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社員インタビュー | 僕が求めていた理想的な宿での働き方

株式会社一井は2021年8月10日に、旅館「浜の雅亭一井」の事業を承継しました。旅館にかかわるすべての資産と従業員を引き継ぎ、新しい経営陣のもとで旅館の事業再生に取り組んでいます。

9月20日から一井に新しく加わったゲストサービス部のマネージャーである谷口宏明さんに一井に転職した理由や、今の働く環境、自身のキャリアについてインタビューをしました。

インタビュアー:片桐陽(グッドハイブ株式会社:コンサルタント / 株式会社一井:業務推進アドバイザー)

谷口さんとの出会い

片桐:谷口さんと出会ったのは、僕が前職のホテル運営会社にいたとき、京都で新規開業した旅館のサービスマネージャーを探していたら、ご縁があって、ある方から紹介してもらったんですよね。

谷口:そうですね。ちょうどコロナが話題になりはじめる直前ぐらいでしたね。

片桐:あの時は新規開業で「よっしゃ、ここから!」という意気込みの中だったんですが、コロナの影響をかなりシビアにみられて会社の判断としては早めの損切り。僕も岡本(グッドハイブ株式会社:代表取締役 / 株式会社一井:代表取締役)も退職することになり、谷口さんとは長く働けなかったのですが、こうしてまた一緒に仕事ができていることがとても嬉しいです。

谷口:僕もまた、岡本さん、片桐さんと一緒に宿の運営ができることにワクワクしています。「谷口さんまた一緒にやろう」って声をかけてもらえて、よかったです。

片桐:ふたつ返事で「行きます!」って言ってくれて岡本と大喜びしましたよ。まだ谷口さんとは前職も合わせて半年くらいしか一緒に仕事をしていませんが、なんか、もう5年くらい一緒に働いていた感覚です。

谷口:笑


先生からホテルマンへ

片桐:谷口さんって、もともとホテルで働きたかったんですか?

谷口:僕はアメリカに留学していて英語力には自信があったんです。なので最初はそれを活かして英語の先生をしていました。

片桐:えっ!てっきり最初からホテルや旅館で働いてたんだと思ってました。

谷口:もともとホテルで働きたいって思ってたんです。それで30歳のときに異業種に飛び込むならこのタイミングが最後かもと思って、ホテルへの転職を決意しました。

片桐:持ち前の英語力をホテルで活かすって感じですね。

谷口:それで関西で働けるホテルを探していたんですが、その転職活動中に「あなたの英語力ならシステマチックなホテルより旅館の方が、外国人のお客様とのコミュニケーションがたくさんとれていいかもね」と助言をもらって、はじめて旅館も自分の中に選択肢として増えました。

片桐:なるほど、たしかにホテルだと使う英語力って限られてしまうかもしれません。

谷口:旅館が視野に入ってから、国際旅館に登録されている宿を探して、京都嵐山の旅館に転職が決まりました。そこは価格でいうと、1泊2食つきで安くても30,000円くらいからの小さな宿でした。その後に城崎温泉の旅館に転職しました。ただやはり自分の中でホテルマンになりたいという気持ちがあったので、そのあと大きなホテルに移りました。

片桐:旅館とホテルを両方経験されたんですね。それから僕たちと京都の旅館で出会った、と。

谷口:そうです。


自分のキャリアアップについて

谷口:サービス業ってからだひとつで仕事をしていかなきゃいけないじゃないですか。ただ年齢とか体力的に限界がくるなって。いつまでも最前線にいることもできますが、僕は自分が培ってきた接客のノウハウだったり、知識だったり、そういうものをもっと人に伝えたり、それができる人が増える仕組みを考えたりしていくことが、サービス業における一つのキャリアアップだなって、岡本さんに出会って感じました。

片桐:現場の最前線も大切だけど、岡本と一緒に仕事をする中で、改善をしたり、仕組みをつくったり、管理したり、マネジメントする側に興味をもったということですね。

谷口:そうですね。今はそちらに面白みを感じています。もちろんお客様と接することも大好きなので、お客様と接している時間は楽しいですが・・・。

片桐:谷口さんの接客ってすごいんですよね。僕、印象的なのが、谷口さんと京都で一緒に働くことになった初日にお客様が投稿してくれたクチコミを今でも憶えていて。「チェックイン後、客室に案内するときに、子どもがたくさん持っていたおもちゃを大事に運んでくれて、お礼を言うと『これがいちばん大切なお荷物ですから』って言ってもらえてとても心温まりました」ってクチコミです。とっさにあたたかい言葉をかけられる心配りに感心しました。

谷口:ありがとうございます。そういえば、そんなことがありましたね。

片桐:その第一線から離れるとさみしくなりませんか?

谷口:もちろん今でもお客様と接する時間は楽しいです。ただそれと同じくらいマネジメントに費やす時間も楽しいので、ゼロかといえばそうではないですが、さみしくはないですね。

片桐:なるほど。今後のキャリアの展望はありますか?

