さて、㈱イムラのSDGsに関する取り組みについての二回目のお話です。
今回は少し前回よりは壮大なテーマになります。
近年、土砂崩れや洪水が多いと思いませんか?気候変動が原因で集中豪雨が頻発していることも原因ですが、その多すぎる雨の量を今まで通りに森や山が受け止められなくなってきたら…?
もっともっとその被害は増えていくかもしれません。
林野庁のHPによりますと、森林には洪水緩和・水資源貯留・水質浄化といった、「緑のダム」と呼ばれる機能があります。また土砂の流出や崩壊を防ぐ機能もあるとされています。
これらを機能させる条件として、木が地中に根を深く張ることが必要です。そのためには、適切な時期に、より大きく育てて残す木とある程度のところで木材として切り出す木に選別する作業=間伐を行うことが重要です。間伐によりライバルの少なくなった残される木はより大きな木になるべく根を深く広く張ることが可能になります。逆に間伐を適切な時期に実施しないと、どの木も浅く狭くにしか根を張ることができず、「緑のダム」としての機能は期待できないということになります。
奈良県では2011年に十津川村を中心に、集中豪雨が原因で大規模な土砂崩れが発生しました。土砂や流木が大量に流出し、人命が失われ、道路の寸断が発生し、堰止湖ができるなど、甚大な被害が出ました。十津川村を流れる十津川は、和歌山県に入ると熊野川という名前になるのですが、清流を以って知られるこの川も土砂崩れを期に、何年もの間濁りが消えず、川下り等の観光資源や熊野川河口のシラス漁にもダメージを与えていると報告されています。土砂災害というのは短期的にも厄災をもたらしますが、長期的にも根深い問題に発展するということをこのことは教えてくれているような気がします。実際に私も十津川・熊野川の濁りはこの目で見たことがあり、鮎も質が落ちたと聞きました。
近年川上村を中心として、よく林業従事者や行政の方から聞くのは、「山が荒れている」という話です。荒れているというのは、間伐等の作業が行われなくなって、根が深く貼らなくなっていたり、落ち葉や倒木が放置されている状態のことを指します。やはりこういう状態では、本来山林に期待している機能が果たされないというリスクがあることを彼らは指摘します。昨年は山火事のニュースも多かったですが、これらも人の介入が少なくなっていることも原因だとされています。
気候変動も少子高齢化も今まで日本人が経験したことのない問題です。そしてこれらのことが教えてくれるのは、①今まで自然に山が守られていたわけではないこと②それらが途絶えるか少なくなると災害発生のリスクが高まること③一旦災害が発生すると被害は想像より甚大かつ長期化する可能性があることであり、山を放置するとそのしっぺ返しは私達にやってくるということだと思います。
吉野杉の産地である奈良県川上村は、流域100万人が飲料水や農業用水として使用し、紀伊水道に流れ込む紀の川・吉野川の水源地です。水源自体は原生林にあり、これは村が保護していますが、そこで発生した河川の水は吉野杉の人工林の間をくぐって大きな川になっていきます。その流路にトラブルのリスクができるだけ少ない方が、住民にとっても、森にとっても、川にとっても、海にとってもいいに決まっているし、これらは決して個々に存在しているわけではなく、相互に影響を及ぼしながら存在しています。
少し大げさな話になりますが、森の木が適度に間伐され、また新しく木が植えられるというサイクルは周辺の陸も水の環境を維持することにつながっていると個人的に思っています。中部国際空港セントレアでは「山づくりから始める海づくり」という活動をされています。大変良い活動だと思いますし、私もこのような意識で、吉野杉・吉野桧を使用した木の家作りをとおして、木材の需要を喚起し、山に循環が生まれ、それが川や海にも良い影響を与えるように活動していきたいと考えています。またこういったことを率先垂範するために、工務店・住宅会社としては珍しいことだと思いますが、東京ドームと同じ広さの山林を取得し、「社有林」として大事に育成しています。
※上の二枚は社有林で行われた社員研修と植樹イベント
まだまだ社有林の活用方法、メッセージの発信の仕方、手探りで試行錯誤を重ねていますが、木の家イムラが提案する「吉野杉の家」にはこんな隠れた私と会社の思いがあることをこの記事を通じて知っていただけると幸いです。