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【創業ストーリー】モノづくり産業のポテンシャルを解放する世界的インフラを目指して

コンサルティングを通じて感じた、製造業における調達分野の課題

大学時代から、いつか社会に大きなインパクトを与える世界的企業をつくりたいと思っていました。
学生時代から自分で事業をやっていたのですが、学生でできることはウェブで完結することか人材関連かのどちらかがほとんどで、あまり自分がワクワクしなかった。もっと社会的課題が大きい領域で事業をしたいな、と。そこで、まずは世界中の幅広い産業における経営課題にかかわることができるマッキンゼーに入社しました。

入社当時から起業すると決めていたので3年で辞めようと思っていて、実際3年半で退職しました。3年半のうち半分以上は、日本、中国、ヨーロッパ、アメリカなどの世界中のクライアントの工場に常駐して、現場の方々と汗を流す日々。コンサルと聞くとかっこいいのですが、実は泥臭いことばかりなんです。起業してからも大切にしているのはこの「現場主義」で、現場の方々のことを常に考えながらビジネス展開をしています。

様々な産業のビジネス構造や生の経営課題を体感して、自分はどんな分野で起業するのか。色々考えた結果、最後に決断したのは製造業の領域でした。その中でも、自分がいくつもプロジェクトをリードしていた「調達」という領域です。いわゆる、仕入れですね。

調達領域って、日本国内だけでも120兆円規模と圧倒的に大きく、それなのに100年以上イノベーションが起きていない領域なんですよね。何層にも重なる下請け構造かつ、いまだに紙やFAXが主流の非効率さゆえに、日本を中心にグローバルで多くの企業が大きな課題を抱えていることを前職で痛感しました。もし、ここにテクノロジーの力を入れて解決していくことができるなら、社会的にも非常に意義があり、インパクトも大きい。そんな想いをアキ(小橋昭文: 最高技術責任者)にぶつけて、キャディを創業しました。

エンジニアが主役の会社を作りたい

アキとは、大学時代にシリコンバレーで知り合ったのですが、アキはすでにエンジニアとしての経験が豊富にあって抜群に優秀だったので、会った瞬間に「いっしょにやるなら彼だな」と直感で決めていました。

社会的価値を最大化するためには、どんな事業で、どんな展開をするべきか、ずっと2人で議論してきました。初めて会って一緒に起業するまで丸4年。これでいこうと決めた「CADDi」のアイデアは技術的なハードルも極めて高いため、やるならアキしかいないと思っていました。彼も自分自身で事業をしたいと言っていたので、会う度にお互い新しいアイデアを持ち合い、口説き落とすためにあらゆる形で4年間ラブコールをした結果、一緒に事業をスタートすることが叶いました(笑)。

アキが素晴らしいのはエンジニアとしての技術力はもちろんのこと、ビジネス感覚が非常に優れていること。エンジニアとして優秀な方はたくさんいると思いますが、それに加えて「顧客が最終的に解決したい課題は何か?」と言った、ビジネス面を技術と紐づけて考えられる人材は稀有だと思っています。
「技術とビジネスを繋げて考え、実行できる」そんなマインドを持ったエンジニアの方に多くジョインしていただきたいですし、彼らが活躍できる会社を創りたいと考えています。
そんなエンジニアこそが私たちの会社の競争力の源泉ですから。

「CADDi」に必要な2つの要素

世界を見渡しても、本質的に似たようなサービスってほとんどないんです。
それは、タイミングと自動原価計算の難しさという2つの要素によるものだと思っています。


タイミングとはどういうことかというと、この事業を行うための市場環境がやっと整ってきたということです。通常、製造業において何かのモノを販売するためには、製造に必要な各部品を設計して、それを外部に委託して生産・加工をしてもらい、それを買って(調達)、組立・製造するという工程が必要になります。市場環境が整ったというのは、この「設計」と「製造」という「調達」の前後の工程でテクノロジー化が進み、データが蓄積・活用できるようになったことを指しています。特に「設計」でいえば、ここ10年くらいで3D CAD(コンピュータによる設計支援ツール)やCAE(コンピュータにより製品の設計等を解析するツール)が多品種少量の業界にも流通。流通したことでデータが大量に蓄積されたので、初めてそのデータをテクノロジーで解析できる基盤ができたことです。データがないと、そもそも分析・解析ができませんからね。

さらにそれに加えて見積を出すには、「原価計算」のやり方がわかってないとできません。どのように製造原価を計算するのか。その計算モデルがあり、またその計算をするために必要な製品の形状データを解析するアルゴリズムがあって初めて、自動で見積が出せるようになります。

前職時代、数多くの大手企業をサポートしましたが、原価を精緻に計算して最適発注していた企業はほとんど一切ありませんでした。私は、その原価計算モデルを作る部分をコアなサービスとして2年間以上携わっていたので、それがどれほど大変かつ重要なことなのか身に染みてわかっています。また、アキは形状解析のアルゴリズムを世界に先駆けてリードしている。「原価計算モデルの構築力」と「形状解析アルゴリズムの開発力」の2つが私たちの最大の武器ですね。

目指すのは、各企業がポテンシャルを発揮できる産業構造

私たちがつくりたい世界。それは、町工場のような小規模の会社から大企業まで、自社の得意な製品分野に集中し、また付加価値の高い業務に注力することで、各企業が持つポテンシャルを最大限発揮できる世界です。

キャディを創業する前、町工場の人たちに話しを聞かせてもらうと、どの企業も見積業務に大半の時間を使っており、まともな営業活動もできていない状態でした。そもそも新規開拓の営業をしたことがないから特定顧客への依存度も高く、赤字で倒産寸前の会社も多かった。
特定分野の製品は非常に高品質で安価につくれるのに、その技術力が知られることもなく、活かせずに潰れていく会社が実際にたくさんあります。事実、町工場は、30年で半数以上が全国で倒産しています。それって、日本全体として本当にもったいないし、何よりその会社、そして従業員にとって悲しいことだなと思いました。

私たちは、町工場を「パートナー」と呼んでいます。一緒に新しい産業構造を創っていく、まさに「パートナー」だからです。「下請け」でも「業者」でもありません。パートナーとして一緒にやらせていただく会社には、受注できるかもわからない相見積に時間を費やすことなく、得意技術だけに特化してもらってしっかりと利益を取りながら、輝き続けて欲しい。発注メーカーにとっても高品質な製品を、最適な価格で、安定的に購入できる仕組みなので、設計や調達担当者も細かな製品の価格交渉や納期調整などではなく、より付加価値の高い仕事に注力できます。

目指すのは、大手メーカーを中心に何層にも連なる下請け構造ではなく、得意分野・強みをベースにフラットに取引が行われる産業構造です。今は、町工場は特定顧客への依存度も非常に高く、その顧客から言われたものは何でも作る構造ですが、本当は得意な領域に特化して、日本全国、ひいては世界中からその領域の製品を請け負った方が、発注する側も加工する側も絶対にいい。「適材適所で、各社が最も価値を発揮できる部分に集中でき、価値ある製品が世の中に出ていく」、そんな産業構造を創ることで、受注側も発注側も、大企業も中小企業も、しっかりと利益を確保して持続的に成長ができると信じています。

近い将来、キャディは世界に進出します。日本のモノづくりをまた世界に。そして、世界中で本当に最適な取引がなされるような構造を創れるように、時間はかかると思いますが、チャレンジをしていきます。そんな大きな未来像を一緒に描いていける方、心の底からお待ちしています。

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