んでいなかった。一方でeコマースの影響で荷物量は年々増えていたため、可能性のある市場だと感じました。

事業立ち上げの決定打になったのは、2017年に顕在化した再配達の問題です。さらにスマホの普及が進み、位置情報を共有しやすくなっていた。受取人の位置情報を配達員さんに共有できればきっと再配達問題は解決するだろうと思い、2018年に会社を立ち上げました。

創業後はプロトタイプを持って自ら配達、見えてきた現場のペインをプロダクトに活かした


――207は「TODOCUサポーター」などのITプロダクトを提供していますが、これは創業直後に開発を進めたのでしょうか?

高柳:なるべく早く取り組みたかったのですが、そもそも物流システムを構築する知見はなく、業界の方々とのネットワークもありませんでした。そこで、荷物の受取人から料金をもらって夜間に配達するサービス「夜間配達サービスTODOCU」を立ち上げました。このサービスを通して物流業界の方々との少しだけコネクションを持つことができたんです。この「夜間配達サービスTODOCU」を運営したことで、物流業を始めさせていただくことになりました。アナログで属人的と言われていた配送現場のペインを知るためには絶好の機会でした。

――では高柳さんも荷物を届けたのでしょうか?

高柳:はい!、僕も荷物を届けていました。現在も空き時間があれば配達体験をするよう心がけています。軽バンを3台買って物流組合に入り、「TODOCUサポーター」のプロトタイプを使いながら配達しました。

実際に得た知見は大きかったですね。一例を挙げると、配達員さんが行う住所登録に多くの手間がかかっていたんです。配達員さんは1日におよそ100個の荷物を運んでいて、配送先の住所はナビに手入力で打ち込んでいます。実際に配達してみて入力が大変だと感じたので、伝票を撮ると住所や電話番号が登録される「OCR」をシステムに組み込みました。

開発にあたり重視したのは、配送現場の「こんなツールや機能があったらいいのに」というニーズに寄り添うことです。このような手触り感のあるプロダクトは、運送業界のなかでも珍しいと思います。

法人向けプロダクトも進行中、2022年には配達員10万人への普及を目指す


――その後、2019年に「TODOCUサポーター」はリリースされました。公開後は、どのような反響がありましたか?

高柳:「TODOCUサポーター」は小規模事業社・個人配達員向けのアプリとしてリリースすることになり、フリーミアムをベースに一部機能を有料で提供しています。現在は毎月800名ほどの配達員さんが新規で利用いただいており、現在は1万人以上の配達員さんに使われています。

日本には20万人の配達員さんがいるので、2022年には全体の50%、10万人に使われるサービスを目指しています。ユーザー数が多くなれば、「TODOCUサポーター」が業務効率を改善しているデータが取れる。そのデータがあれば、法人向けのプロダクトの「TODOCUクラウド」を企業に提案しやすくなります。

――法人向けの「TODOCUクラウド」はどのようなプロダクトなのでしょうか?

高柳:基本機能は「TODOCUサポーター」と変わらず、受け取り先の在宅確認や配送先住所の自動入力、配送先住所の一覧表示機能などを備えています。

異なるのは運送会社の基幹システムに組み込めること。中堅から大手の企業は管理システムを持ち、配達員さんの手元にある端末で荷物伝票のバーコードを読み取って、「配送完了しました」「不在でした」とステータスを管理しています。「TODOCUクラウド」はこれらの基幹システムに機能を追加するものです。

まだリリースされて間もないプロダクトなので、導入していただいた企業は数社ですが、今後は個人向けの「TODOCUサポーター」と法人向けの「TODOCUクラウド」を収益の柱にしていこうと考えています。

――シェアの獲得にあたり、どのようなマイルストーンを置いているのでしょうか。

高柳:まずは個人配達員への普及、その後物流会社へ、という流れを考えています。物流業界では、ヤマト運輸様や佐川急便様など大手企業がシェアを7〜8割獲得していますが、現場を動かしている人は個人事業主が7割を占めているんです。そうした配達員さんの人口は約20万人で、物流業界への影響力も強い。まずは全体の50%、やがては全ての配達員さんのシェア獲得を狙っています。

――普及のためにどのような施策を行っていますか?

高柳:まずはクチコミですね。エリアや店舗単位でまとまって仕事をしている配達員さんは、横の繋がりが強い。ひとり登録すると、口コミで周りに広がっていくので、各地域に幅広くアプローチしていきます。

具体的な施策としては、物流系YouTuberとのコラボ動画を進めています。現在も配達員として活動していて、すごい人だと5万人の登録者がいるんです。彼らに「TODOCUサポーター」を使ってもらう配達実況企画などを進めています。

――更なる展望はありますか?

