一回の面談が、誰かの人生を大きく好転させる ——
花巻遼太は、その瞬間を何度も見届けてきた。
若手特化の人材紹介会社、キャリアスタート株式会社の執行役員であり、新卒紹介事業部長。年間13,000人超の就活を支える組織のリーダーだ。
彼が中途採用支援を担当していた頃のことだ。
20代前半の青年が相談に訪れた。
幼い頃に両親を亡くし、たった一人で生きてきた。正社員経験はなく、誰にも頼らずアルバイトを転々としていた。
自分を守るため攻撃的、他責思考だった彼を、他社のエージェントは「難しい人」と判断しフォローを打ち切った。
しかし花巻は違った。
他責に見える態度も、必死に生き抜いてきた結果だと受け止め、まず彼の人生を肯定した。
「今日まで1人で生きてきた。それだけですごいこと。心から尊敬します。」
青年が驚いた表情を見せた。
そんな言葉を掛けられたのは初めてだったからだ。
だが、花巻は優しい言葉だけで終わらない。
「でも、この先も周りのせいにして生きていくなら、社会では通用しない。自分の人生は、自分で変えるしかないよ。」
誰も教えてくれなかった自責の重要性を、真正面から伝えた。
本気で向き合うとは、耳障りのいい言葉ばかりを並べることではない。
相手の未来のためなら、嫌われる覚悟を持ってでも伝えるべき時がある。
青年は黙って話を聞き、面談の最後、少し心を開いてつぶやいた。
「自分の悪いところをこんなに本気で言ってくれた人は、初めてです。」
それから二人三脚の就職活動を走り抜き、見事、大手上場通信会社への中途入社を実現。1年後には昇進、さらにその翌年には「結婚します」という報告まで届いた。
誰にも頼れなかった青年が、自分の人生を力強く歩き始めた。
電話を終えたあと、花巻は静かに思った。
「全力で人と向き合えば、人の人生はこんなにも変わるんだ。」
だが、そんな花巻にも、自分の進む道が見えなくなった時期があった。
北海道で生まれ育った花巻。中学からテニスを始めた。
「やるからには一番になりたい。」
中学、高校と北海道代表として、全国大会へ出場。大学時代も本気でプロを目指した。
しかし、同世代の錦織圭選手の活躍が夢を現実へ引き戻す。
「プロになったとしても、自分は一番になれない……」
10年を捧げた末に、決断した。
「別の世界で一番になろう。」
大学卒業後に入社したのは、スポーツスクールを運営する業界大手だった。
インストラクターとして希望したのはテニスではなく、競技人口が最も多いサッカー。売上で1番を目指せると考えたからだ。
だが知識はゼロ。専門書を何十冊も買い込み、ボロボロになるまで読み込んだ。子どもたち一人ひとりに合った指導法を考え、人としての成長にも時間をかけた。
結果、競技未経験ながら教え子を関東大会へ導き、同期118人の中で新人賞を獲得。2年目・3年目連続で当時500名を超えていた全社の頂点に立った。
「やると決めたら、誰よりも準備をして、最後までやりきる。」
この信念は、今も花巻の仕事のポリシーだ。
だが成長を後押しする中で、別の思いが芽生え始めていた。
「自分の力をもっと大きなフィールドで活かしたい。」
転職活動では10社近くから内定を得たが、どの仕事をすべきか迷っていた。
そんな時、キャリアスタートと運命の出会いを果たす。
面接で花巻を迎えたのは、代表の下山慶一郎だった。
同業他社が採用企業優先の営業方針を語る中、下山代表だけが違った。
「うちは求職者ファースト。とことん向き合う。そのためにこの仕事をやっている。」
さらに過去の実績より未来について尋ねられた。
「花巻くんは、これからどうしていきたい?」
初対面で自分の将来を本気で考えてくれる人に、初めて出会った。
「この人についていこう。」
面談が終わる前には決めていた。
当時の社員数はわずか8人。
入社後、花巻は持ち前の「準備を徹底する力」で結果を出していく。
