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漁具メーカーがつくる「環境に優しい漁業資材」とは

近年はCO2削減への取り組みが進んでおり、環境に配慮したプラスチック製品を目にする機会が増えています。

私たち西日本ニチモウでも、このような時代の中で環境に配慮した漁具資材の開発に力を入れています。

今回はいま注目されているバイオプラスチックの解説と、2022年4月から販売している環境に配慮したロープのご紹介をしていきます。

目次

  1. バイオプラスチックとは
  2. 環境にやさしい「バイオマスプラスチック」
  3. 植物由来原料のロープが登場
  4. 和紙の網
  5. 未来の環境を守るために

バイオプラスチックとは

バイオプラスチックとは、温室効果ガス(二酸化炭素など)を削減するプラスチックや、自然で分解するプラスチックなど、新しいカテゴリーのプラスチックのことです。

「バイオマスプラスチック」と、「生分解性プラスチック」の総称をバイオプラスチックとよんでいます。

(環境省 プラスチック資源循環より https://plastic-circulation.env.go.jp/shien/bio)

出典:日本バイオプラスチック協会 生分解性プラスチックの種類

まず「バイオマスプラスチック」とは、植物から作られるプラスチックのことです。

二酸化炭素を吸収して成長した植物を利用することで、石油由来プラスチックよりも二酸化炭素排出量を削減できるという考え方のもとで生み出されています。

原料は植物由来ですが、自然に分解するものとしないものがあります。

「生分解性プラスチック」とは、条件次第で環境中で分解するプラスチックです。

ただしこちらは原料は植物由来だけではなく、石油由来のものもあります。

環境に優しい「バイオマスプラスチック」

出典:日本バイオプラスチック協会 生分解性プラスチックの種類

今回はその中からバイオマスプラスチック(バイオマス由来のもの)についてご紹介します。

バイオマスプラスチックとは、前述の通り植物由来のプラスチックのことです。

石油由来プラスチックに比べて、二酸化炭素排出量を削減することが可能です。

二酸化炭素排出量の削減目標は2015年にCOP21にて採択されたパリ協定にある通り、21世紀後半には排出量と森林などによる吸収量をゼロにすること(カーボンニュートラル)が掲げられています。

これは2050年までに二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量から植林、森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。

例えば従来のPE(ポリエチレン)とバイオマス由来PEを比較してみましょう。

PEは石油からナフサ、エチレンなどを経て化学的に合成されます。

合成の過程ではその都度エネルギーを必要とし、二酸化炭素を排出しています。

一方でバイオマス由来PEは、サトウキビから砂糖を作る際に残った液体(廃糖蜜)を発酵させることで、バイオエタノールを生成し、エチレンを取り出してPEを合成します。

サトウキビは原料になるまでの成長段階で、光合成によって二酸化炭素を消費しています。

すなわち廃棄時には二酸化炭素が発生しますが、実質的に排出量はゼロという考え方です。

二酸化炭素について比較した文献がありますので概略をご紹介します。

バイオマス由来PEのCO2排出量については参考文献より

参照)菊池康紀・平尾雅彦:バイオマス由来ポリエチレンのライフサイクル評価, 第6回日本LCA学会研究発表会講演要旨集,P205,図-3 評価結果(https://www.jstage.jst.go.jp/article/ilcaj/2010/0/2010_0_103/_pdf)

化石由来の日本の平均的なPEの原単位(PEを1kg製造するのに必要なCO2量)をシナリオ1、同様にEUの平均的なPEの原単位をシナリオ2、バイオマス由来PEをシナリオ3として比較します。

石油由来PEであるシナリオ1,2はそれぞれ1kgのPEを製造するのに4.55、5.10kg-CO2 eq./kg-PEのCO2を必要としますが、バイオマス由来PEは総合的にみて1.35kg-CO2 eq./kg-PEと大きく削減できています。

