こんにちは、GovTech&World部の伊藤です。2020年2月7日(金)に開催された「自治体個人情報政策セミナー」に参加しましたので、レポートします。
<セミナー概要>
■開催日時・会場
2020年2月7日(金)10:20~17:00 内田洋行 東京ユビキタス協創広場CANVAS
■主催
電子自治体推進パートナーズ
■セミナーのテーマ
個人情報保護法制と自治体条例 ―パーソナルデータ利活用の推進
■講義・講師
1. 地方公共団体の個人情報保護制度の検討について
講師:個人情報保護委員会事務局 担当官
2. 〔会津若松市〕統合型GISと住民基本台帳システム連携の取組み
講師:会津若松市企画政策部秘書広聴課広報広聴グループ副主幹、総務省地域情報化アドバイザー
伊藤 文徳氏
3. パーソナルデータ/個人情報の利活用の現状と課題
講師:弁護士、宮内・水町IT法律事務所 水町 雅子氏
4. 個人情報保護法制の原則と実態
講師:情報セキュリティ大学院大学学長補佐・情報セキュリティ研究科教授 湯淺 墾道氏
■ウェブサイトはこちら:http://cloud.chiikikagaku-k.co.jp/kouza/2019/kouza9-8.html
<所感>
1. 地方公共団体の個人情報保護制度の検討について
個人情報保護についてほとんど知識がない状態で今回のセミナーに臨んだため、民間事業者、国の行政機関、独立行政法人、地方公共団体それぞれで個人情報保護に関する規定が異なることに驚きました。例えば国の行政機関や自治体が民間事業者より厳しい基準で取り組む必要があるような場合には(環境保護や情報セキュリティ等)、民間部門と公的部門で規定が異なることもあろうかと思いますが、個人情報の取扱いに民間部門と公的部門で大きく異なる部分があるというイメージが持てなかったためです。
また、次の法改正で国、独立行政法人、地方公共団体、民間事業者の個人情報保護規則を一般化したい、とのことでしたが、「条例2000個」という状況から一本化することは途方もなく大変なのではないかという印象を受けました。
そもそも国に先んじて地方公共団体が条例を整備していたため、個人情報保護法の制定時に国が統一化をためらったのではないかと想像しますが、現在は個人情報保護法が制定された2003年より更に条例の数が増えていると思料され、統一化もますます難度が上がっているのではと思わざるを得ません。
統一化するとして、規制の程度が低いところに揃えるのか、高い(厳しい)ところに揃えるのか、地方公共団体の対応をきちんとカバーできるのか、条例でプラスアルファの規則を定めることを許すのか…など、疑問が尽きません。
プラスアルファの規制については、従前厳しい条例を制定していた地方公共団体から要望として出てきそうな気がしますが、民間団体の要望である「自治体ごとに基準が違っていては困る」というその点を汲むなら、独自の条例制定を認めることは難しいのではないかと思いました。 せっかくの一本化を骨抜きにすることなく、現状の制度から移行させることは簡単ではないと思いますが、まだ具体的な検討には至っていないそうなので、公的機関の保有する情報を広く適切に活用するための動きとして見守りたいと感じました。
2.〔会津若松市〕統合型GISと住民基本台帳システム連携の取組み
発想自体はシンプルであるようにも思えますが、お話を聞けば聞くほど、先駆的で効果的な取り組みでした。
今回の講義では活用の事例をいくつかご紹介いただきましたが、生年月日や性別と連携した住民の位置情報があれば、災害のみならず、少子高齢化とそれに伴う人口減少への対応として、公的施設(学校、病院、公民館、避難所など)の再編等を考える際にも活用可能ではないでしょうか。
職員が施策を考える際に、常にこの位置情報が頭にあり、必要に応じて地域の状況を詳細に把握できるという環境は、ほかの自治体職員からみればうらやましいほどのものではないかと思います。他自治体で同様の取り組みをしているところがないのか気になりました。
もし全国でこういった取り組みが広がれば、自治体にとっても国にとっても、より効果的かつ効率的な政策を打ち出せるのではないでしょうか。自治体にとっては導入が課題になるものと思われますが、例えばマイナポータルから自宅の位置を地図上で登録してもらうなどして情報を集めるなど、国が導入を支援することも可能なのではと感じます。
3. パーソナルデータ/個人情報の利活用の現状と課題
自治体の情報利活用政策のお手伝いをするという視点での講座で、大変興味深かったです。
情報利活用施策を検討する自治体の傾向として「課題解決志向型」「他事例参考型」というパターンがつけられていましたが、両者に対してアスコエの取り組みをご説明するとしたら、当然シナリオは異なってくるだろうと思います。サービスを考える立場として、こういった視点を持っておくことは有用だと感じました。
自治体にとってどういった位置づけの施策になるのか、他の情報利活用施策につなげることができるか、といった視点で見てみることができれば良いと思います。
それにしても、現在の個人情報保護法制は個人情報の利活用を大いに妨げているのだなと改めて認識しました。各自治体で内容の異なる条例を定めていることにより、民間事業者の活動が不自由になっているだけでなく、自治体間の連携や、他自治体の取り組みを参考にすることも妨げられているため、今度の法改正では、多少時間がかかっても、制度の統一化が実現されてほしいと思います。
4. 個人情報保護法制の原則と実態
自治体における個人情報の保護及び活用について、様々な事例から現在の課題を知ることができ、また、今後自治体におけるデータの利活用が進むにつれて大きな話題になるであろうと予想される問題もご紹介いただいたため、大変興味深かったです。
災害時の個人情報の活用については災害関連法令のいずれかでむりやり整備されているとのことでしたが、どういった規定になっているのか調べてみたいです。個人情報保護法との関係性はどうなっているのでしょうか。
また、「死者の個人情報」について、死者の個人情報も保護すべきなのか、という点は、情報資産(デジタル資産)の相続等にも関わることだというお話があり、ゆくゆくは遺言書やエンディングノートにも波及することがあるのかもしれないと感じました。
講義の中で特に印象深かったのは「個人情報保護条例と情報公開条例は本来連動すべき」という点です。言われてみればそれが道理だと思いましたが、それまでは自分の中にそういう発想がまったくありませんでした。「個人情報」と聞くと「保護」が先に立ってしまい、個人情報を活用すべき、という考えがあまり確立されていないからかもしれないと感じました。
昨今のビッグデータ、AI等のトレンドと個人情報保護法制のずれをより具体的に知ることができた点も興味深かったです。さまざまな情勢を勘案して、適切に法改正がなされてほしいと改めて…。現状の法制度の中で何ができるのかも調べてみたいと思いました。