2025年10月、クリエイターズマッチは創業20期目を迎えます。変化の激しい時代の中で、会社を率いる代表はどんな思いを抱き、どのような未来を描いているのでしょうか。これまでの歩みや目指す世界観、会社の方向性について、呉社長に語っていただきました。
【プロフィール】
呉 京樹:代表取締役社長。デジタルハリウッド卒業後、ゲーム会社や映像制作会社でデザイナーとして活躍。その後、ソフトバンク・ヒューマンキャピタルに入社し、営業マネージャーを務める。2006年に独立しWeb制作会社を創業。オンライン広告の拡大を見据えて2007年に株式会社クリエイターズマッチを設立。
クリエイターが輝ける社会の実現に挑んだ18年の成果
――創業20期目を迎えて、率直な思いを聞かせてください。
あっという間でしたね。ただ、まだ目指す世界の途中にあります。「クリエイターが輝ける社会を創造する」というミッションは壮大ですから、まだまだやるべきことがたくさんあります。
――具体的にはどのような成果があったと感じていますか。
まず、当社が定義するクリエイターとは、“ゼロからイチを生み出す人”です。特にWebクリエイターが活躍できる社会をつくり、安定した収入と社会的地位を得られるようにする。その点で、これまで一定の成果を上げてきました。
Webクリエイターは、フリーランスとして活動する中で安定した収入を得るのが難しいと言われてきました。しかし、当社のプラットフォームを通じて、フリーランスでも挑戦し、日本の平均年収以上の成果を挙げられる新しいマーケットを築くことができました。トップクラスのクリエイターになると、年収1,000万円を超える人も出ています。そういう意味では、クリエイターが可能性を持って働ける環境を提供できたことは大きな成果です。
――一方で、課題はありますか?
もちろんです。数の面ではまだ十分ではありません。当社のプラットフォームには現在およそ400名のメンバーが在籍しています。これは、お客様との信頼関係を築くために、合格率10%以下のスキルテストを通過した人材だけを採用しているからです。そのため、審査を厳正に行い、どうしても数を絞らざるを得ません。
しかし、市場への影響力をさらに高めるには、メンバーの数も増やしていく必要があります。クリエイティブ業界のフリーランス人口は、200~300万人規模と言われます。まだまだ伸ばせる余地は十分にありますし、ここからさらにチャレンジしていきたいですね。
クリエイター支援のクラウドソーシング先駆者としての自負
――これまでの会社の歩みの中で、どんな変化を感じてきましたか?
クリエイティブは今やどの領域でも一般化していますが、20年前は「クリエイター」という言葉自体、ほとんど聞かれませんでした。そんな中、どの業界でもクリエイターが必要とされるマーケットが徐々に築かれていったことは、当社にとって大きな追い風となりました。
事業を始めた当時、私の思いは「これからクリエイターを目指す人たちをバックアップしたい」という一点にありました。私自身がクリエイターだったからこそ、その才能のすばらしさも、日本における立場や評価が十分でない現状も実感していました。その課題を解決したいという思いを、ずっと持ち続けてきたのです。
国内におけるクリエイターのクラウドソーシング市場で、当社はパイオニアとして最初に挑戦した自負があります。この挑戦は今も変わらず、事業を継続させる原動力になっています。
――地方のクリエイターとの取り組みも特徴的ですね。
そうですね。かつて日本のビジネスは首都圏に集中しがちでしたが、当社は創業当初から地方のクリエイターともつながり、テレワーク環境の中で仕事を生み出してきました。当時としては珍しい取り組みでしたね。
2011年の東日本大震災では、東京のインフラが止まる中でも、当社は全国のクリエイターに仕事を発注していたため、予定通り納品することができました。この経験は、クラウドソーシングの可能性を大きく広げただけでなく、地方のクリエイターを活用することでリスク分散ができるというクライアントの意識の変化にもつながりました。
――そしてコロナ禍ですね。
はい。コロナ禍でテレワークが当たり前になりましたが、当社はすでに長年の実績がありました。創業当初からこのビジネスモデルにかけてきた経験が、そのまま強みになったんです。結果として、私たちが築いてきた仕組みが、まさに時代の流れにマッチした瞬間でした。
クリエイターとお客様、双方に価値を届ける仕組みづくり
――新たなサービスについてもお伺いします。『thinc Project』の一環として、プロジェクト管理アプリ『Task Relay』を立ち上げられました。
