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三越伊勢丹のDXとアジャイルとDevOps - Java On Azure Day 2021

2021年4月21日に開催されたJava on Azure Dayにおいて、弊社アイムデジタルラボの鈴木が「三越伊勢丹のDXにおけるAgileとJavaとAzure」という講演をおこないました。資料と動画が公開されています。




接客DXへの取り組み

まず三越伊勢丹が取り組んでいる接客DXについてです。三越伊勢丹が提供する靴のパーソナルフィッティングサービス「YourFIT 365」と、リモート接客サービス「三越伊勢丹リモートショッピング」などを紹介したうえで、これらがデータに基づく購買サイクルを実現する取り組みであることを説明しました。

百貨店では、行くたびに見知らぬ販売員と話すことになります。しかし、お客様のIDと紐つけて接客や購買のデータが保存されていれば、次の訪問時には、より質の高い接客をすることができるようになります。

例えばパンプスなどの革靴を買う場合、これまでであれば
・去年、買ってよかった靴があったなと思う
・店頭に行って、販売員を捕まえる
・「前回、これを買ってよかったんですけど」と伝える
・ようやく商品を見て選ぶ
・良いものがあれば買う
という手順を踏む必要があります。

一方、YourFIT 365であれば、利用していただくと気に入った靴や木型のデータとして残ります。木型は靴の設計図のようなもので、新しいシーズンがくると、その木型から新しい形の靴を作ります。そのため新シーズンになることに「前回買っていただいた靴と同じ木型で作った新作」をアプリでお知らせします。つまり、以下の様な流れになり、満足度も高まるわけです。
・(三越伊勢丹から)去年の木型データから新作をお伝えする
・気に入ったのがあればECサイトで買う
・実際に試したければ店頭に行って買う

大企業アジャイルへの取り組み

こうしたデジタルサービスの実現には「やってみて、お客さまからのフィードバックを得て改善する」というプロセスが必要になります。そこでスクラムを採用しています。ただし、三越伊勢丹のような大企業ではスクラムガイドに書かれていることだけではうまくいきません。そこでプロダクトオーナー(PO)を機能させるために、2つのことに取り組みました。

1つ目はPOの仕事を2つに分けて、プロパー社員と外部人材の組み合わせで実現するようにしました。大企業で多くの部署が関わるようなプロダクトの場合、POに権限を委譲するのは簡単ではありません。そのため大企業のPOには「お客さまと開発チームをつなぐ役割=縦の仕事」と「意思決定者と現場をつなぐ役割=横の仕事」があることになります。この2つのうち、縦の仕事は三越伊勢丹出身者が担い、横の仕事は外部の専門性があるデジタル人材が担う形にしています。

2つ目は組織としての意思決定を週次で行うようにしていくことです。1つ目で紹介したように、大企業の意思決定は、それなりの役職者が行わなければなりません。ただ、この意思決定が月1回や四半期に1回ではスピード感が出ません。そこで週次で意思決定ができるような体制とプロセスを実現しました。

DevOpsへの取り組み

こうした取り組みを支えたのがAzureです(AWSも活用しています)。前述のYourFIT 365や三越伊勢丹アプリといったプロダクトがAzure上で稼働しています。

構成の前提はDevOpsの実現です。従来型の組織ではアプリケーション開発、インフラ構築、運用というのは別組織で運営されています。このためインフラや運用において設定変更があると別部署への依頼という形で行う必要があります。

アジャイル開発のスピード感を実現するためには、開発チームがインフラ構築も運用も行える体制にすべきだと考えました。ただし、従来型のシステム構成のままでは手間がかかりすぎてしまいます。そこでPaaSを前提にし、可能な限りメンテナンス性を高めた構成にしました。

具体的には以下のような構成です。オンラインアプリケーションはApp Service上のDockerコンテナで動いています。従業員からのアクセスされるノードはAzure ADで保護されており、お客さまからアクセスされるノードはWAFで保護されます。バッチアプリケーションはLogic Appsで構築しました。その他、APMとしてApp Insights、CI/CDツールとしてAzure Pipelinesを利用しています。それぞれのコンポーネントの長所や短所については資料をご覧ください。

まとめ

アイムデジタルラボでは接客DXの目的を「データドリブンによって質の高い接客・提案を実現し、お客さまとの関係性を深める」と定義しています。このために接客や提案におけるキーファクターをデータ化し、オフライン・オンラインを問わずに活用していく取り組みを進めています。

この取り組みは、三越伊勢丹にとっても、お客さまにとっても新たな取り組みです。そのためアジャイル開発を採用し、サービスを提供しながらプロダクトも成長させていくことにしました。そして、大企業においてアジャイルを機能させるために
- 現場を巻き込む(ワークショップやサービスデザイン)
- 組織を巻き込む(意思決定者と現場のコミュニケーションを週次で)
- IT部門を巻き込む(スピード感とガバナンスの両立)
といったようなことをしてきました。

そして、これらを支えるためにDevOpsの実現を目指し、PaaSを採用してきました。AzureのPaaSは、このために大きな力となりました(AWSのPaaSも、ですが)。

DX、アジャイル、DevOpsは1つの線で繋がっています。アイムデジタルラボは、これからも三越伊勢丹におけるデジタルサービスの実現にむけて、これらに取り組んでいきます。

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