東急株式会社 URBAN HACKS プロジェクト採用担当です。
今回のインタビューは、URBAN HACKSでVPoEを務める宮澤さんの登場です。
同プロジェクトは、約100年の歴史を持つ東急がDXの加速を目指し、2021年7月に発足。同プロジェクトは宮澤さんをプロジェクトオーナーとして迎え、開発機能の内製化を推進し、グループ横断でのサービス開発や体験設計を実行しながら、東急グループのアセットを活かしたよりよい暮らしの実現を目指しています。
この壮大なテーマについてプロジェクトの企画から開発組織づくり、自ら開発の指揮を担う宮澤さんにインタビューを実施しました。ぜひご一読ください。
【今回のストーリー登場者】
東急株式会社 デジタルプラットフォーム
VPoE 宮澤 秀右 (みやざわ しゅうすけ)
ーー 最初に、宮澤さんのこれまでのご経歴を教えていただけますか?
1996年にソニー傘下の会社に新卒入社し、決済システムや電子マネーの企画・開発などに携わりました。約8年ほどサービスづくりの経験を積んだ後、当時のソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズでモバイル事業の商品企画に取り組むことになりました。
当時はガラケーの時代、さまざまなWebサービスのプロジェクトマネジメントに携わりアプリ開発に携わった後、スウェーデンのルンドに約5年間駐在しグローバル市場向けのIoTデバイスや、スマートフォンアクセサリーの商品企画に従事、海外で事業収益を生み出すも、親会社でモバイル事業が縮小したため帰国、日産自動車へ転職しました。
日産自動車では、これまでのIoTデバイス開発で培った経験を活かし、コネクテッドカーや自動運転技術の戦略立案やUXデザインを担当。自動車メーカーでできることは一通りやり切った手応えを得ました。その後、より幅広い視野で生活者のカスタマージャーニーを考えていくような仕事に挑戦したいと思うようになり、100年に亘って交通インフラとまちづくり、生活サービスを磨き続け、リアルな顧客接点が豊富な東急グループであれば、私のこれまでの経験の集大成として、新しいチャレンジができると考え東急に入社しました。
ーー 宮澤さんが東急に参画した際、DXプロジェクトは既に立ち上がっていましたか?
いいえ、まだ具体的なプランが無かったタイミングでご縁をいただき、2021年4月に入社しました。当時、東急ではデジタル社会に向けてデジタルを活用していかなければいけないという大命題がありつつも、中期計画を具体的にどういう形で進めていくかという具体プランは検討中であったため、私が東急に入社後約1ヶ月くらいで基本戦略を立案し5月に社長承認を得ました。
東急は2022年に創業100年を迎えます。創業以来、創り上げてきた膨大な顧客接点はありますが、それらをデジタルシフトの時代に有効活用しきれていないという課題を抱えています。
私が立案した基本戦略の中で、まず第一弾として着手したのが、新組織「デジタルプラットフォーム準備プロジェクト(URBAN HACKS)」の立ち上げとオープニングメンバーの採用です。プロジェクト名である URBAN HACKS は、都市の意味を持つアーバンと、ソフトウェアやシステムに関する深い知識を駆使してビジネスの課題を解決するという意味を持つハックから命名しました。東急グループの持つあらゆる資産を活かし、街をハックし、よりよい暮らしを実現することを目指しています。
ーー URBAN HACKS プロジェクトについて教えてください
はい。URBAN HACKSプロジェクトは、大きく3つのフェーズでできています。交通、不動産、商業施設、クレジットカード、ホテル、レジャー・サービスなど、これまで“点”で存在していた顧客接点を最大化させるのが一つの目のフェーズです。具体的には、各ビジネスドメインや事業会社ごとに“点”で提供しているデジタルとリアルのサービスを融合し、「ユーザー視点」のサービスに変えていきます。
二つ目のフェーズは、 “線”の創造です。前述の“点”で見えてきた新機能やサービス連携のアイディアを活かし、デジタル領域のリ・ブランディングや各サービス間の導線強化を実現し、東急グループのシナジーを活かした新しい顧客体験を作り上げていきたいと考えています。DXにおいて重要なのは、バリュージャーニー型でお客様に寄り添うことであり、その結果、自ずと横のビジネスがつながっていくものだと考えています。
そして三つ目のフェーズが、“面”への発展です。デジタルインフラの統合やグループ内相互利用を完成させ、デジタルを介してリアルのサービスや体験にもつなげていきたい。目的ではないものの、将来的にはスーパーアプリのような仕組みとなる可能性も考えられます。東急のお客様が不自由なく生活をすることができる世界観をイメージし、本プロジェクトを出発点にさらなるステップへと進化させていくプロジェクトです。
ーー URBAN HACKS プロジェクトを成功させるため、どのような組織づくりを行っていますか?
