YTT LINKS ICMグループの山内です。
普段は広報やブランディングマネージャーとして、社内外に向けて言葉を編む仕事をしています。
今日書こうと思っているのは、約2か月前に社内で立ち上がった『ありがとうチャット』という小さな仕組みの話です。
社内コミュニケーションの活性化、と聞くと、シャッフルランチや表彰制度、エンゲージメント調査……といった、しっかり設計された施策をイメージする方が多いかもしれません。私自身、そういうイメージを持っていました。
けれど、私たちがやったのは、もっとシンプルで、もっと簡単なことでした。Googleチャットの新しいスペースをひとつ作り、Googleフォームと、ちょっとしたGASスクリプトと、9つのカスタム絵文字を作っただけです。
それでも、この2か月で社内の空気はちょっとだけ変わった気がしています。何が起きたのか、なぜ作ったのか、そしてどんな課題が残っているのか。広報という、一歩引いた場所から見えた景色を書いてみようと思います。
目次
全社チャットで「投稿ボタン」を押せない、私たちの話
Googleフォームと、GASと、9つのカスタム絵文字でできた小さな仕組み
定例会で発表する前に、もう誰かが触っていた
「気付けない場所」にいる仲間と、まだ届かないありがとう
飽きてきた頃に、JPYCがチャリンと鳴った
最後に…
全社チャットで「投稿ボタン」を押せない、私たちの話
きっかけは、ブランディングチームでの、ちょっとした振り返りでした。
社内のコミュニケーションって、いま、実際どうなんだろう。そんな話をしていたときに、誰からともなく出てきたのが、全社員向けチャットスペースの使いづらさでした。
公式のお知らせと、飲み会の案内と、雑談と、業務連絡が、ぜんぶ同じ場所に並んでいる。しかも、発言している人は、だいたい毎度同じ。
正直にお話しすると、少し前まで私自身も「気軽に投稿できる場ではないな」と感じていました。広報という立場上、全社員に向けて何かをお知らせすることがあるのですが、投稿するときはいつも少しだけ身構えていました。
誤字脱字はないか。表現はおかしくないか。みんなにちゃんと伝わるか。反応はどうだろうか。
そして、「これ、みんなに共有したいな」と思ったことがあっても、「いや、でも……これをこのチャットで言ってもいいんだっけ?」とためらって、結局そっとチャットスペースを閉じることが、何度もありました。
おそらく、これは私だけの話ではないのだと思います。発信のハードルが高い場所では、声を上げられるのはいつも同じ人になってしまう。「言うほどのことじゃないかもしれない」が、いつの間にか「言わなくてもいいや」に変わっていく。そして、発言しないことが当たり前になっていく。そんな気がしていました。
このハードルを、どうやって下げられるだろう。それがブランディングチームでの問いの出発点でした。
Googleフォームと、GASと、9つのカスタム絵文字でできた小さな仕組み
話し合いを進めていくうちに、もうひとつ大事な視点が見えてきました。
私たちLINKSメンバーの多くはSES(システムエンジニアリングサービス)という業態で働いています。全社員がいつも本社オフィスにいるわけではなく、それぞれが客先で日々の業務にあたっています。
ということは、誰かが社内で素敵なことをしてくれたとしても、その場に居合わせていない大多数の社員は、そもそも気付くことすらできない。当事者同士の「ありがとう」だけで、その出来事は静かに完結してしまうのです。
これって、なんだかもったいないですよね。
前身の会社では、「AさんがBさんに『今日はこんなことをしてくれて助かった!』と感謝を伝え、それを他の社員にもシェアできる」Webサービスを使っていたことがありました。サービス名は忘れてしまったのですが、ありがとうを言い合える仕組みがあったあの空気感は、ふと思い出すと悪くないものでした。
そんな話を重ねていき、最終的に作ったのは、本当にシンプルな4つの部品です。
- 専用のGoogleチャットスペース
- 「ありがとうを贈る」Googleフォーム
- ありがとうが届くと、チャットにWebhookで通知を飛ばすGASスクリプト
- LINKS SHIP9箇条それぞれを表現したカスタム絵文字
LINKS SHIPというのは、YTT LINKSが掲げている9つのVALUEのことです。「こういう姿勢で働く仲間でありたいね」という指針のようなもの、と捉えていただけると近いかもしれません。
特別なシステムでもなく、既存の他社サービスを契約したわけでもなく、専用アプリを開発したわけでもない。Googleが提供しているツールの組み合わせと、ちょっとしたコードと、カスタム絵文字。それだけです。
今思うと、追加でお金もかからないですし、パッと試せる環境がもうあったので、整える側も使う側もこれくらいの気軽さがちょうどよかったのだと思います。
定例会で発表する前に、もう誰かが触っていた
ローンチは今年3月の定例会で発表する予定でした。
