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高齢者と子どもが触れ合うという「いい時間」をつくる。


「高齢者住宅とデイサービスに、保育の要素を入れると面白いんじゃないか」
そんな突飛かつ、目からウロコの発想から、物語は始まりました。

当時のことを話してくれたのは、建築計画および設計デザインを担うシマダアセットパーナーズの石黒幹浩さん。「高齢者にとっての安心と、子どもと交流する楽しみ。このふたつが複合しているのは、これまでありませんでした」

この強く明快なコンセプトを体現するため、石黒さんが立てたプラン。それは、敷地の真ん中に森を作り、それを囲むように高齢者向け住宅と保育園、そしてクリニックを設えた、コの字型の建物でした。

「森に面した部分はできるだけ壁を作らず、透明のガラスにしました。距離はあるけれど、おたがいの気配は感じられるように」

また自然素材で覆われた外観の壁面が、外と内をシームレスにつないでいる。「施設のある三鷹市は、ジャンクションの工事によって、もともとあった農地がなくなりつつある状態で。そういう意味でも、森があることで緑がどんどん成長する、近隣にとってもやさしい施設になるんじゃないかと思ったんです」


「さすがSAPだなと思いました」

と笑顔で言うのは、当時ガーデンテラスの施設開発を担当していた二宮慎介さん。

「入居者にとって、外に出る時間と、外の人に触れ合う時間は、我々よりも圧倒的に少ないんです」

そうしたつきまとう制約を補うように、森が眼前に迫る、あたかも外にいるように感じる吹き抜けのロビーは、入居者にとってまさに癒し。「あとはトーンを落とした内装の色使いや、背もたれのないソファなどのインテリアは『ホテルのようだ。こんなにデザインにこだわった施設は見たことがない』というお声は、かなりありましたね」

また専有部の居住スペースにおいては「手すりなどの安全性はもちろん、どうしても削られてしまうのが収納なんですね。しかしここでは、十分に確保できているのも印象的でした」慣れ親しんだ日用品や、大切にしている思い出の品。中には仏壇(!)を持ち込む人もいたようです。


そうした「共用部はホテルのような、専有部は自宅のような」ハード面だけでなく、ソフト面の充実も忘れてはいけません。そう、保育園との融合です。

「入居者の方々が楽しく過ごしていただくために、我々もいろいろと考えるのですが、絶対的にできないのが、子どもたちとの触れ合いなんです」そう、「ガーデンテラス仙川」では、施設をまたいだレクレーション企画の一環として「ひばりの保育 仙川のいえ」の子どもたちと触れ合う時間を設けています。(2020年より中断)

「子どもの幼児教育において、環境はすごく大事です。特にいろんな大人が関わってあげることなので、この連携はすごくいいことだなと思いました」

そこに「ひばりの保育 仙川のいえ」の立ち上げに携わった東里香絵さんも、同意します。

「もちろん子どものリズムや生活サイクルがあるので、できること、できないことがあります。またお年寄りと一緒にものを作るのですが、小さいものを材料につかうと誤飲につながるので、あらかじめ材料の中から排除したり。入念に配慮した上で行なっています」

ただ介護と保育のプロが連携することで、生まれるシナジーもあるといいます。「予測する能力と、危険の感度。たとえば何かあったときにサッと手を伸ばせるか。保育士さんも介護士さんも、同じようなレーダーがあると思うので、それはやる意味があるなと思います」


さらに「やってよかった!」と思えるのが、高齢者たちの満たされぶり。
前出の二宮さんは言います。

「ふだんは『介護される』側の皆さんが、子どもたちが来ることで『何かしてあげる』側になれる。入居者の方々も、かつて子どもを育てられた方が多いので、どこか懐かしさもあり、また今までにない感覚もあり。これも、相乗効果かなと思います」

何より触れ合うことで「みんなの笑顔の質が違う」と言う二宮さん。
「いつもは介護士に対する、ありがとうの笑顔。それとも違って、素直にかわいい!楽しい!という笑顔なんです」

いい時間を過ごしていただいたと実感できる、その笑顔こそが、スタッフたちの笑顔につながる。シマダグループ らしいひとつの思いが、成し遂げられた瞬間でした。

※シマダグループではこちらの「介護×保育」の他に、石垣島で「ホテル×保育」の施設運営も行っています。

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