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働き方改革のパートナー「社労士」を選ぶために、忘れないでほしいこと

まえがき

弊社メディア「バックオフィスの基礎知識」では、社会保険労務士(以下「社労士」)を紹介する連載企画「社労士の横顔」を半年前から続けています。

社労士は、労働法・社会保険諸法令に精通した国家資格者です。ここ数年注目を浴びている「働き方改革」や、労務トラブルの予防・解決、勤怠管理や給与計算などを企業が実践する際、強い味方となってくれる存在です。

社労士という存在をなんとなく知っていている人事労務担当者だとしても、複数の社労士の中から自社の要件に合った社労士を選ぶのはすごく難しい行為です。

ネットで検索して探そうと、社労士のポータルサイトにたどり着いても、各社労士の紹介ページに書いてあるのはスペックの羅列ばかり。それもだいたいみなさん同じ内容。

そんな状況を変えたくて、企業の人事労務担当者に本当に参考となる社労士情報を提供したい!と始めたのが「社労士の横顔」です。

「社労士の横顔」では、インターネット上では数少ない「社労士の人となり」がわかる情報をできるだけ多く、幅広くお届けることを心がけています。


この記事では、社労士の提供するサービス概要と、社労士の「働き方」「生活」のタイプを紹介します。

さて。まえがきが長くなりましたが、この記事では私がこれまでお会いした数十名の社労士先生の顔を思い浮かべながら、企業の人事労務担当者が社労士を選ぶ際に参考となる情報を提供します。

まず社労士の提供するサービス概要を紹介し、サービス軸で社労士を選ぶ際の参考情報を提供し、次に社労士の「働き方」「生活」のタイプを紹介し、人となり軸で社労士を選ぶ際の参考情報を提供します。

この2軸を頭にインプットいただいた後、ぜひ「社労士の横顔(社労士選びのポイント)」をご覧ください。きっと社労士インタビューを楽しく読んでいただけると思います。

社労士の提供するサービス概要について

「企業向けサービス」と「個人向けサービス」

事務所を開業している社労士が提供するサービスは、大きく「企業向け」と「個人向け」に大別できます。

ここでいう「企業」とは、自営業者を含めて人を雇用する者という意味です。「個人」とは市民生活を営む者という意味です。

多くの社労士は、企業向けサービスを主に提供していますが、近年は個人が「障害年金」「国民年金」「介護保険」等で課題を抱えることも多いので、個人の年金問題に特化した社労士も存在します。

企業向けサービスとは?

A. 社会保険・労働保険の手続き:はじめて従業員を雇用した。新しい従業員が入社した。従業員が結婚した、怪我をした、子供が生まれた、引っ越しをした、退職した。従業員のステータスが変更された場合、社会保険や労働保険に関する書類を役所に提出する必要があります。社労士はこの手続(作成・届出)を代行する事が法的に許された唯一の資格者です。企業内に専門的知識を持った人事労務担当者を置く余裕がない、人事労務担当者には別の仕事をしてほしい等の理由で社労士に依頼する企業が多いでしょう。

多くの社労士事務所は、顧問契約によりこの作成・届出の一部、もしくは全てを代行してくれます。顧問契約料については「社労士の横顔」の各社労士別ページに記載していますので参考にしてみてください。

B. 給与(賞与)計算:勤怠等の情報をもとに報酬を算出し、諸手当の付与、所得税や市民税の控除、社会保険の控除などを考慮して給与計算する業務を代行する社労士も多くいます。給与計算業務は、社労士以外でも、専門のアウトソーシング業者や、税理士事務所でも受託するところがあります。また最近では、企業担当者がクラウド型給与計算サービスを利用して計算するケースも増えてきています。

なお、企業担当者がクラウド型給与計算サービスを利用し、その計算過程(要素)が正しいかどうかのチェックを行うサービスを提供する社労士も出てきています。

C. 労働関連トラブルの解決(斡旋など):元従業員が退職後に、過去に渡って未払いの残業代を請求してトラブルになっているケースが増えています。またセクハラ・パワハラ・マタハラなどの問題も社会問題化しています。 社労士の中には「特定社会保険労務士」と呼ばれる「紛争解決手続代理業務」を行う資格を持った人たちがいます。(参考:「特定社会保険労務士」と「社会保険労務士」の違い

