金沢大学医学部卒(医師)、金沢大学大学院医学系外科学卒(医学博士)、ドイツErlangen-Nürnberg大学眼科留学、日本大学武蔵小杉病院、防衛医科大学病院、埼玉医大病院を経て、現在は南青山アイクリニック、慶應義塾大学病院(非常勤講師)、東京歯科大学市川総合病院(非常勤講師)、横浜市立大学医学部(客員准教授)、東海大学医学部(客員准教授)などを兼任し、眼科診療・研究・後進の教育に従事。グロービス経営大学院卒(経営学修士)。
2025年に一般社団法人円錐角膜の会を立ち上げ、円錐角膜の治療費支援を募るクラウドファンディングも行う。
経営学の知見と臨床研究の視点―医療AIで交わる異なる専門性
酒井先生からご推薦いただいたのが、MAPI参画のきっかけでした。
私は医師として活動する傍ら、グロービス経営大学院でMBAを取得していたのですが、そのバックグラウンドを評価していただけたようです。
また、設立当初のMAPIは男性メンバーが中心だったということもあり、女性の視点を取り入れることで、より多角的なアプローチができるのではないかという期待もあったと聞いています。
もちろん、MAPIが取り組む医療AIや画像診断という領域にも強い関心がありました。
私自身、角膜疾患の臨床研究をメインとしているのですが、角膜疾患の診断では画像をもとに判断することが非常に多いんです。
実は以前から、AIを活用してスマートフォンなどで簡単に診断できるシステムを作れないかと考えていて、そういった取り組みにも挑戦しようとしたことも。
そのため、MAPIでの活動は私の研究テーマとも自然に結びつく、とても魅力的な機会でした。
幅広い経験を活かし、次世代医療AI研究の基盤づくりに貢献
私はこれまで大学病院から地域の中核病院まで、多様な医療機関で臨床研究に取り組んできました。
そのため申請者として、それぞれ特色の異なる様々な倫理委員会の審査を経験してきたんです。
これだけ複数の場所で多様な研究申請のプロセスを経験してきたという人材は、医療業界でもそれほど多くないのではないでしょうか。
現在のMAPIでの私の役割は、まだ準備段階の部分が多いのが実情ですが、これまでの経験を最大限活かして、今後のMAPIの研究プロジェクトがより円滑に、そして効率的に進められるよう積極的に協力していきたいと思っています。
現在のMAPIでは胸部レントゲンを中心とした画像診断の領域での研究が多く展開されているので、まずはその分野を確実な起点として業界をリードする存在として大きく飛躍してほしいと願っています。
そしてゆくゆくは、私の専門分野である眼科での取り組みにも研究領域が発展していく可能性があると考えているので、その際にはより深い臨床的な知見と実践的な側面でも貢献できることを今から楽しみにしています。
多様な専門性が交わる刺激的な環境と、フラットな組織文化の魅力
MAPIの最も大きな強みは、医師同士だけでなく、エンジニアや薬事担当など、本当に様々な領域の専門家が一つのチームとして取り組んでいることだと思います。
これこそが組織としての強みであり、最も面白いところなのではないでしょうか。
井手先生が中心となって運営されているMAPI CONNECTに参加させていただくと、毎回新鮮な刺激を受けます。
普段、医師として働いていると、他の業界の人たちが何を考え、どのような視点で物事を捉えているのかがなかなか見えてこないものです。
それどころか、規模の大きな医療機関であれば、同じ病院内でも別の科の先生と深く話す機会すら少なくなりがちです。
だからこそ、MAPIのような場で異なる専門分野の方々と率直に意見交換できる機会は本当に貴重で、毎回多くの気づきを得ています。
またMAPIの魅力的なところは、礼儀正しい環境でありながら忖度や必要以上の上下関係は一切ないということです。
さらに印象的なのは、新しい挑戦に対してメンバー全員が前向きで、それを個人の努力に委ねるのではなく、チーム全体で支えていこうという風潮が根付いていることです。「こういう結果を出してほしい」という目標に対して、自分なりのアプローチやプロセスを主体的に考えられる人が多いのも特徴的で、そういう自由で創造的な雰囲気がとても気に入っています。
多角的なビジョンで医療業界に挑む
医療業界には、依然として生産性の低さが課題として残されている印象があるかもしれません。
その解決策の一つとして、私はAIの活用が非常に有効だと考えています。
たとえば、AIによる診断支援が実現すれば、病変の検出率は着実に向上し、人為的なミスの防止にもつながるでしょう。
その結果、患者も医療従事者も、より安心して質の高い医療を受けたり提供したりできるようになります。
個人的な経験として、従来の臨床業務を続けることに対して、以前から限界を感じていました。
というのも、診療にはどうしても自分の目や手といった身体的な能力に頼る部分が大きく、将来的にその機能が衰える可能性を想像すると、不安を抱かざるを得ませんでした。医師として長くやりがいを持って働き続けるためには、そして本当に支援を必要としている人たちに力を届けるためには、働き方そのものを見直し、より持続可能な形へとシフトしていくことが重要だと感じています。
その意味でも、新しい技術の発展に関わり、自らもその一端を担っていく挑戦を続けることは欠かせないと考えています。
また、もう一つ強く感じているのが、女性医師の地位や働く環境には、まだ改善の余地が多く残されているという現実です。こうした課題の解消に向けた取り組みにも、今後積極的に関わっていきたいと考えています。