第1回アプリズム ファミリーデー、参加者のみなさんと。2026年7月25日、大阪オフィスにて
技術を、次の世代へ手渡す日
「家族に、自分の働いている会社を見てもらいたい」
きっかけは、社内から上がったこの一言でした。
私たちアプリズムは、バスの乗降客をAIカメラで計測するシステムや、厩舎の馬の異状を映像から検知するプロダクトなど、AIを社会の現場に実装する仕事をしています。ただ、それを家族に説明するのは案外むずかしい。「AIの会社で働いている」までは伝わっても、実際に何を作っているのかはなかなか伝わりません。
ならば、見てもらう場を作ろう。
そうして2026年7月25日、第1回「アプリズム ファミリーデー」を開催しました。
ただ、準備を進めるうちに、この日の意味は「見てもらう」だけではないと考えるようになりました。人手不足の現場を機械で支え、勘と経験に頼っていた判断をデータで裏づける——私たちが取り組んでいる課題は、どれも私たちの世代で終わりません。バスの運転手不足も、一次産業の担い手不足も、その続きを引き受けるのは次の世代です。技術は、受け渡されなければ社会に残らない。
だから当日は、社員の家族を招き、自分たちが作っているAIを子供たちに直接触ってもらう一日にしました。言ってしまえば、タスキを渡す練習のような日です。
- 参加ご家族:9世帯
- 参加人数:27名(うち子供14名)
- AI体験ブース:5つ
- 有志による準備期間:約2.5ヶ月
「見せる」のではなく「触らせる」と決めた
受付を済ませた家族が続々と集まる。この日のオフィスは、体験の場になった
企画の最初に決めたのは、パネル展示や動画上映はやらない、ということでした。
子供にとって、説明された技術は記憶に残りません。自分の手で動かして、思った通りにならなくて、もう一度やってみて、できた——その一連だけが残る。だから5つのブースはすべて、子供が自分で操作するものにしました。
🚌 バス乗降AI体験(B-RIO)
2台のカメラの前を歩くと、AIが「さっきの人と同じ人だ」と見分ける。実際に大阪シティバスで動いているシステムと同じ仕組み
🐴 お馬さんアノテーション体験(aiba)
馬の写真に印をつけていく。AIは勝手に賢くなるのではなく、誰かが教えているのだと体で知る作業
🔍 AI物体認識デモ
「dog」と入力すると、カメラが映したものの中から犬を探し出す
📷 HSIカメラ体験
人の目には見えない光の情報を捉えるカメラ。造花と本物の植物を、機械はどう見分けるのか
🎨 AIおえかきゲーム
お題の絵を描いて、AIに当ててもらう。伝わる絵とは何かを考えることになる
キャプション:AIおえかきゲーム。描いた絵をAIが当てられるか
アノテーション体験。この日は子供が「AIに教える」側にまわった
造花と本物の観葉植物。カメラは見分けられるのか——大人のほうが真剣になる場面も
説明する社員のほうが、圧倒されていた
当日、いちばん想定外だったのは子供たちの吸収の速さでした。
「わー、すごい!」
「なんで?なんでー?」
大人が「AIって最近こういうことができてね……」と前置きを始める前に、子供たちの好奇心がそれを追い越していく。説明する側の社員が圧倒されている場面が、何度もありました。
技術を人に伝えるとき、いちばん手強い相手は同業の専門家ではなく、遠慮なく「なんで?」と聞いてくる子供なのかもしれません。専門用語をひとつも使わずに、自分の仕事の価値を説明できるか。あの日、試されていたのは私たちのほうでした。
全ブースを制覇した子供たちに「AIマスター認定証」を授与
全ブースを回るとスタンプが集まり、最後に「AIマスター認定証」を授与しました。
この一枚が、その子の進路を決めるとは思っていません。ただ、「AIって、大人が難しそうに話すものではなく、自分が触って動かせるものだ」という感触が残ってくれたら十分です。10年後にその子がどんな仕事を選ぶとしても、その感触は効いてくるはずです。
もしいつか、履歴書の資格欄に「AIマスター(アプリズム認定)」と書いてくれる子が現れたら——その時はぜひ、一次面接は免除でお願いします。
渡すために、自分たちで作った
企画がスタートしたのは5月。有志の社員が集まり、約2ヶ月半かけてコンテンツを作り上げました。
特筆したいのは、ブースのアプリをすべて自社で開発したことです。B-RIOのデモは、業務で使っているODマッチングアプリに子供向けのUIとマスコットを足した特別版。おえかきゲームも、馬のアノテーション体験も、社内のエンジニアが通常業務の合間にゼロから組み上げました。
運営そのものもツールを自作しています。ブースの進捗、参加者名簿、予算、備品、当日の進行表、アンケートまでを1つのWebダッシュボードにまとめ、実行委員全員が同じURLで共有する。Excelの往復とチャットでの数字確認が、ほぼ消えました。
「必要なものは、まず作ってみる」。これはファミリーデーに限った話ではなく、私たちの日常の進め方そのままです。社内の業務ツールも、顧客向けのプロトタイプも、だいたいこの順番で生まれています。
そして今回のコードとノウハウは、すべて社内に残しました。第2回の実行委員は、ゼロから作り直す必要がありません。これもまた、小さなタスキ渡しです。
いただいた声と、受け取った宿題
イベント後のアンケートでは、満足度は5点満点で平均4.5。
「子供はおえかきが特に楽しかったようです」
「各ブースで、終わったら何かもらえるのはとても良かったと思います」
「本当にありがとうございました! 子供と良い思い出ができました。来年も是非開催できればと思います!」
一方で、こんな指摘もありました。
「B-RIOは、紹介動画などを流した後に実験する流れの方が良いかもしれません。実際に設置されている様子がわかる画像もあると、アプリズムをもっと身近に感じてくれると思います」
これは正直、痛いところを突かれました。「どう動くか」は伝えられたけれど、「それが社会のどこで、誰のために動いているのか」への橋渡しが弱かった。技術を次に渡すというのは、仕組みだけでなく、それが誰の役に立っているかまで含めて渡すことのはずです。第2回への最大の宿題として受け取りました。
もうひとつ、こんな声もありました。
「平日の親が働いている時の開催、会議のオブザーバーで参加なども良いのかなと思いました」
働いている姿そのものを見せてほしい、という提案です。次はもう一歩、踏み込めるかもしれません。
閉会。認定証とおみやげを手に、記念撮影
技術を、閉じないという選択
閉会後、ある社員の子供がこう言ったそうです。
「うちの親、意外とすごい会社で働いてるやん」
この一言のために2ヶ月半を使ったと言われれば、その通りかもしれません。ただ私たちは、これを福利厚生のイベントとは考えていません。
研究室や開発現場の中だけで完結する技術は、その世代とともに終わります。社会に実装するというのは、使う人に渡し、次に引き継ぐ人にも渡すところまでを含みます。顧客の現場に届けることと、地域の子供たちに触れてもらうことは、私たちの中では地続きです。
アプリズムは、AIを研究室の中ではなく、バスの車内や馬の厩舎、工場の現場に届ける仕事をしています。そして、その技術を自分たちのところで止めずに、次へ渡していきたいと考えています。
技術が好きで、それを誰かに伝えるところまでやりたい人には、面白い環境だと思います。子供に「なんで?」と聞かれて、きちんと答えられるようになりたい方も歓迎です。
第2回も、乞うご期待——。
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