ところが、定例会で正式にお披露目するよりも前に、社内のあちこちで「あれ、なんか新しいスペースができてる!」と気付いた人たちが、もう先行して触り始めてくれていたのです。
その様子を見たときの、「早いなあ」と少しだけ笑ってしまった感覚を、今でも覚えています。用意した側が公式に発表するよりも、使う側の方が早かった。これは、なんだかいい兆しのような気がしました。
それから約2か月。チャットスペースには、いろいろな「ありがとう」が届くようになりました。
当事者同士で直接「ありがとう」を伝えるだけでなく、それをAさんが他の人にもシェアし、それを見た周囲が「Bさんのその行動は、LINKS SHIPのどれに当てはまるかな?」と考えながら、カスタム絵文字でリアクションしていく。
これまでだったら、VALUEなんて言葉は、入社時の研修や年度初めの方針説明や定例会でたまに目にするくらいで、日常業務のなかで意識する機会はあまり多くありませんでした。それが、ありがとうを贈り合うたびに、9つのVALUEのどれかを思い浮かべる時間が、誰かの中で生まれている。
そのあたりから、社内でカスタム絵文字を自作する人も増えてきた気がします。ありがとうチャット以外のスペースでも、絵文字でリアクションする頻度が上がってきているように感じます。コミュニケーション全体に対して、少しずつポジティブになってきてくれている——そんな印象を持っています。
ちなみに、このフォームは匿名でも送れる仕様にしました。恥ずかしがり屋の人や、面と向かっては言いにくい相手にも届けられるように。個人から個人へ、個人から複数名へ、個人から全社員へ。宛先も自由に選べます。
これまでだったら、きっと心の中にそっとしまっておいたであろう、いろんなありがとうが、この2か月で社内を飛び交ったのではないかと思います。
「気付けない場所」にいる仲間と、まだ届かないありがとう
もちろん、いいことばかりではありません。
正直にお話しすると、課題に感じていることもあります。一番大きいのは、社外勤務メンバーの使用率が、社内勤務メンバーに比べてどうしても下がってしまっていることです。
ありがとうチャットは、「LINKSメンバーが見つけた小さなありがとうをシェアする場所」「みんながもっと気軽にチャットでやり取りできるスペース」として作成しました。だからこそ、業務中に他のメンバーと接する機会が少ない人にとっては、そもそも「この気持ち、シェアしたい!」という瞬間自体が生まれにくいのかもしれません。
そういった意味でも、まだまだ完璧な仕組みではないと思います。むしろ、現時点では社内勤務メンバー寄りの仕組みに偏ってしまっていることを、私たち自身が一番自覚しています。
社外で頑張ってくれているメンバーにも、なにかしらの形で「ありがとう」が届く工夫を取り入れたい。そう思いながら、まだ正解は見つけられていません。これは、これから少しずつ手探りで考えていきたい宿題です。
飽きてきた頃に、JPYCがチャリンと鳴った
ローンチから2か月が経った頃。少しずつありがとうチャットの存在にも慣れてきて、「ちょっと飽きてきたかな?」という雰囲気が、私の中でも、社内全体でも、なんとなく漂い始めていました。
そんなタイミングで追加されたのが、ちょっと遊び心のある新機能です。誰かがありがとうを贈ると、受け取った人に社内デモ用のJPYCがチャリンと付与される——平たく言うと、社内ポイントやチップに似たような仕組みです。
仕組みの詳細は、別のストーリー記事で改めて書こうと思っていますが、この機能は、ブロックチェーンチーム(ハッカソンチーム)の吉田さんが構想と設計を、ピョーさんがプログラムの実装を、本当に頑張って作ってくれました。私はGASをちょろっといじっただけです。
正直なところ、これがどう転ぶかは、まだ分かりません。一時的な盛り上がりで終わるのかもしれないし、新しい使い方を誰かが発明してくれるのかもしれない。
ただ、こうやって「ちょっと飽きてきたかも」というタイミングで、誰かが手を動かして遊び心を足してくれること自体が、私たちらしいなと感じています。
社内コミュニケーションの仕組みを、上から制度として降ろすのではなく、LINKSメンバーが「なんか面白そう」「こんなのあったらよさそう」と、自分たちの手で少しずつ作り、育てていく。完成された施策ではなく、試行錯誤しながら「やってみよう」を楽しめる。
そういう温度感のある営みをこれからも大切にしていきたいなと感じます。
最後に…
社内のコミュニケーションを変える、なんて言うと少し大袈裟ですが、私たちがやったのは、全社チャットの隣に、もうひとつ柔らかいやりとりの場をつくっただけです。
それでも、誰かの「ありがとう」がそこに住むようになって、これまでは見えなかった日々の小さな「素敵な行い」が、少しずつ可視化されるようになってきました。
完成された仕組みではありません。社外勤務メンバーへの届け方も、まだ宿題のままです。だからこそ、皆の反応や要望を受け取りながら、私たちらしいコミュニケーションの形を、これからも少しずつ探していきたいと思っています。