福田 芽森(ふくだ めもり) / 臨床開発担当 医師
東京女子医科大学卒業後、独立行政法人国立病院機構東京医療センターを経て慶應義塾大学循環器内科に勤務。 2019年2月よりアイリス株式会社に入社。医師視点で開発・研究に従事。循環器内科専門医、日本循環器学会広報大使。 日本医師会認定産業医。医療ライター(Yahoo!、bouncy等)。レジリエンストレーニング講師。
特技は、魅力を見つけること
誰かや何かの魅力・いいところにすぐに気づくのが、誰よりも得意。いいところに気づくたびに好きなものが増えていき、趣味も仕事も幅が広がっていっています。
ロジカルなものも好きだけど、感性も大切にしています。アートや自然など五感を使うものも好き。人でも生き物でもモノでも、あらゆるものを大事にしたい。愛を持って生きていきたい(笑)。
それから魅力を見つけたらそのよさを誰かに伝えたい。日本循環器学会の広報部員やYahoo!医療ライターなどの医療情報を広める活動をしているのは、日々の診療の中で情報が伝わっていないために起こる状況を改善させたいという想いがベースですが、純粋にいい情報をより多くの人に広めたいという気持ちもあります。また、誰かのいいところに気付いたらその人や周りの人に伝えて、それでその人が一段と輝くと最高に嬉しくなります。
魅力をポストする #admire チャンネルが生まれた背景
アイリスのSlackには、メンバーのいいところを褒めあったり感謝を伝えあったりする #admire というチャンネルがあります。誰かが書き込むとほかの誰かがスタンプで同意するなど、ゆるくコミュニケーションを取っていて、アイリス社内でも人気のチャンネルです。
#admireができた時の最初のポスト。
ある時インターン生の一人がゴミ箱にペットボトルを捨てようとしていて、音を立てないようにちょっと低めの高さからそっと入れていたんですね。それをたまたま見ていたのは自分だけだったのですが、すごく繊細で丁寧な人だなぁというのを、もっとみんなにも伝えたくて。それでこのチャンネルは誕生しました。
#admire は、褒められた人も嬉しい、褒めた人も嬉しい、それを見ている人も嬉しいという場所。それからメンバーがアイリスの好きなところに #admire を挙げているのを見ると、自分が褒められたような、密かに「よっしゃ!」という気持ちになっています(笑)。みんなのいいところや背景を知ることで、副次的に仕事が楽しくなり効率・生産性が上がるといいな・・・上がらなくてもいいなとも思っています。
どの診療科も魅力的に思えた医学部時代
診療科を決める頃は、「魅力を見つける」という特技のせいで、どの科を見てもいいなと思ってしまいました。決めきれずあみだくじを作ってみたことも(笑)。特に心臓に惹かれました。心臓ってかっこいいんですよ。複数の異なる検査方法で検査した時の結果が論理的に合っているということがよくあって、シンプルでロジカル。さらに心臓は色々な要素を持つ臓器で、筋肉もあるし電気も通すし血管もあり、ホルモンも出します。それぞれの要素が個々人により違うため、シンプルな臓器ですが掛け算で複雑になり無限のパターンになるんです。
でも、心臓を診る循環器内科は、常に生死と関わるタフな科です。なかなか踏み切れずにいたところ、尊敬する先輩女医から「気軽には勧められない科だけど芽森さんなら勧めたい」と言ってもらって、勇気が出ました。迷った時に作ったあみだくじも循環器内科と出て嬉しい自分がいて、背中を押されました。
実際に医師になって、医師は人のためになることをして人から感謝されるとてもいい職業だなと感じます。命と向き合うことにキツイと感じた時期もあります。亡くなる患者さんに「先生に最期を診てもらえてよかった」と言ってもらったり、救えなかった患者さんを思ってどうにかできなかったのかと考えたり、循環器内科は日々がドラマの繰り返し。常に200%以上努力して200%以上の自分を出せないと、自分が医者をする資格はないと思ったこともありました。
