大阪・関西万博 | 宮田裕章 シグネチャーパビリオン Better Co-Being
ようこそ、大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「Better Co-Being」 へ。 ここは、人と人、人と世界、そして未来が響き合う場です。 多様な価値観とつながり、新たな共鳴を生み出す--それこそが、これからの時代を形作る鍵となるでしょう。
https://co-being.jp/expo2025/
大阪・関西万博の開幕から3ヶ月半。世界中から注目を集めるこの祭典で、83Designがそのデザインに携わったデバイス「echorb(エコーブ)」が使用されているパビリオン「Better Co-Being」、通称「宮田パビリオン」。
先日、83Designの社員がパビリオンを訪れ、「echorb」を体験してきました。本レポートでは、パビリオンの魅力と「echorb」の役割、そして実際に訪れた83Designのスタッフが味わった共鳴体験の詳細についてお伝えします。
2025年大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」は、私たち一人ひとりが多様な生き方を肯定し、未来を共創していくことを目指しています。その中で、宮田裕章プロデューサーが手掛けるパビリオン「Better Co-Being」は、テーマである「共鳴するいのち」の具現化に挑戦しています。人と人、人と世界、そして人と未来が響き合う「共鳴」を体感することで、新たな社会のあり方を探求する場所です。
83Designは、このパビリオンで使用されるデバイス「echorb」の工業デザインに携わりました。来場者がアート作品や他の来場者と「共鳴」する体験を深める上で、「echorb」はどのような役割を果たしているのか。そして、そのデザインがどのように来場者体験に貢献しているのか。まずはパビリオンの魅力とデバイスの意義についてまとめました。
「Better Co-Being」は、建築家ユニットSANAAによる、屋根や壁のないオープンな設計が特徴です。万博会場の「静けさの森」と一体となるようなデザインは、自然との調和を感じさせ、来場者を優しく迎え入れます。
パビリオン内は、テーマである「共鳴」を深める3つのシークエンスで構成されています。
Sequence01:人と人との共鳴/塩田千春「言葉の丘」
アーティスト塩田千春氏が手掛けた、個々の「いのち」の物語が交錯する空間。Sequence02:人と世界の共鳴/宮島達男「Counter Voice Network — Expo 2025」
現代美術家・宮島達男氏による、世界とのつながりや時間の流れを視覚・聴覚で体感する作品。Sequence03:人と未来の共鳴/宮田裕章「共鳴の空」、宮田裕章 with EiM「最大多様の最大幸福」
パビリオンのプロデューサーである宮田裕章氏とEiMが提示する、未来社会のビジョンを体感する没入型アート空間。
体験は、基本的に予約制のグループ巡回ツアーで進みます。また、夜間(20:30〜20:50)は自由観覧が可能で、日中とは異なる幻想的な雰囲気を楽しむことができます。7月22日からは朝(9:30頃〜9:50頃)の自由観覧も実施されています。
パビリオンの体験を深める上で不可欠なのが、村田製作所が提供するデバイス「echorb」です。このデバイスは、単なる情報端末を超え、来場者と作品、そして他の来場者とのインタラクションを促進する重要な役割を担っています。83Designはこの「echorb」の工業デザインを担当しました。
「echorb」の主な機能は以下の通りです。
「echorb」が単なる案内ツールではなく、来場者の体験を深化させる「触媒」となることを目指しました。何百人もの手によって検証された人間工学に基づいた持ちやすい形状と、村田製作所の原点であるセラミックから着想を得た「不思議な石ころ」のような有機的なフォルム。これらが融合することで、心地よい握り心地と正しい機能、そしてパビリオンのコンセプトがすべて感じられます。また、触覚的・視覚的な魅力も追求し、デバイスそのものがアート作品の一部となるようデザインしました。
例えば、宮島達男氏の作品「Counter Voice Network — Expo 2025」では、「echorb」が来場者のカウントダウンの声を引き出し、作品に反映させることで、来場者一人ひとりの存在が作品の一部となる共鳴体験を生み出します。