労務トラブルが裁判に至った場合は弁護士が扱う事案となりますが、その前段階の話し合いや斡旋は、細かな人事労務実務に理解のある社労士が得意な領域だと考えられます。

D. 就業規則関連コンサルティング(就業規則作成等):10名以上の従業員をかかえる会社は、就業規則を作成し役所に届出し、ルール運用しなければなりません。また労働関連の法律が変われば、それに合わせて就業規則を変更する必要があります。

就業規則は「会社と従業員の関係を定義」し「労使間の相互理解を深めるための重要なドキュメント」です。「働き方改革」が叫ばれる中、会社と従業員の人事労務コミュニケーションが重要度を増しています。

「なるべく隠しておきたい就業規則」ではなく「採用の武器となる<魅せる>就業規則」を作る!というくらいの姿勢を持つことが大切です。そしてその想いに応えてくれる社労士はきっといます。(参考:バックオフィスの基礎知識で「就業規則」を検索

E. 組織人事評価コンサルティング:人事戦略の策定や、人事考課・評価・管理制度システムの作成支援、運用サポート等のコンサルティングサービスを提供する社労士が増えています。この分野には社労士だけでなく人材採用支援サービスを提供する企業や、コンサルティングファームも多く参入しています。この分野が得意な社労士の中には、そういった企業やコンサルティングファームの出身者も多く存在します。

F. 助成金・補助金の申請関連コンサルティング:雇用関連の助成金や補助金がいくつか存在します。お金を受け取るには、指定された計画書や資料を作成し、運用・報告する必要があります。計画書や資料の作成、運用・報告には専門的知識が必要なものも多いですし、そもそもどんな助成金・補助金を受けられる可能性があるか独自に調査するのは大変です。多くの社労士は、顧問契約を結んでいる顧客企業に対して助成金・補助金の申請関連コンサルティングを行っていますので、相談してみると良いでしょう。

★厚生労働省の雇用関連助成金の種類(2017年8月25日現在)

  • 従業員の雇用維持を図る場合 => 雇用調整助成金
  • 離職者の円滑な労働移動を図る場合 => 労働移動支援助成金
  • 従業員を新たに雇い入れる場合 => 特定求職者雇用開発助成金、 トライアル雇用助成金、 地域雇用開発助成金、生涯現役起業支援助成金
  • 障害者等の雇用環境整備関係 => 中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金、 障害者雇用安定助成金、障害者職業能力開発助成金、障害者作業施設設置等助成金、障害者介助等助成金 、重度障害者等通勤対策助成金 、重度障害者等多数雇用事業所施設設置等助成金
  • 雇用環境の整備関係 => 職場定着支援助成金、人事評価改善等助成金、 建設労働者確保育成助成金、通年雇用助成金、 65歳超雇用推進助成金
  • 仕事と家庭の両立に取り組む場合 => 両立支援等助成金
  • キャリアアップ・人材育成関係 => キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金
  • 労働時間・賃金・健康確保・勤労者福祉関係 => 職場意識改善助成金、中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金、受動喫煙防止対策助成金、退職金共済制度に係る新規加入等掛金助成、キャリアアップ助成金


個人向けサービスとは?

A. 障害年金・遺族年金の申請:障害年金は、事故や病気などで障害を持った場合に年金を受給できる制度です。遺族年金は、死亡時に遺族へ年金が支払われる制度です。双方とも、国民年金(基礎年金)、厚生年金、共済年金に加入し保険料を収めている必要があります。受給の可否や金額は、障害等級や障害年金の種類、配偶者や子どもの有無により変動します。社労士の中には、医師との調整や申請資料の作成を代行して行う人がいます。自分で年金事務所やソーシャルワーカーと掛け合った際に、納得できない結果が出た方は相談すると良いでしょう。(参考:バックオフィスの基礎知識で「障害年金」を検索

B. 老齢年金調査・受給手続き:現在65歳以上で、国民年金(基礎年金)、厚生年金、共済年金に加入し保険料を一定期間以上収めていた場合に受給できる年金です。一般的な意味で「年金」といった場合はこの「老齢年金」を指すことが多いでしょう。

2007年頃「年金記録が宙に浮いている」、すなわち人によっては老齢年金の受給条件が正しく反映されず、規定より低い保険料しか受け取る事ができないケースが明るみに出ました。

社労士の中には、老齢年金の相談・調査を代行する者もいます。周囲の高齢者が年金の受給額などに疑問を持っている場合は、社労士がその疑問を解決してくれる可能性があることを覚えておきたいです。