でも、今は経験も積んで、とにかく誠実に地道にやれることをやるしかない、と思えるようになりました。
その想いでやりたいことを続けてきた結果、さらに活動の幅が広がるようになりました。
いろんな引き出しを持つということ
現在、月曜は慶應義塾大学病院の心エコー室で共同研究員をし、火曜・水曜・木曜はアイリスの社員、金曜は6つの事業所で産業医を務め、週末は心臓専門病院にて循環器内科医として当直をする、という生活を送っています。
研究者・会社員・産業医・臨床医・・・いろいろとやっていますが、すべて「幸福」と「健康」というテーマで繋がっています。
心エコー室で研究するのは、循環器内科の中でも特に超音波が好きだから。超音波は侵襲性(患者の身体的負担)が低いのに動画でリアルタイムにさまざまな情報を得ることができます。アイリスは、医療機器メーカーとしての側面やAIスタートアップとしての側面などいろんな特徴がありますが、根本には代表である沖山の「人を幸せにしたい」という考えがありそこに共感してジョインしました。もちろん臨床医がいないと医療は成り立たないので自分自身も臨床医を続けたい。産業医を始めたのも、循環器内科医であることがきっかけでした。病院の中で診療をしていると、病気に既になってしまった方としかほぼ接さないのですが、それだと心臓病は手遅れなこともあるので歯痒さを感じていました。また、心臓はストレスとも関連が強い臓器なので、過重労働やストレスについてもなんとかしたいと思っていました。この2つの理由から、働いている世代の方々にもアプローチしたいと思い、産業医を始めました。
このほか医療情報を広める活動や「死をポジティブに考えるワークショップの主催」など、さまざまな形で医療に関わっています。どういうふうに死にたいかを考えることは、どういうふうに生きたいかを考えることにつながる。やはり「幸福」と「健康」というテーマに紐づいています。病院の中だけが医療ではないという思いもずっとありました。衛生環境、法律、スポーツなど、医療は人生のすべてに関わっています。
医師として医療機器の開発に携わる
アイリスでは医師として、臨床研究・治験における医療機関への導入支援を中村らと行ったり、匠の技を持つ医師から技術を教わりながらプロダクト開発に反映できるようにしたりする役割を担っています。医療機器を開発する上では、ハードウェアエンジニアやAIエンジニアとの連携が欠かせません。医師とハードウェアエンジニアやAIエンジニアのように、異なる分野の専門家同士がうまく混ざり合うためには、 お互いの考えを取り込みながら提案するのが大切だと考えています。それぞれの分野の専門的なことに関して、どちらも本家にはかなわない。でも、相手がどう考えてどう作業しているか背景を知ることはできます。知る努力を怠って情報や意見だけを出していても、いいアイデアや施策は出てこないんですよね。
ハードウェアの開発に際しては、医師の動作・所作や心理状況などを踏まえて設計・開発できるよう医師目線での意見をハードウェアエンジニアに伝えたり、開発中の機器を手に取ってみて模擬診察のようなことをしながら手の感覚からパーツの角度を細かく調整したりすることもあります。AIエンジニアとも、病気の特徴を踏まえてどうデータを扱うのがよいか・AIにどう教えたらいいかなどを一緒に考えることもあります。アイリスには、詳しくない分野についても意見を言いやすい空気があり「自分はこの分野では素人だけど意見していいのかな」と不安になるようなことがないので、何かヒントになればと「こういうカメラを作れないか」「こういう学習をAIにさせられないか」と意見することができます。
これからも「幸福」と「健康」をテーマに
自分自身の人生のテーマとして、今後も医療を通して人々の「幸福」と「健康」に寄与できるような活動をしていきたいです。アイリスの「人を幸せにする」という根幹はずっと変わらないでいてほしいし、変わらないでいられる企業なんじゃないかなと思っています。
#admireも、Slackチャンネルという形ではなくてもいいですが、そういう文化自体はずっと残っていってほしいなと思います。