谷口:支配人もやりたいですし、片桐さんみたいに他の施設へのコンサルティングもしてみたいです。一井の再生がうまくいったら、自分がつくる接客サービスのノウハウだったり、マネジメントの仕組みだったりを次の施設に取り入れて、どんどん他の旅館の再生もやっていきたいです。

片桐:とても心強いです。僕たちとしても、一井を事業再生のモデルケースに、どんどんホテルや旅館の再生を進めていきたいと思っています。


一井での働き方や価値観、組織文化について

片桐:今まで働いてきた宿と比べて、一井で働いていて、ちがうなって思うことはありますか?

谷口:僕が今まで働いてきた宿は、規模にかかわらず、意見が一方向なところが多かったです。経営者からのトップダウンで物事が決まって、現場の意見はなにも聞かないというような。料理も料理人と経営者のやりたいことのイメージが違って、結局、経営者が他のホテルとか旅館の料理の写真を持ってきて、これ作って、みたいな。料理だけじゃなくてサービスについても、そんな感じでした。

片桐:小さな宿で個人オーナーだとなおさらそうかもしれませんね。

谷口:僕の理想は、議論のテーブルはどの部門や立場であっても平等であることなんです。料理ひとつでも部門によって見え方は違うじゃないですか。経営者からみた料理と、料理人からみた料理、接客サービスからみた料理、洗い場からみた料理って、全然違って見えると思うんです。だからこそ議論することで、よりよい料理に近づいていくんだと思います。

片桐:そうですね。その中でできることできないことを踏まえて、いま出せるいちばん良い料理をお客様に提供するからこそ、満足に近づくんだと思います。自分がサーブする料理に納得感がなかったら、お客様に笑顔で提供できないですよね。

谷口:その点、一井はコンセプトに基づいているかどうかが明確な判断基準としてあって、その中で各部門が意見を出し合ってものごとを決めていくプロセスが良いと感じています。社長である岡本さんも周りの意見をよく傾聴しているし、スタッフが岡本さんの意見に異を唱えるのも日常的で、それが僕にとっては理想的な環境なんです。風通しがいいってこういうことだよなって。

片桐:そうですね。スタッフが岡本のことを社長と呼ばないで「岡本さん」って呼んでいるのにも、そういう組織文化が現れているなって思います。

谷口:宿って全員運営でやっていくのが当たり前のように思うんですが、それができているところって本当に少ないんじゃないかなって思います。なので、その違いを京都で岡本さんと一緒に働いているときに身にしみて感じました。一井に来ても同じ文化ができているので安心しました。


事業再生の醍醐味とは

片桐:谷口さんと京都で一緒にやっていたときは中古旅館の新規開業だったので、建物はありましたが、それ以外はすべてゼロベースから積み上げていったじゃないですか。一井はハードもソフトもヒューマンも、一旦すべて引き継いで、そこから改善を積み重ねっていっていますが、その違いの中で感じることはありますか?

谷口:一井で以前から働いていたスタッフの意識を変えていくのはすごく難しいですね。ハードはお金をかければ変えられるし、ソフトもある程度変えやすい。ただヒューマンの根っこの部分、人の意識や取り組む姿勢を変えるのは、難しいです。

片桐:そうですね。いちばんしんどいところですね。

谷口:前から勤めていた方からすると、今までのやり方でなんでダメなの?ってなってしまうし、ずっと続けてきた意識が常識化してしまって、すぐには新しいことにチャレンジする姿勢にはなれないんだと思います。でも時間をかけて、筋道を立てて説明すればみんなわかってくれる。ただわかっていても、意識をガラッと変えて、行動も変えていくには少し時間がかかるんだと思います。

片桐:それこそが事業再生の醍醐味というか、面白みでもありますよね。スタッフを全員入れ替えたらそれで解決する話かもしれないですが、それは僕らが考える事業の再生ではないですから。そういったやり方で黒字化させても、全国の地方のホテルや旅館で求められている事業再生にはならないと思っています。

谷口:僕たちがやっていく形の再生が達成できれば、今後の事業拡大にもつながりますし、それが地方創生に直結していきますよね。

片桐:ぜひこれからも一緒に頑張りましょう!


―――京都の旅館時代にスタッフ全員で地元の酒蔵を見学する研修を企画してくれた谷口さん。一井で出している三重の地酒をつくる酒蔵めぐりの研修も今後またやっていきたいですねと話をしました。

一井では今後の事業再生を一緒にすすめてくれる仲間を募集しています。

宿をつうじた地方創生に興味のある方は、ぜひご応募ください。

浜の雅亭一井
三重県鳥羽市相差町1522-27
「しあわせの海へよう来たなあ」をコンセプトに旅館事業の再生を行っている。

記事・編集:岡本匠、片桐陽、谷口宏明
写真;片桐陽

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