小浜の海と、未来を育てる。——地域おこし協力隊・坂田さんが挑むカキ養殖の現場から
福井県の南西部に位置し、古くから朝廷や天皇に海の幸や塩を献上する「御食国(みけつくに)」として栄えてきた、小浜市。後に京の都に魚介類を運ぶ「鯖街道」の出発点となり、各地の食が交流することで「へしこ」や「なれずし」に代表されるような、質の高い郷土の食が形成されてきた歴史があります。
そんな福井県小浜市では、これまで紡いできた歴史や文化を未来に繋いでいくため、積極的に地域おこし協力隊の受け入れを行っています。
地域おこし協力隊の活動をもっと多くの方に知っていただくべく、今回はカキの養殖を行う坂田 凱斗(さかた かいと)さんにお話を聞きました!「小浜市の地域おこし協力隊って、実際どんな活動をしているの?」と気になった方は、ぜひ最後までご覧ください。
幼い頃からの夢を追い、小浜の海へ
—— まずは、協力隊に応募されたきっかけを教えてください。
幼いころから「漁師になること」が夢でした。高校在学中に大阪で開催された漁業就業者フェアで、小浜市の地域おこし協力隊の取り組みを知り、ただ漁業に飛び込むよりも、地域の方々と関わりながら漁業を学べるこの環境の方が、しっかりと成長できると感じました。
祖父母の家がある小豆島で自然に触れて育ったこともあり、「自然豊かな場所で働きたい」という想いも背中を押してくれました。
—— 実際に小浜で暮らしてみて、地域の印象は?
福井県小浜市は、海と山に囲まれた自然豊かなまちです。地域の方々もとても温かく、のびのびと過ごせる環境です。
特に印象的なのは、海の幸の豊かさ。山からの湧水が川を伝って海に流れ込み、栄養やミネラルが小浜湾へと注がれます。そのおかげで、牡蠣がぐんぐん育ち、たった1年で身がぎっしり詰まった牡蠣が育つんです。これは小浜ならではの強みだと思います。
地域と一緒に、養殖の未来をつくる
—— 現在の主な活動内容について教えてください。
地元の養殖業者さんの筏を一部お借りして、「シングルシード養殖」という方法でカキを育てています。
これは稚貝を1粒ずつカゴに入れて育てる手法で、1年以内に販売できるサイズまで成長させます。
カキの表面に付着するフジツボなどを掃除して、プランクトンをきちんと取り込めるようにする作業も大切なんです。自然の変化は年ごとに違って、海と向き合う面白さを感じています。
—— 出荷や販売にも関わっていると伺いました。
はい。現在は、小浜市漁協や市役所と連携して、牡蠣の養殖とブランド化に取り組んでいます。
従来の冬季出荷の「若狭牡蠣」に加え、小浜湾で採取した天然の種苗を育てた「純粋小浜湾産マガキ」や、夏にも食べられる「三倍体マガキ」の養殖に挑戦中です。
養殖した牡蠣は、生食できるように検査と殺菌を行ったうえで、市内飲食店や福井中央魚市への出荷も行っています。小浜の牡蠣を“年中楽しめる”ブランドに育てるために、関係機関と連携しながら進めています。試験販売を通して「また扱いたい」と言っていただけることもあり、やりがいを感じます!
—— 活動を通して、ご自身が成長したと感じることはありますか?
マガキの産卵調査を大学の先生と一緒に行ったり、人工種苗の生産を体験したりと、座学では得られない知識や技術が身につきました。
作業の手際もずいぶん良くなって、1年前と比べて自分でも驚くくらい成長していると感じています。
—— 今後のビジョンについて聞かせてください。
協力隊で学んだことを活かして、ゆくゆくは小浜でカキ養殖の法人を立ち上げたいと思っています。
安定した収入が得られる漁業の仕組みをつくり、若い人が漁業にチャレンジしやすい環境をつくることが目標です。
—— 最後に、協力隊への参加を考えている方へメッセージをお願いします。
正直、人付き合いが得意な方ではありませんでした。それでも、地域の方々との交流を大切にしながら活動を続けてきました。
協力隊の活動は、地域との関係づくりがすべての基盤になると思います。自分のペースで少しずつでも大丈夫。地域の中に飛び込むことで、自分のやりたいことに近づけるはずです。
小浜市では現在、農業・水産業・観光事業の3分野で、地域おこし協力隊を募集中です。
2泊3日〜7泊8日で希望する分野の事業者を回ることができる「お試し地域おこし協力隊」や、市内の担い手の元で1ヶ月間事業を体験いただくインターン制度もあります。
ちょっと小浜市が気になる、地域おこし協力隊の活動をもっと知りたいという方は、お気軽にエントリーください!