C. 労働関連トラブルの解決(斡旋など):「企業向けサービス」の中で説明した内容について、個人側(←→企業側)に立ってトラブル解決する社労士もいます。裁判に至った場合は弁護士が扱う事案となりますが、その前の話し合い段階では豊富な知識・経験が個人の味方になってくれることもあると思います。


社労士の「働き方」「生活」のタイプについて

「働き方」や「生活」に深く関与するサービスを提供する社労士。自身の「働き方」や「生活」(いわゆる「ワークライフバランス」)について強い意思やこだわりを持つ方が本当に多いです。

本当?と疑う方はぜひ「社労士の横顔(社労士選びのポイント)」を読んでみて下さい。きっと納得いただけると思います。

ここでは、社労士の「働き方」と「生活」について、特徴的なタイプを紹介します。


A. 「組織化」志向の強い社労士

組織人事評価コンサルティングや、一定規模以上の企業を対象とした給与計算代行サービスを提供する社労士は、社会保険労務士法人を設立する等して組織化する傾向があります。ある社会保険労務士法人の代表者の方は「顧客企業の組織的問題を解決するにあたり、自分たち自身が組織化している事は大きなメリットだ。なぜなら顧客企業の抱える組織的問題を親身に理解できるからだ。」と話していました。

B. パラレルワーク志向の強い社労士

書籍執筆や学術研究、子育てや介護、はたまた芸能活動など、開業社労士としての業務以外にも活動範囲の広い社労士が多く存在します。安倍政権がすすめる「働き方改革」でもパラレルワーク(副業)によって国内の総労働力を増やすことの重要性が示唆されています。パラレルワーク志向の強い社労士は、自身のパラレルワーク経験を活かしつつ、社労士としての高い専門的知識をもって「働き方改革」の強いパートナーとなる可能性を秘めているのではないでしょうか。

C. 定年退職後に独立した社労士

一般企業で定年まで勤めた後、その幅広い社会経験を活かして開業する社労士も多く存在します。社労士としての専門性の他に、これまで経験した業界の専門性も持っていらっしゃいます。

自社が属する業界を経験した事がある社労士とうまく出会えた場合、様々な相談に乗ってもらえる可能性があります。

D. 弁護士・税理士事務所の中の社労士

中規模以上の弁護士事務所、税理士事務所に所属する社労士も多く存在します。士業が提供する企業向けサービスは、カウンターパートナーとしていわゆる管理部門があたる事がおおいため、管理部門向けワンストップサービスを提供するメリットが生じるためだと考えられます。

E. 司法書士、行政書士と兼任する社労士

司法書士、行政書士といった他の士業資格を併せ持った社労士もいます。社労士は「人」の専門家なので、他の資格においても「人」と関係する分野に強みのある方が資格取得する場合が多いようです。

F. その他のタイプ

まだまだいろいろなタイプの社労士がいらっしゃいますが、整理できていないのでまた随時このエントリーに追記・補足していきます m(_ _)m


『働き方改革のパートナー「社労士」を選ぶために、忘れないでほしいこと』とは?

長々と書き連ねてきましたが、まとめです。

働き方改革を企業が推進していくにあたって、自社に合った社労士をパートナーとして契約することの重要性が増しています。

企業が契約する顧問社労士は、これまでのように1者である必要性はありません。これからはニーズに合わせて、それぞれのニーズにベストな顧問社労士を複数活用していく時代に突入しようとしています。

「バックオフィスの基礎知識」では、企業の人事労務担当者が社労士を選ぶ際に参考となる情報を発信する企画「社労士の横顔」を半年前から始めており、今後も続けていきたいと考えています。

ぜひご活用ください。


おまけ

「バックオフィスの基礎知識」を提供する株式会社BECは、勤怠管理や給与計算のクラウドサービスを提供している会社です。人事労務部門の担当者や、社労士の方が事務的な作業に拘束される時間を減らし、より本質的で生産的な業務・サービスに集中できる環境を作っていきたいと考えています。

社労士の方や企業担当者の方で、今回の記事に興味を持っていただけましたら、ぜひメッセージなどいただけるとうれしいです。

あと、株式会社BECでは積極的にエンジニア採用を行っています。もし少しでも面白そうだなと思ったら、お気軽にメッセージください。

ちなみに、タイトルとカバー写真は Wantedly 森脇 健斗 さんの記事を参考にしました。削除要望の場合は、メッセージいただけると助かります。汗

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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