【インタビュー#1 代表・佐藤弘規 -前編- 】「選択と集中」だけが解じゃない。 僕は「選択」せず「成立」させたいんです。
ありのままのCHASEを発信したい。まずは、客観的な視点でCHASEを知ってもらいたい。そんなことを考え、普段はチームを組んで仕事をしている外部パートナーさんに、改めてCHASEについて知ってもらい、それを表現してもらうことを考えました。
まずは社長の佐藤をはじめ、社員のインタビューを実施。1人あたり1時間半ほどお話する、力の入ったものになりました。ソトからCHASEを見てみたら。私たちがどんな人、どんな会社に映るのでしょうか。
最初は代表の佐藤から。CHASEの立ち上げ前から、話を深掘りします。
佐藤弘規
CHASE株式会社CEO。学生時代は剣道部。博報堂では営業職として、トヨタ自動車やLIONを担当。イベントプロダクションでのプロデューサー経験を経て、2020年にCHASEを立ち上げ。
――1988年生まれの2011年新卒。ということは、震災があった年に就職した世代ですね。
ちょっと暗い世代として語られますよね。
――リーマンショック直後で就職難とも言われ、東日本大震災で卒業式がなくなり……。
そうそう。就職してからも電力不足ゆえの計画停電が行われていたので、お客様に合わせて週末も稼働してたなぁ。
身の丈に合ったことじゃなくて、
背伸びするくらいのことを、
覚悟を決めてやってみる
――新卒では、博報堂に入社されたんですよね。
そうですね。ただ博報堂に入社するときは、確固たるやりたいことがあったわけではないんです。入ってから、見えてきたものの方が圧倒的に大きかった。
――入ってからどんなことが見えてきたんです?
最初に正直なところを話すと、元々は社会人になることそのものにちょっと偏見があったんです。ほら、よく「死んだ顔で電車に乗ってる会社員」なんて表現がありますよね。学生から社会人になるときは、「アレになるんだ」とどこか観念するというか、諦めるというか。そういう気持ちだった。でも、博報堂に入社してみたら全然違いました。周りで働いている人を見ると、心から楽しそう。カッコよさを感じました。それに感化されて、営業の中でも最もタフと聞いていた部署に直接、配属の交渉をしに行ったんです。どうしてもこの部署に入りたいと。その部署のトップの方も、25歳くらい年上なんですが、大人の余裕もあるのに少年っぽさもあるような方で。人としてもビジネスパーソンとしてもカッコいい方でした。
――死んだ顔の会社員として働くことはなかったんですね。
自分の仕事をどうコントロールするかについても、イメージを覆されました。大企業はやっぱり年功序列というか、上司の考えに従って動くものかなと思っていたんです。そうやって何年かするうち、徐々に一人前になるのだろうと。でも2年目、3年目の先輩も、ものすごくアクティブに自分で仕事を回していました。その姿を見て、ああ、自分の仕事も自分の成長も、自分でつくるものなんだなと。仕事ってトライしてみれば跳ね返ってくるもの。それを社会人の早い段階で気づかせてもらったのは、ありがたかったですね。
――社会人になったらこういうもの、1年目の働き方ってこれくらい、みたいな思い込みってどこかにありますもんね。そういうのがなくなって、世界を広げられたのが博報堂時代だったと。いいエピソード、たくさんありそうですね。
1年目でやっていたCMの仕事では、プロジェクトの途中で上司が体調不良により抜けてしまったんです。博報堂の担当は僕ひとり。わからないことしかないし、準備をしようにも何をすればいいか知らないし、そういう中でも制作プロダクションの方の助けを借りて協力しながら乗り切りました。そこで乗り切れたって経験がすごく大事だったと思います。自分の身の丈にあったことをするんじゃなくて、背伸びするくらいのことを、覚悟を決めてやってみる。そうすると成長できるんだなと。1年目だからできない、なんて自分で自分の領域を決めないほうがいいんですよね。
どれだけ壮大な企画書をつくれても、
目の前のひとりを動かせなかったら意味がない
――自身の視野や経験を広げて、その後はイベント運営に強いプロダクションへ転職されています。これは何故だったんですか?
博報堂ではダイナミックで規模の大きな仕事ができたと思っています。一方で、壮大すぎるとも感じていました。リアルに人を動かす実感を感じにくくなったと言うか、大きな車輪の中にいる感覚になったというか。
――規模の大きなプロジェクトだと、達成感はある一方で、「自分がやったんだ」という手触りは薄くなってしまうというか。もっと身近なモノをつくったり人を動かしたかったんでしょうか?
そこがないと、むしろリアルなビジネスじゃないと感じたんですよね。単なる広告業界人じゃなく、ビジネスパーソンになっていくには、リアルなラストワンマイルが必要でした。
――ただ、博報堂のような大手広告代理店にいれば、その分選択肢も多いですよね。手触りのある仕事もできたかもしれない。逆に、それを求めて別の環境へ行くのはゼロスタートになるリスクもあったんじゃないですか?
最初の、自分で仕事をつくらなければならない点は、そういうところもあったかもしれないですね(笑)。たとえば博報堂だったら、自分はそこにいるだけで新しい仕事がある。もらえるんです。でもプロダクションだと、ゼロから自分で仕事を取ってこなくちゃいけない。もう自分が“元博報堂”なんて関係ないから。入社初日に、PCとスマホを貸与してもらって終わり。会社側が勝手に仕事を用意してくれるってことはない。
――それまでやったことがなかったのに、「仕事ください」と新規営業して回るってことですよね。できるもんですか?