当社は2011年から、クリエイティブ特化型SaaS「AdFlow」を提供してきました。クリエイターの制作負荷を下げることを目的に生まれ、多くのお客様に活用いただいています。しかし、時代の変化とともに、「制作管理」だけで業務を完結させるのは限界があることが見えてきました。お客様からは、すべてのタスクや工数を一元管理できる仕組みが求められていたのです。
そこで、AdFlowと連携し、上流のタスクやプロジェクト管理までカバーできるサービスを目指して『Task Relay』をリリースしました。クリエイティブ領域に限らず、あらゆるプロジェクトを支える企業インフラとして活用できるようになっています。
私たちはこれまで「クリエイターファースト」のサービスを作り続けてきましたが、その過程でお客様とのギャップを痛感することもありました。『Task Relay』は、そのギャップを埋め、お客様と真正面から向き合うために生まれたサービスだとも言えますね。
――そして、制作事業(thinc Workplace)内では、新たに『thincAgent』というサービスも開始されました。
当社はこれまで、受託契約の形で全国のクリエイターに仕事を発注してきました。業界的には、社内でデザイナーを抱えるのは採用やマネジメントの負担が大きく、アウトソースが主流でした。しかし、近年はAIの進化やデータ活用の容易さ、さらにコロナ禍によるマーケットの変化で、地方のクリエイターでも仕事ができる環境が整い、お客様自身が社内でデザイナーを抱える「インハウス化」が進んできました。
もし当社が受託にこだわり続ければ、その先で働くクリエイターの仕事が減ってしまいかねません。そこで生まれたのが『thincAgent』です。当社のネットワークを活かし、お客様先に直接クリエイターを紹介することで、インハウス化の課題であるデザイナー採用を支援しつつ、クリエイターには安定した固定給を提供できる。まさに双方にとって価値のある「win-win」のビジネスモデルです。今後もニーズの拡大が見込まれますし、当社のプラットフォームの規模も後押しとなることで、さらなる成長に弾みをつけられると感じています。
クリエイターの未来を支えるために、常に学び、伝え続ける
――新たな事業展開も見据え、どのような人に仲間になってほしいですか?
マインドとしては、まずクリエイティブが好きな人。デザインやアートが好きで、デザイナーが作ったものをリスペクトできる人が当社に向いています。スキル面ももちろん重要ですが、それ以上にマインドセットを重視しています。クリエイターへのリスペクトこそが、当社の文化の土台だからです。
ありがたいことに、この20年で入社してくれたメンバーも、当社のビジョンやミッションに共感し、同じ価値観を共有してくれています。たしかに、難しい仕事もたくさんあります。でも、根底にあるビジョンへの共感があるからこそ、しんどいときでも立ち戻れる。その原動力が変わらないことが当社の強みであり、そうした仲間が集まっているからこそ、成果を生み続けられているのだと思います。
そして当社は、常にチャレンジする姿勢を大切にしており、新しいことに挑戦する意欲を持つメンバーを全力でサポートしています。チャレンジ精神あふれる方に、ぜひ仲間になってほしいですね。
――クリエイターズマッチをどんな会社にしていきたいですか?
AIの波が押し寄せる中で、ゼロから生み出すクリエイティブは、まだAIには代替できないと考えています。確かにAIによってなくなる仕事もありますが、クリエイティブは最後まで残り続ける領域だと感じています。だからこそ、クリエイターのみなさんが「AIとどう共存するか」を体系的に学び、不安を解消できる環境を整えることが、私たちの役割だと思っています。
本年12月12日に開催する「CREATORS MATCH FESTA」でも、そのテーマを中心に掲げています。常にクリエイターの支えであり続けるために、私たち自身が学び続け、最先端の技術を正しく理解し、自分たちなりに解釈したうえで、確かな情報を届けていきたい。その覚悟を持って取り組んでいますし、メンバーと共に「どうすればより良く届けられるか」を考え続けていきたいと思います。
――最後に、読者のみなさんへメッセージをお願いします!
クリエイティブに興味があり、もっと挑戦したいと思っている方には、当社はきっとマッチするはずです。今の環境で物足りなさを感じている人、チャレンジの場を探している人にとっても、ここは挑戦のチャンスに溢れた、可能性を広げられる場所だと感じてもらえると思います。「クリエイティブ×チャレンジ」を本気で求めている方は、ぜひ一緒に未来をつくっていきましょう。
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