2022年8月16日(火)から3日間、宮崎県新富町で町内中学生や県内高校生を対象に、町の今と未来、また自分自身の未来を見つめるための学びと体験のプログラム「しんとみ学び塾」を開催しました。2022年は3月に続き2回目の開催。総勢41名の中高生が新富町で集い、そこでの出会いや体験から生まれたものとは?
(新富町教育委員会・一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 共催)
令和4年度地方創生交付金「学び舎再生事業」活用事業
私たちのまちを改めて考えてみよう
夏休みも終わりに近づき、中高生は自らの未来や進路について考える機会も増えてくる頃。学校や家庭、友達など身近な人たちと考えるだけでなく、町内外ひいては世界で活躍する様々なゲストとともに、みんなで一緒に考えてみようというのが今回のプログラムです。
宮崎県新富町は令和4年度からの第6次新富町長期総合計画において、「子や孫が帰ってきたくなるまちづくり」を目指しています。そこで設定した今回のテーマがこちら。
「わたしたち“も”創る、帰ってきたくなるまちづくり」
1日目:町“を”知る、町“で”知る
まずは、いろんな人から話を聞いてみる
初日は、まちについて話を聞き、まちに出て知る・感じるワークショップを開催しました。午前中に登壇してくれたのは次の方々。
■川畑周平さん(宮崎日日新聞社新富支局長)
■岡田真由美さん(こゆ財団メンバー/移住者、高知県出身)
■中山雄太さん(新富町地域おこし協力隊/移住者、熊本県出身)
■二川智南美さん(新富町地域おこし協力隊/群馬県出身)
今年4月から新富支局に赴任となった川畑さんは、前任者たちが築いた地域とのネットワークの中で仕事をされています。記事を作成する際は物事を多面的にみるために事前にいろんな視点から調べ、ネット検索するだけじゃなく「こう思っているんじゃないか?」と想定できる人に話を聞くなど、たくさんの情報や意見を集めた上で取捨選択することが必要なのだとか。
新富町地域おこし協力隊や地域商社こゆ財団メンバーも登壇。3人とも県外からの移住者で、新富町の良さや離れて知るふるさとの魅力など、ほかの町を知っているからこその視点で語ってくれました。
実際に「調べる」ことを授業で実践している県立妻高等学校情報ビジネスフロンティア科、県立高鍋高等学校探究科の生徒さんも登場。現在進行形でまとめつつある内容を紹介しながら、「どうしてそのことに興味を持ったのか?」といった質問に答えていました。
午後は3班に分かれ、町内3つのエリアへ出かけました。実際に足を運んで活動される人々に話を聞くことで、地域のなかに一歩踏み込んだ気づきや学びがありました。
▲地域商社こゆ財団の設立背景や活動について、話を聞きました。
▲国指定天然記念物である湯之宮座論梅は、町民憩いの場であり大切な地域資源。
2日目:外から町を見つめる、未来を見つめる
大人や先輩から、考えるためのいろんな視点・手法を学ぶ
2日目は、新富町から世界とつながり、未来を読み解く時間を持ちました。
■宮崎国際大学副学長ロイドウォーカー氏の講話
■海外日本人学校の先生との意見交換(オンライン)
また午後は、近隣高校のみなさんがそれぞれ研究・探究している内容の発表がありました。妻高校の生徒さんによるドローンのプログラミング操縦実演の時間では、生徒たちもグループごとにプログラミング初挑戦! ドローンを動かすためにトライ&エラーを繰り返し、成功すると拍手が湧き上がります。一気に会場の熱が高まった時間でした。
大事なのは問い続けること、自分の目で見て判断すること
この日は、小嶋町長による講話もありました。
「みなさんたちの意見を聞きたいです。どんなまちだったら帰ってきたいですか?」
現在2期目を務める、「子や孫が帰ってきたくなるまちづくり」を掲げる新富町のトップ。町のいま、町長としての仕事について話す中で、どんな考え方や判断基準で町政をおこなっているのかを話してくださいました。
いろんな人の多様な意見があるなかで、決まっている財源の使い道を判断をする際に大事にしているのは、「短期的な利益より長期的な利益をとる」「大きな声より小さな声をしっかり拾う」ことなのだそうです。いろんな例え話をしながら、子どもたちがイメージしやすくわかりやすい内容に、引き込まれるように話を聞く子どもたち。
▲新富町の小嶋町長
町長「でも、未来の人の声は拾えません。だから、問題意識を持って人口や職業などいろんなデータを見ながら予測し、そこに合わせた政策を作り、ゆるやかに進めていくのです」
正解が見えないなかつねに問い続け、自分の目で見て判断することの大切さを伝えながら、
「そのためには皆さんの頃からの勉強が大事なんですよ」との声かけも随所にありました。
最後は、会場からの質問に町長が一つひとつ答えていきます。
「新富町は多様性を認める人たちが増えてきていて、これは町の魅力でありこれからの時代にとても大切なこと。若い人から高齢者、障がいがある方まですべての人が、ここに住んでよかったと思える町にしていきたいですね」
生徒たちにとって、まちづくりが自分ごとに感じられた時間だったのではないでしょうか。
▲質問や感想がどんどん集まりました
3日目:未来を創り語る
積み木ワークショップで未来の新富が誕生
学び塾のまとめとなる最終日。各自が「こんなまちにしたい!」を書き出し、グループごとに将来のまちを形にしていきます。
▲模造紙に書き出した未来のまちの要素を、話し合いながら形にしていきます
この時間を受け持つ講師は、新富町地域おこし協力隊の甲斐隆児さん。アートで地域活性を目指す活動をしていて、今回は県産杉で作られた大量の「積み木」を準備し、ワークショップで生徒たちのイメージをアウトプットさせます。
▲新富町地域おこし協力隊の甲斐隆児さん
はじめは少し戸惑いながら積み木を手にした生徒たちですが、次第にイメージが溢れ出してきた様子。意見を出し合いながら、試行錯誤しながら、自分たちの希望が詰まった未来の新富町が現れてきました。
「積み木って手元に集中しがちですけど、同時に一歩引いて全体も見なきゃいけない。そんな感覚を感じてほしいと思って」
講師の甲斐さんは、自身も積み木を使って各グループの“未来のまち”をつなぎながら、今回積み木ワークショップを選んだ理由を話してくれました。
1人ひとりが思いを発表。3日間であきらかに何かが変わった!?
最後は各グループの作品について発表した後、他グループの作品も鑑賞。そして、この3日間の感想を1人ずつ全員が挙手して発表しました。
「新富に住んでいないけれど、新富が好きになった」
「新富の魅力をわかりやすく伝えてくれて、また来たくなった」
「フィールドワークや積み木など、体験したからこそ学べることがあった」
「いろんな人の思いによって町はできているんだとわかった」
「外に行ってもこの町に帰ってきたい」
生徒たちが自ら考え、つむいだ言葉の一つひとつは明らかな成長の証。見守る大人の目にはうっすら光るものが見えました。
コロナ禍でも子どもたちの学びや成長の機会をなくしてはいけないと、徹底した感染予防対策で挑んだ今回の「しんとみ学び塾」開催。本プログラム自体も、今後も継続が期待されるプログラムへとステップアップしたのではないでしょうか。