つまり地球温暖化問題の解決に繋がるプラスチックといえます。

バイオマスマーク

バイオマスマークサンプル

バイオマスプラスチックは石油由来プラスチックと見た目では区別がつきません。

そこでバイオマスプラスチックであることを判断するための指標として、一般社団法人日本有機資源協会が認定するバイオマスマークというものがあります。

消費者はこのマークによってバイオマス由来かどうかを区別、選択しやすくなります。

バイオマスマークは認定に応じて、バイオマスの割合が10%以上、5%刻みで表示が可能です。

数字が多いほどバイオマスの割合が多いことになります。

植物由来原料のロープが登場

私たちは、ロープや網製品でもこのような取り組みができれば環境に配慮した水産業を実現できると考えました。

そこで植物由来の原料を使用しているPLAを主原料とした「バイオマスロープ(FY型)」を開発し、バイオマスマーク(認定No210171)を取得しました。

HISUN LCAデータより(2007年) 原料製造時のCO2排出量

バイオマスロープ(FY型)は原料の70%以上が植物由来です。

スパンナイロンロープと同程度の引張強力を有しており、実用的なロープと言えます。

まずは縛り紐などへの使用を想定しており、従来のロープと代替することで二酸化炭素等の抑制に期待できます。

バイオマスロープ(FY型) 規格抜粋 ※表以外の規格もあります。(4~40mm)

PLA(ポリ乳酸)は非可食のトウモロコシなどを原料とする高分子材料で、従来の化石由来原料と比較して大きくCO2の排出を抑制できます。

本製品はマスコミに取り上げられ、注目を浴びていることからも、環境に配慮した水産業に少しずつ近づいていると感じます。

バイオマスロープ(FY型) 上から38mm、26mm、10mm

また、本製品は海洋中で分解性を有しています。

分解する指標として重量が減っていること、分子構造や分子量に変化が見られることを確認しています。

※分解性については別の記事でご説明したいと思いますので、ここでは概要をご説明します。

バイオマスロープ(FY型)

ただしバイオマスロープ(FY型)は漁業資材です。

漁業において、使用中に分解が進んでしまうと事故に繋がる可能性があります。

したがって漁業資材として販売するためには保管する空気中や使用する海水中では分解が進みにくく、流失して沈降した際に分解が進行して物性(強力等)が低下することを条件として開発しました。

ニチモウグループではかねてより環境に配慮した製品を開発してきました。

その一つとして100%バイオマスで生分解性の網について紹介します。

※バイオマスロープは海ペディアオンラインショップにて一般の方も購入できます。

海ペディア | 西日本ニチモウ㈱ (square.site)

和紙の網

プラスチックではありませんが、我が国には自然を最大限に利用してきた伝統技術があります。

例えば、和紙です。

和紙はもともと自然にあるもので作られており、流失したとしても環境に影響はないと考えられます。

そんな日本の伝統技術である和紙を、漁具メーカーの技術で植物育成用の網に仕立てました。

リボン状の和紙に撚りを入れることで伸びを持たせているため、植物育成用の網としては十分な引張り強力を有しており、雨にも耐えられます。

プラスチック製の網を使うと絡まった蔦を除去するのが困難ですが、和紙の網であればそのまま土に埋めることで分解しますので、手間も削減できます。

和紙の網

ただし、網に大きな力がかかると切れてしまいますので、軽い植物を育成する用途にのみ使用できます。

また、台風などで大きな力がかかった場合には切断する可能性もあります。

0.9×2.7m、1.8×2.7m、1.8×3.6mのラインナップがありますので、ご興味があればぜひご相談下さい。

未来の環境を守るために

バイオマスプラスチックの利点は、製造~廃棄までの二酸化炭素等の温室効果ガス発生量が、石油由来プラスチックと比べて少ないことです。つまり、地球温暖化対策となります。

同時に環境中での生分解性も具備することで、万が一大きな力(災害など)がかかって漁具が破損し、流失してしまった場合でも環境中で分解し、自然にかえります。

私たちは今後も環境に配慮した製品の開発を未来の環境のために続けていきます。

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西日本ニチモウ株式会社は、ニチモウ株式会社の100%子会社として、ニチモウ株式会社の持っている技術を引き継ぎ、営業部門(当社で製造した網やロープ類、完成網類、他を製造・販売)、製網部門(ウルトラクロス網・二子撚り無結節網の製造・販売)、製綱部門(各種ロープ・トワイン類の製造・販売)、原糸部門(ポリエチレン・ポリプロピレン糸類の製造・販売)、仕立部門(当社内で製造した網地やロープ類を使用し完成品を製造・販売)を有し、西日本地区を代表する漁具の製造・販売会社として、また、船舶、船舶用品、漁ろう用機械、陸上ネット等の販売を含め、事業展開しております。 これからも、「人と海と未来をつなぐ」を理念に、技術とサービスをもって社会に貢献できる企業として、現場に密着したお客様のための会社を目指して活動してまいります。
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