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「いや〜、あの“さやかちゃん”の上目づかい見た?きっと俺に惚れてると思うのよ。」
スマホをいじりながら先輩が話しかけてくる。
「ええ?そうですか?」
「いや、だって、この前だって俺のことタイプって言ってたし。」
スマホをいじりながら先輩が話を続ける。
「いや〜、そんなもんじゃないんですか?商売上そういう風に言うんじゃないんですか?」
「お前な・・・。」
「は、はい?」
「わかってきたな。」
「はい?」
「ひっかかると思ったけど、ひっかからなかったな。」
この人は知らぬ間に人を罠にはめようとする。
「そうなんだよ。キャバクラなんてそんなもんだ。
ところが、いざ採用活動になると別物だと思ってしまう。」
「そうですかね?あまりイメージつかないんですが・・・。」
「例えばお前の会社の説明会に来ている学生って、どんな学生だ?」
「どんな学生・・・まあ、うちのこと志望している学生ですかね?」
「・・・ほらな。学生がそう言ったのか?」
「いや、でもアンケートの満足度高いし、面白かったっていってくれたし。」
「満足度が高いことや、面白かったら志望しているのか?」
「そうじゃないんですかね?」
「じゃあ、選考に進んでいる学生はどうだ?」
「それは完全に志望してくれてるに決まってるじゃないですか。」
「本当か?だったらなんで内定出した学生が辞退したりするんだ?」
「いや、志望してますって。うちの企業のこと好きって言ってたし・・・。」
「お前、さっきの“さやかちゃん”に対する俺みたいだぞ。」
思わず言葉を飲み込む。
完全にやられた。言わされていた。
「説明会に来てくれたり、エントリーしてくれたり選考を受けに来てくれたり・・・
そんなことでテンションがあがるもんだ。
でもな、受けている方はたまたま友達に誘われて説明会に来たり、
どこも内定もってないから選考受けているだけっていうパターンも多いんだぞ。」
「そんな・・・。」
「そんなもんだ。多くの企業が学生を内定まで引っ張りきれなかったり、
内定だしても辞退されるのはそれが大きな理由だ。」
「でも、実際にうちを志望してくれる人もいるんですよ。」
「わかってる。だからといって全員が志望してると思って採用活動する企業と
まだまだ自社を好きにさせないといけない、と思って採用活動をする企業とどちらが強いと思う?」
ぐうの音も出ない。
さっきの自分の発言を思い出すとむずがゆい。
「例え、選考だとしても“どうやって学生を見抜くか”と思ってやる選考と
“相手に自社を好きになってもらおう”と思ってやる選考では出る結果が180度違って来るんだわ。」
凄い。正直やっぱり先輩は凄い。
いつもどうしようもない場面しか見ていないから忘れがちになっていた・・・。
少し先輩を軽く見ていたのかもしれない。
「よし、わかったな。じゃあ次はどの店いく?」
「は???」
「は?じゃないわ。検証しないとな、検証を。」
ようやく顔をあげた先輩のスマホの画面には「渋谷キャバクラランキング」というサイトが表示されていた。