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「平均単価を5倍に」消費者起点のマーケティングの価値向上をはかるバイデンハウスの戦略に迫る

事業を成長させるのに欠かせないながらも、日本ではその本当の価値が認められていない「マーケティングリサーチ」。“広告”や“SNS運用”などプロモーションにお金を払う企業は多いですが、“消費者理解”を軸にした“マーケティング戦略立案”に価値を感じ、対価を払う企業が少ないのが現状です。

そんな消費者理解を起点としたマーケティングを日本により浸透させることが、私たちバイデンハウスのミッション。本来なら事業成長の鍵となる消費者理解、マーケティングリサーチが、低単価で付加価値の低い、ただの調査に留まっている現状を変えたいと思っています。

今回は代表の石崎健人にインタビューを実施し、現在の日本におけるマーケティングリサーチの立ち位置と、バイデンハウスの事業戦略について語ってもらいました。

―まずは石崎さんがバイデンハウスにジョインした経緯を聞かせてください。

私がバイデンハウスを知ったのは、博報堂と共同で運営していた「若者研究所」がきっかけです。若者研究所は、広告代理店業務の一環として、学生を集めてインタビューをしたりワークショップを行う団体でした。

私は高校時代にその存在を知り、また友人が既に入ったこともあり、大学生になって研究所に入所したのです。そんな経緯もあり、新卒で総合コンサルティングファームに就職してからもバイデンハウスの仕事を手伝っていました。

―どのような手伝いをしていたのでしょうか。

海外クライアントとの通訳などです。当時はオーナーがシンガポールに移住し、現地にオフィスを構えたタイミング。日本に進出したい海外企業から日本国内の市場調査を受託していたのですが、オーナーはあまり英語が得意ではなかったため、私が代わりにコミュニケーションを取っていました。

そのときのバイデンハウスのクライアントは自動車メーカーで、担当者はインド人の方でした。自動車業界の知識、マーケティングの理解があって、インド英語ができる人が必要になった際に、コンサルファームの仕事で自動車業界を担当していて、インドのエンジニアと話す機会の多かった私に声が掛かったのです。

会社を立て直すため、コンサルのキャリアを捨てて正式にジョイン

―どのようなきっかけで本格的にジョインしたのでしょう。

大きな理由は2つあり、一つは会社が傾いてきたから立て直してくれないかと頼まれたこと。もともと「いずれは起業を」と考えていたので、この話はチャンスだと考えました。起業してみたいと心のどこかで思っていたものの、人脈もアイデアもないので迷っていましたが、この会社を好転させて、その後新規事業をすればいいと思ったのです。

もう一つの理由は、マーケティング戦略に興味があったから。当時の私は2社目のコンサルティングファームに転職した直後ではありましたが、マーケティングのテーマのプロジェクトはあまり多くありませんでした。バイデンハウスで自分でマーケティング戦略のプロジェクトを組成して自分でやった方が楽しめる、と思えました。

―コンサルタントのキャリアを捨てることに抵抗はありませんでしたか。

むしろ「チャレンジをするなら今しかない」と思っていました。コンサルタントは給料がどんどん上がっていき、30歳をすぎると、同等の給与水準ではキャリアの選択肢は同業界しかなくなります。それも、大手のコンサルティングファームの場合、どこに行っても給料が下がるため身動きがとりづらくなるのです。

さらに、30歳をすぎて結婚して子供がいたりしたら、思うようにチャレンジができないかもしれません。そのため、会社を出てチャレンジするなら20代の今しかないと思ったのです。また、仮に経営に失敗してどうしようもなくなったとしても、その経験を活かして大手のコンサルタントに戻れる自信があったので抵抗感は全くありませんでしたね。

―最初から社長としてジョインしたのでしょうか。

最初は「会社を立て直してほしい」と相談を受けましたが、その条件として「社長だったら」と逆オファーを出したのです。社長の権限があったほうができることも増えますし、どうせやるなら権限も責任も全て背負いたいと思っていました。

黒字体質へ改善するために分析した「強み・弱み」とは

―社長に就任してからの様子を聞かせてください。

まずは赤字体質を改善するため、バイデンハウスの競争環境を分析しました。具体的には既存クライアント20人ほどへのエキスパート・インタビュー、およびマーケターコミュニティの出入りによるエスノグラフィ調査。そこでわかったことはバイデンハウスのサービスの質は、実は高いのだ、ということ。高品質のサービス提供していたことの証左に、営業をせずともリピートと紹介で案件が入ってきていたのです。