そして、建設会社からの30人採用という大型プロジェクトを任される。
「施工管理」の仕事を理解するため現場へ足を運び、働く人の声を徹底的に聞いた。現場のリアルな魅力を伝えたことが求職者の心を動かし、プロジェクトを大成功へ導く。
自分以上に自分の可能性を信じてもらえた。
「もっとできる」と思えた経験だった。
キャリアスタートでもMVPを獲得。
下山代表から、新卒紹介事業の立ち上げを任された。
「こだわってやりきる姿を見て確信した。花巻は大きな組織をまとめられる器になる。」
花巻には、この新卒事業に懸ける理由があった。
月曜日の朝、満員電車でうつむく若者たちをなんとかしたい。合わない会社に入り、数カ月、1年2年で辞めていく若者を減らしたい。
「社会人経験のない学生さんが、たくさんの選択肢から自分に合った仕事を一人で見つけるのは、簡単ではありません。だからこそ、彼らが自分らしく輝ける場所に出会えるよう背中を押したいんです。」
目指しているのは、「すべての若者が輝く社会を作ること」だ。
近年は新卒の就活でも人材紹介会社に頼る人が増えている。費用がかからず、自分に合う会社を提案してもらえる。心が折れそうな時に支えてくれるからだろう。
一方で、この業界には「オワハラ」という、学生の未来より企業側の都合を優先する問題もある。
それでもキャリアスタートは、創業時からの理念である「求職者(キャンディデイト)ファースト」を貫く。
分業制が主流の業界において、新卒事業部では1人のカウンセラーが「学生面談」と「企業営業」の二刀流にこだわる。双方を知り抜いてベストマッチングし、納得のいく未来を選んでもらうためだ。
だから、とことん寄り添う面談力には、業界トップクラスの自負がある。
「新卒紹介で、日本一になろう!」夢を掲げ走り始めたが、現実は甘くなかった。
2年目、急拡大した組織と新卒市場のタイミングがかみ合わず、2000万円の赤字。仲間は離れ、事業部は崩れ始める。リーダーとしての力不足を思い知った。苦しくて眠れずホテルに駆けこんだ日もあった。
「もう責任者を降りたほうが、みんなのためじゃないか……」
だが、そんな自分の横でメンバーは今日も学生のために全力で走り続けていた。
その姿を見た瞬間、胸に突き刺さるものがあった。
「責任者の自分が、下を向いていてどうする…」
気づけば、自分は数字ばかりを追いかけていた。
この仕事を始めた理由は、学生の人生をより良くすることだったはずだ。
「自社の都合より、求職者の人生に寄り添う」
原点に立ち返った花巻は翌朝のミーティングで問いを変えた。
「どうすれば売上が伸びるか。」ではなく、
「どうすれば、彼ら学生を幸せにできるか。」
その問いを全員で考えると、歯車が噛み合い始めた。自分が変わるとメンバーも変わり、学生の表情が変わった。事業が前へ進み始め、後から数字がついてきた。
以来、事業部のメンバーには下山代表が自分にしてくれたように、将来のキャリアを見据えたアドバイスを心掛けている。
冒頭の、孤独だった青年は言ってくれた。
「人生がこんなに変わるとは思いませんでした……花巻さんと出会えて良かったです。」「こんな言葉を言ってもらえる仕事って、なかなかない。幸せな仕事をさせてもらっています。」
この道を選んでよかったと、心から思う瞬間だ。
若者を社会の一員として送り出す。その瞬間に立ち会えることこそ、この仕事の尊さだ。一番になりたいと生きてきた男が、いま誰よりも輝いてほしいと願うのは、目の前の学生たち。
そして今、事業部の責任者として、仲間たちと目指しているのは、若手領域における、業界の売上1位ではない。
学生たちの"就職支援人数"と、彼らの"満足度"における、日本一だ。
人は本気で向き合ってくれる、たった一人との出会いで変わることがある。
花巻遼太と新卒事業部のメンバーは、今日も、誰かにとっての「その一人」になるため、面談室の扉を開ける。