アシアルのエンジニアが2022年に注目する"5つの技術"の使いどころ|エンジニアリングで世界をちょっとよくするノート byアシアル
こんにちは、アシアル広報チームです。アシアルのメンバーが注目している5つの技術を紹介した先月。それらの技術はどんなふうに使われ、社会にどんな影響を与えているのでしょうか。深掘りしつつ、代表取締役社長・田中正裕の関心事も聞いてみました。 ...
https://note.asial.co.jp/n/n38517947c1d1
まずは、AIとは何か、という点を確認しましょう。AIは、Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)の略で、日本語で言えば人工知能となります。何を人工知能と言えるかの明確なラインや厳密な定義はありませんが、エンジニアの小椋陽太は「あいまいな入力やあいまいな判断基準に対して正しそうな答えを出す機能やプログラム」ととらえればいいのではないか、と言います。
例えば、会話。同じことを伝えるときでも、人によって違う言葉を使ったり、言い回しをしたり。これがあいまいな入力で、それに対して、より適切な応答をすることがAIの目的です。
近年になって誕生したと思われがちなAIですが、「コンピューターの創世記あたりから人工知能みたいなものの考え方は生まれていました。それをどう実装するのかが時代によって変わっていったようです」と小椋。
コンピューターの発展により大規模データの処理が可能になった現在、AIの機能・性能は各段に進歩しました。しかし、SF小説に出てくるような、あらゆる場面で勝手に情報を覚えて判断できる汎用的なAIの登場には至っていません。主流となるのは、特定の目的や状況におけるインプットに対して、アウトプットを導くものです。
小椋いわく「AIは作るというより、育てる、学習させるイメージ」だそうです。
ここからは、より理解を深めるために、AI活用の具体例を見ていきましょう。以降は、AIの中でもビジネス分野での応用例も多い機械学習、特に学習データと正解をセットで与えて学習させる“教師あり学習”と呼ばれる手法を前提にお話しします。
音声をテキストにします。声のトーンやアクセントの違いなども学習して、同音異義語や話者を判別できるようになったり、語尾や会話の途切れから句読点を自動挿入できるようになったりと進化を続けています。話題の切り替わりまで判別して自動的にパラグラフをわけてくれるようになれば、より便利になります。
例えば、色や明るさ一つを取っても、AIを使わないと、光源からの反射などを計算して色彩や明度を導き出すことになり、膨大な計算が必要になります。AIによる「こういう明るさで見えるはず」、「こういう色合いになるだろう」という推論を使えば、少ない計算量でもリアルな表現が可能です。
AIは予測にも使われます。以下は、ファミリーレストランにおけるAI導入のイメージです。売り上げや混雑具合、席に着いた時間など需要と関連しそうなデータをインプットし、ニーズを予測します。
ほかにも、AIの利用シーンは、チャットボット、製造工場での不良品検知、将棋や囲碁など多岐に渡ります。膨大な計算が必要となるもの、特に、これまで人間がカンや経験で判断してきたものは、AIが代替できる可能性があります。
先ほどのファミリーレストランの例で言えば、これまで需要予測を現場の人間が経験則で行っていた場合、AIがそれを代替できるのです。
データが膨大にあり、インプットとアウトプットの関係を大量に学習させられる場合、AI導入は課題解決策の一つの候補になります。ただし、「方程式的に、この入力に対してはこの答えとはっきりしているものは一般的なシステムを使えばいい」と言う小椋。その小椋の言葉を借りて一般的なシステムとAIとの違いを見ていきます。
「一般的なシステムでは、入力値はこの形、この範囲でなければならないと決まっています。それに対して、AIは、あいまいな入力値に対しても何かしら判断して正しそうな答えを出せるようにすることがコンセプト。それが開発時の違いにもなります」
一般的なシステムもAIも、要件やそれを使って何をしたいのかが明確になっていなければ、開発はうまくいきません。その点に関しては、どちらも同じ。また、リリース時点で、すべてのパターンを網羅できていたり、完全に使いやすいシステムが完成しているかといえば、必ずしもそうではないことのほうが多く、リリース後に改善をしていく必要があるのも同じです。