「Better Co-Being」は、「共鳴するいのち」をテーマとし、技術と感性を融合させることで、人々の共鳴体験をより深く、そして豊かなものにすることを目指しています。「echorb」はまさに、このビジョンを体現するデバイスとして、パビリオンの核となっています。
ここからは、実際に「Better Co-Being」を訪れた83Design社員の体験から、その見どころをレポートします。
まず、パビリオンに入ると、SANAAならではの開放的な空間が広がります。他のパビリオンに比べて壁が少なく、自然光が差し込む設計は、万博会場の喧騒を忘れさせてくれるような落ち着きを与えてくれます。受付を済ませると、銀色の台に並べられた多数の「echorb」の中から、自分のお気に入りの一つを選びます。手に取った「echorb」からは、想像以上に強く、心地よい振動が伝わってきました。
続いて、パビリオンのスタッフから「echorb」の使い方について説明を受け、その場で専用のアプリをインストールします。このアプリを通して、「echorb」が様々なアート作品と連動し、新たな体験を生み出すのです。特に印象的だったのは、「echorb」を耳に当てると水が落ちるような音が聞こえる体験でした。多くの来場者が「echorb」を耳に当て、真剣な表情で音に耳を傾けている姿は、まさに未来的な光景でした。
パビリオンの順路は基本的に一本道で、途中にはアート作品が展示されています。空間と一体となったアートは、建築の美しさを一層際立たせ、来場者を魅了していました。そして体験の終盤には、大きな球体を使ったグループでのインタラクティブなアート体験が待っていました。参加者それぞれが興味を持ったアートに応じて「echorb」の色が決まり、その球体を皆で回して混ぜるという共同作業は、まさに「Better Co-Being」を体感できる貴重な瞬間でした。目の前の景色が刻々と変化していく様子は、非日常的で興味を引くものであり、会場の一体感を高めているようでした。
パビリオン内では、様々な来場者の様子が目に留まりました。特に子供たちは「echorb」の振動体験に夢中になっており、目を輝かせながらデバイスを操作する姿は印象的でした。彼らにとって、テクノロジーが五感に働きかける体験は、まさに万博らしいものだなと感じました。
また、大人たちも「echorb」から伝わる振動や音に驚き、真剣な表情で体験していました。スマートフォンでのアプリ登録に手間取っている方もいましたが、同行者同士で助け合ったり、パビリオンのスタッフに尋ねたりしながら、積極的に体験に参加していました。来場者の中には、パビリオンの建築様式そのものに興味を持ち、天井や壁のない開放的な空間を熱心に撮影している方も多く見られました。SANAAの建築とアート作品が融合した空間は、多くの人にとって新鮮で刺激的な体験を提供しているようでした。
「echorb」の操作に戸惑う声も一部聞かれましたが、全体的には来場者はこの新しいデバイスを通した体験を存分に楽しんでいる様子でした。特に、最後の球体を使ったグループでの体験では、見知らぬ人同士が協力し、共にアートを創り上げていく姿は感動的で、「共鳴」というテーマが来場者一人ひとりの心に深く響いていることを実感しました。
夜間には日中とは異なる幻想的な照明が灯り、パビリオン全体がさらに神秘的な雰囲気に包まれ、訪れる人々を魅了していました。
「Better Co-Being」は、多様な存在が響き合い、よりよき未来社会を築いていくという万博のビジョンを体現する場所でした。デバイス「echorb」のデザインを通じて、この「共鳴」というかけがえのない体験を強化し、来場者の皆様がパビリオンのメッセージをより深く感じられるよう貢献できたことを嬉しく思います。
「Better Co-Being」が示す「共鳴するいのち」というテーマは、万博会期中にとどまりません。会期後には、パビリオンの体験を自宅でも継続できる「Better Co-Beingアプリ」が共鳴のレガシーを未来へ引き継いでいきます。
ぜひ、この機会に大阪・関西万博の「Better Co-Being」を訪れ、私たち83Designがデザインに携わった「echorb」と共に、忘れられない共鳴体験を味わってみてください。