高柳:すでに運営中のサービスですが、テクノロジーとギグエコノミーを活用した「スキマ便」という配送サービスを提供しています。

「スキマ便」は「TODOCUサポーター」が利用されればされるほどに配送効率化データが弊社に蓄積していくので、配達初心者であるギグワーカーでも配達が可能になります。また新型コロナウイルス感染症の影響で、更に配達・宅配の需要は急激に伸び、物流業界の⼈材不⾜は深刻化しています。スキマ便ではリアルとオペレーションを整備し、物流会社・飲食店・小売店などを中心にサポートし、物流業界の人材不足に寄与いきたいと考えています。

求める人材はスピード感を持って改善できるPdM。BizDevや財務担当者も募集中


――今後の普及に向けて、どのような人を求めているのか教えてください。

高柳:最も優先順位が高いのはプロダクトマネージャーです。ユーザーの声を聞き、スピード感を持ってプロダクトをブラッシュアップしていく段階に入るので、開発サイドを率いる人材が必要です。UI/UXの向上も実現していきたいので、技術的な知識をある程度持ったPdMを求めています。

さらに、物流会社さんなどステークホルダーの巻き込みが始まるのでBizDevも必要ですし、ファイナンスもしなければいけないので財務・経理の経験者も募集中です。

――再配達問題という社会課題を扱うため、やりがいは大きそうですね。

高柳:僕自身大きなやりがいを感じていますし、メンバーの熱量も高いと思います。ニーズや課題感がはっきりしていますし、市場規模も大きい。シェアを獲得した暁には、社会課題を解決でき、将来的には自動運転やドローンなど未来の技術に繋ぎ込みもできます。これらの材料から、ポテンシャルはとても大きい事業だと考えています。

207のバリューは「Be Open」、給料もメンバーが決める自律的な組織です

――ここからは話題を変えて、207の組織体制やカルチャーを教えてください。

高柳:2021年5月では業務委託を合わせると20人くらいのチームです。メンバーはエンジニアが10名、CTO・CS・QA・OPM・PdM・BizDev・バックオフィスなど基本的なポジションもそれぞれ1名ずつ配置しています。

カルチャー面ではバリューを決めていまして、考え方が似ているメンバーが多く集まっています。

――それは、どのようなバリューなのでしょうか?

高柳:掲げているのは「Be Open」と言って「メンバー全員が有機的に素早く最善の決断を下せるように、常に信頼しオープンマインドな行動を心掛けること」です。

売り上げやキャッシュなど数字もほぼ全てオープンにしていて、社員全員の給料や異動の理由をはじめ、ベンチャーキャピタルとのやりとりも公開しているんです。だから「高柳さん、KPIの件で投資家から詰められてるな」とかも見えます(笑)。給料も自分で決めるスタイルで、「〇〇をするからいくら欲しい」と提案を聞いていて、共有していないのは業務委託の金額くらいでしょうか。

――ユニークな制度ですね。なぜ情報をオープンにしているのでしょうか。

高柳:207のメンバーはフルリモート・フルフレックスで働いています。この仕組みを保ち、成果を出すためには個々が自律的に動く必要がある。だからこそ、社内情報をオープンにして各自が判断できる状況を作ろうと思いました。

あとは、初期メンバーで行なった合宿で「207ってどんな会社だろう?」とワークショップをしたことも影響していて。ポストイットにまとめたら全員が「オープン」と書いていたので、これをカルチャーにしていこうと。

僕自身、オープンな方が楽しいと思っていて、仕事とプライベートとの垣根はありません。一方で、カルチャーが合わない人は居心地が悪いかもしれません。逆にフィットすればすごく楽しい会社だと思います。気持ちよく仕事をしてもらうために、バリューへの共感はマストでお願いしたいポイントです。


――最後に候補者の方に向けて、207の魅力を教えてください。

高柳:まだ小さい会社なので、組織づくりに関わりたい方はぜひお話を聞きに来てください! プロダクトは「0→1フェーズ」や「1→10フェーズ」など様々ですし、制度は構築中です。自ら組織を整備して拡大できる、貴重なフェーズを経験できると思います。

――ちなみに、物流業界の知見がなくても大丈夫でしょうか?

高柳:大丈夫です。とにかくバリューに共感できる人、事業にポテンシャルを感じてくれた人。そんな方に会ってみたい。フルコミットをはじめ、月1回や週1回の関わりも歓迎ですし、働く場所や時間も自由です。もちろん、年齢・性別・国籍・人種・障がい・LGBT・婚姻状況も全く関係ありません。

207は「TODOCUサポーター」や「TODOCUクラウド」をインフラ的なサービスに成長させていきたいので、面白がってもらえたら一緒にやりましょう。皆さんの応募をお待ちしています!

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