一方、AI開発特有の性質としては、研究的なアプローチになりがちという点が挙げられます。なぜなら、「あらかじめ正しいとわかっているロジックを組み込むわけではないから」だと小椋は言います。どんな答えが出てくるか、やってみなければわからない中で開発を進めなければならず、必要な期間や費用を正確に見積もるのは大変難しいものになります。
さらに、AIには、完成の明確なラインもありません。そのため、「例えば、AIのアウトプットに正答率が出せるときは、7割に届けばいったん完成としてリリースするというような判断が必要になったりもします。答えが正しくなかったときのリスクとAIを使うメリットのバランスも考えながら、完成と見なせるラインを設定しなければなりません。要は、正しくない答えが出ることも前提として作っていかなければいけないところがあるということです」。
加えて、AIはリリース後にも、利用者がそれを使い続けることでさらに学習が進み、アウトプットが変化していきます。リリースまでに考慮していなかったパターンが表れてこないとは限らないため、AIのモデルの改善や、学習がおかしな方向に進んでしまわないようインプットするデータに禁止事項を設けるなどのメンテナンスも必要になります。
さて、AI活用の具体例についてのお話の中で、“教師あり学習”という言葉が出てきました。教師あり学習には、既存のインプットとアウトプットの組み合わせである“教師データ”が必要です。また、インプットとアウトプットの関係を定式化したものを“モデル”といいます。
AI開発は、大量の教師データをもとに、新規のインプットに対しても、より正しいアウトプットができるようモデルを学習させていく道のりです。
教師データには、画像やテキスト、数値、音声などが使われますが、「最終的にはデジタルでデータとして扱えるものであれば、なんでもいいということになるんだと思います」と小椋は言います。
そこで重要になるのが、AIにどんなアウトプットをしてほしいのか明確にしておくこと。
「求めるものが明確でないと、何を基準に教師データを選んで、何に向けて学習していけばいいかがわからない状態になるので、人間がちゃんと定義してあげることが大切です」
理想とするアウトプットがあってはじめて、教師データが決まります。人間がその判断を下すためにはどういう経験や材料が必要なのか。その材料が教師データです。でも、最初に用意した教師データだけで求めるアウトプットが得られるとは限りません。
例えば、認識していなかったけれども、実は判断する際に利用していた情報があったり、無駄なデータが教師データの中に存在していて、それがノイズになってAIの判断を間違わせたり。そういったことも発生します。それらを推測しながら、AIのモデルを構築していきます。
教師データの選定には人間の気づきも重要です。
例えば、具体例で挙げたファミリーレストランの需要予測を行うAI。売り上げ、混雑具合、着席時間だけでは予測の精度が上がらなかったとき、天候や気温も需要には関係がありそうだと気づけるか。AIがよりよく学習するために必要なデータに気づけるのは人間なのです。
天候や気温といった要素に気づけるのは、結局のところ人間の“ピンとくる能力”。ピンとくる能力は、AIのサポートにもなります。AIを活用するためにピンとくる能力を磨く。そんな時代になってくるかもしれません。
ここまでをふまえ、AI導入を考えるにあたって理解しておくべきは、下記の点です。
代表取締役・田中正裕は、2月に公開したnoteの記事でAIについて、「自分たちが置かれている状況とテクノロジーの間に小さいけれど確かなギャップがまだある。それを、AIを使って埋めていくってことを、アシアルとしては今年やっていきたいと思っています」と話していました。そして、「もうすでに研究開発を始めていて、絶賛仕込み中です」とも。
アシアルでは、すでに世の中にあるモデルをそのまま使うだけでなく、利用シーンに合わせた最適なソリューションを提供するため、周辺技術も含めた幅広いAI技術の研究を進めています。さらに、これまでに培ってきた開発力と統合して、実地で使えるAIシステムを練り上げられるのもアシアルの強み。
そう遠くないうちに自分たちの課題を解決してくれるAIと働けると思うと、今から楽しみです。