できる、できない、なんて言ってどうにかなる話じゃないので。やるしかない。プロダクションの社内メンバーに「お手伝いできることはありませんか」と社内営業もしましたし、博報堂にももちろん営業しました。変なプライドを捨てて、頭を下げる経験。
――社会人歴が長くなるほど、できない経験ですね。求めていた、ビジネスパーソンとしてのリアルなラストワンマイルは経験できましたか?
そうですね。とある清涼飲料水の無料配布イベントをやったんです。自分も現場に立って、道行く人に声をかけ、ペットボトルを配るんですよ。アルバイトの子たちと一緒になって声出しながら。手渡すのに時間がかかるからオペレーションを変えたほうがいいな。こういう声のかけ方で、これくらいの声の大きさがいいな。こういうことは、現場でやってみないとわからない。その場でやり方を試行錯誤できたんですね。
――その試行錯誤が、リアルなラストワンマイル?
広告代理店で、企画だけやってたら知れなかったことでしょう? 壮大な企画書をつくれても、目の前のたったひとりにサンプルを受け取ってもらえなかったら意味がない。具体的に人を動かすところまで考え、経験することができたなって思います。ブランディングやマーケティングは、最終的には実際にひとりを動かして、買ってもらわないと意味がないわけですから。頑張って声出すの、恥ずかしかったですけどね(笑)。でも大事なことだったなと。
自分のポジションだからこそできる提案ってある。だからあえて言う。あえてやる。
――現在CHASEのプロデューサーは、業務範囲が決まっておらず、その時々クライアントにとって必要なことをプロデューサー自身が考え実行するスタイルですよね。お話を聞いていると、このスタイルは、佐藤さんが博報堂とイベントプロダクションでご経験されてきたことから生まれてきた思想なんだと感じました。
それはあるかもしれません。プロデューサーとはこういう仕事、と領域を決めつけてしまわない。なんというか僕、口を出せることは全部出そうと思ってるんです。
――口を出せることは出す、とは? それも前の2社でのご経験ですか?
僕が博報堂の営業で4,5年目くらいの頃の話です。当時、営業職は会議のコーディネートだけしたら終わり。制作パートには口を出さないのが当たり前の中、制作の企画会議に自分なりのアイデアを持っていったことがあります。そうしたら、最終的に結局クライアントに刺さったのは僕の提案だったんですよ。
――制作を出し抜くようないいアイデアが出せたぜ!ってことですか?
いやいや、そういう出し抜く気持ちじゃありません。営業って、クライアントに一番近いポジションで仕事をしているんですよ。だったら、制作チームに任せて終わりにするのではなく、クライアントのことを一番よく知る人間としてアイデアを出してみようと思った。そうしたら上手くいった。クライアントは最近こういうことに困っているはず、自分がイチ消費者だったらこう動く、と客観的に考えてみることで上手くいったんです。
――なるほど。クライアントのことをよく知る人だからこそ、客観性を意識しながら出せるアイデアがあるんじゃないかってことですね。
そうです、そうです。自分のポジションだからこそできる提案ってあると思っていて。それがあるなら、あえて言う。あえてやる。それが、口を出せることは出すべきって考え方。
――ポジションによって言えることや見えるものって、たしかに変わってくる。
今でもそうですよ。クライアントの社長が出席するミーティングとかだと、クライアントの社員の方は、社長への反対意見ってなかなか言いづらかったりするでしょう。だからあえて、外部パートナーの僕が言う。あるいは、イチ消費者である僕が言う。「いや、僕がこの商品を買うならですね」と客観的な意見を、言うべきときに言うのが大事だと思っています。
――ははぁ。佐藤さんって「何にでもズバズバ差し込む少し怖い人」じゃなかったんですね。(笑)
どういうイメージ持ってたんですか(笑)。意識的にそのポジションを取りにいってる。必要だからやってるんです。
クライアントへ応える方法を、
しがらみなくピュアに追求したい
――独立してCHASEをつくろうと考えたのは、どんな背景があるんですか?
自分で決めて、自分でやってみたい気持ちが強くなりました。
――自分の城がほしい、的な?
というよりは、自分の世界観とか、自分のやり方でやってみたいって気持ちでしょうか。
――というと?
どんなこともそうなんだと思いますが、ビジネスは特に、相反する2つからどちらかを選ばなければならないことが多いと思いませんか? 社会や人のため、と考えながら、結局会社として売上が大事になる。クライアントの意向は汲みたいが、ステークホルダーを見渡すと別の力学が発生する。
――先程の、ダイナミックな仕事の面白さもあるが、目の前のたったひとりを動かせなければ意味がない、というお話も近いですね。
そうですね。これって、普通はどちらかを選ばないといけないんですよ。何を優先させるか、誰を優先させるか、決めなければならない。実際僕は、目の前のたったひとりを動かす経験するためには、転職が必要だったわけで。
――その決断ができるのが、いいビジネスパーソンというイメージがあります。
でも、本当にそうなのか?と考えたわけです。両方を成立させる、アイデアとか、アプローチとか、あるんじゃないか?って。
――よく「選択と集中」なんて言いますけど、それだけじゃない他の道もあると。
アンチテーゼというよりは、もっとピュアな気持ちですかね。本当にできることはないのか、クライアントへ応えるために、しがらみなくピュアに追求したい。そのためには自分の城が必要だった。だからCHASEをつくったんですよね。そうやって決めて、2020年に登記をし、CHASEが始まりました。
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