今、世の中でDXを進めている企業が多いと思いますが、DXが成功している企業は全体の10%ほどであり、多くの企業がDXが成功していないと自己評価しています。私が考えるDXの難しいところは、企業ごと、事業ごとに採るべき手法が異なるという点だと思います。
経済産業省の「DXレポート」も参考にはなりますが、どの企業もここで示される施策に沿ってDXを推進すれば成功するのかと言えばそうとは限らないと思います。DXの道筋がまだ世の中に存在しないと言える段階で、それぞれ自社に合ったデジタルトランスフォーメーションを実行していかなければなりません。ここがDX推進の難しさであり、これまでのやり方では通じない、変化やチャレンジが必要であると私は強く思っています。
東急は歴史ある大企業にありがちな「変化を嫌う体質」がなく、私が「デジタル人材を積極採用していくためには、デジタル業界標準の働き方をできるようにしなければダメです」と提言しようとしていた環境が既に存在していました。
DXプロジェクトの成功には、ブランディングが非常に重要であると考え、東急らしさや大企業感を無くすことが成功への近道だと私は思いました。従来の東急のコーポレートイメージでは、絶対に「私たちに必要なデジタル人材」は集まらないと予想したので、東急のバックボーンを匂わせながらも、本当にベンチャーやスタートアップと同じ土俵で戦うんだというところを貫いたので幸先の良いスタートを切れたと感じています。
今回の戦略はどうやって大企業感を払拭しながらも、スタートアップ企業の機動性を持ちつつ東急としてのリソースを活かし、ゼロから新しいことやっていくんだ、ということを伝えきるかに尽きると思いました。なので、プロジェクトのLPもデザイン性を重視、あとは東急の強みであるリアルの現場で採用広告を露出させたりと意図的に仕掛けています。
ーー 大企業の看板を降ろしスタートアップさながらな動きでプロジェクトを推進されているのですね
組織というのはポジション名で動くのではなく「人」で動くものです。
世の中の、特に大企業DXでデジタル組織や開発組織を立ち上げて失敗する例というのはここなんですよね。ポジションの枠を埋めるような採用活動を行い、ポジションに相応しい人材が採用決定したら、次にステレオタイプの仕事を任せればDXの成果が出ると考えているケースは少なくありません。
そのような採用活動や組織づくりでDXプロジェクトが上手くいくわけがないと私は思いますし、大企業に入社して、型にはまりきった仕事を一生懸命やろうする人材を私たちは集めているわけではありません。
自ら考えて、提案して、体を動かしてお客さんと対話し、事業やサービスを作っていくというのは当たり前ですから、組織の型や進め方の型なんてないと思います。採用や組織づくりに関しても同じことが言えます。
東急のDXでは「顧客体験価値の最大化」が目標となりますので、顧客視点の設計とスピーディーな商品化を実現していくためにも、徹底してこだわっていきたいのが、事業戦略からプロダクトまでの一貫した「内製開発」。カスタマージャーニーを構築し、デザイン思考でWebやアプリのサービス設計をしていくことから始め、設計・実装までをチームで完成度高く全て内製で実現していきたいと考えています。そのためにも自ら仕事を創り出していける人材が必要不可欠だと思います。
ーー URBAN HACKS プロジェクトに携わる面白さについて、宮澤さんのお言葉でいただけますか?
冒頭でも述べた通り、東急は2022年に創業100周年を迎える歴史ある企業ではありますが、同時にグループ企業の多くが新規事業を子会社化してきた新規事業創出カンパニーでもあります。部署や年齢・役職に関わらず新規事業を提案でき、発案者自らがプロジェクトリーダーとして携わることができる「社内起業家育成制度」もあり、ボトムアップの文化が根付いていると感じています。
このような環境下で東急が持つアセットを活かし、リアルとデジタルをどのように組み合わせてお客様に価値を提供していくのか。事業領域を横断した新しいデジタルプラットフォームを、お客様にどのように活用して頂くのか。ここに新しい価値の源泉があり、これらをソフトウェアエンジニアリングと掛け合わせてサービス化することが使命であると思います。
よって、自らコードを書いたり、デザインを描いたり、チームメンバー全員が当事者として考え、手を動かし、お客様に価値あるサービスを生み出していく、そんなチームを育てたいと考えています。お客様目線で妥協を許さない厳しさはありますが、未来のまちづくりにワクワクし挑戦したい方とぜひ一緒に働きたいですね。