皮肉にも、その強みの裏返しが「営業力の弱さ」でもありました。コロナ禍になって、グループインタビューやデプスインタビューのような対面で行うリサーチを伴う案件が激減。それまでのように案件が入ってこなくなった際に、アウトバウンドで案件を獲得しにいく力がなかったのです。これは第一の重要な発見でした。逆に言えば、コロナ禍が終わればある程度事業回復の見込みがあること、他社と同様に営業さえすれば黒字にできる見込みがあるからです。

論点で言うと、「バイデンハウスのサービスは競争優位性があるか?」「営業機能を持てば、既存顧客を取り戻せるか?」です。答えはどちらもYES。その発見をもとに新たな戦略を練り始めました。

―高品質なサービスとは、具体的にどのようなサービスなのでしょうか。

調査で得たデータからクライアントが意思決定できるレベルにまで研ぎ澄まされた意味合い「示唆」を提供することです。私はそれを「クライアントの意思決定支援」と呼んでいます。一般的に、マーケティングリサーチ会社は「事実」を提示するのが本業で、そこから踏み込んだ解釈を示唆することはできていません。少なくとも、私の目から見てクライアントが「示唆」と呼べるようなレベルには至っていませんでした。それは業界の慣習であると同時に、事業や戦略にまで踏み込んで言及できるリサーチャーが少ないのが要因だと思います。

つまり、一般的なマーケティングリサーチャーは、消費者など顧客の解像度=消費者理解度が非常に高い一方で、それをビジネス的に解釈することが得意でないのです。他方で、バイデンハウスは「データから読み取れるその事実はクライアントにとってどのような意味合いがあるのか?それは重要な発見なのか?なぜ重要と言えるのか?」といった業界や市場の構造的な理解から、クライアントに対する示唆の提供まで、踏み込んだ提言をしていました。もしも、マーケティングリサーチを軸に、さらにビジネス的な議論ができるサービスを作れたら「マーケティングコンサル」として新しい市場を開拓できると思ったのです。

―他社よりも踏み込んだサービスを、他社と同じ価格で提供していると負荷が増えそうですね。

その通りです。「なぜそのような質の高いサービスを競合他社より安く提供していたのか?」という背景を分析すると、オーナーの「いいサービスを安く」というポリシーから生まれているものだとわかりました。その考え自体は素晴らしいです。一方で、サービス単価を下げると、人件費を抑圧することと同義です。つまり、コンサルタントの給料を上げることができないボトルネックになります。高くサービスを販売することに消極的になると、実は様々な問題が起きます。例えば、本来なら月1個のプロジェクトで自分たちの給料を賄えるところを、安売りすることでプロジェクトを2つこなさなければいけなくなり、労働時間が不健全になります。クライアントに対する提供価値の質も下がります。

そこで、次に行ったのはプライシングの変更=値上げです。それまでの価格の1.5倍にしました。当然、オーナーは抵抗感を示していましたが、値上げをしてもそれ以上に高品質のサービスを提供することで納得してもらいました。(これはプライシングのプロジェクトにてよく見かける光景ですが、値上げというのは消費者が反発するのではなく、まず先にクライアントが拒否感を示す場合が多いです)これで、案件の掛け持ちも減り、1つ1つのプロジェクトへの提供価値もより上がりました。

おまけとして扱われてきた“マーケティングコンサル”

―マーケティングコンサルとして新しい市場で戦うという話ですが、これまでマーケティングコンサルの市場はなかったのでしょうか?

実は日本には大手のマーケティングコンサル会社はありません。小規模な会社はあっても、誰もが知っているような大手企業が存在しないのが現状です。なぜなら、広告代理店が広告という“制作物”で収益をあげるために、”戦略立案”はその付帯サービスとして無償で提供しているからです。

―“制作物”のおまけとして“マーケティングコンサルティング”が提供されているのですね。

そうです。広告代理店という業態の本質は言葉の通り“仲介業”、”代理業”で、実際にクリエイティブを作っているのは制作会社。それも有名な制作会社は複数の広告代理店と繋がりがあるため、理論上どの広告代理店と契約しても同じ制作会社に発注ができてしまいます。これでは提供価値での差別化が困難になり、価格競争に陥ります。そのため、競合との差別化を図るため”クリエイティブ・ディレクション”や“コンサルティング”を付帯サービスとして無料で提供するのです。旧来はこのコンサルティングのサービスは無料で提供されていましたが、近年はこの部分をマネタイズしようとする広告代理店やブティックファームも現れ始めました。これまでおまけとして提供されてきた“マーケティングコンサル”は市場原理に従い、有料化の潮流が見え始めています。

私たちもその潮流を意識していて、当社のチャレンジは、マーケティングコンサルに価値を感じてもらい、職業の地位を上げることです。

「平均単価が5倍に」マーケティングの価値を上げる戦略とは

―どのようにしてマーケティングコンサルの地位を上げていくのか聞かせてください。

一番大事だと思っているのは、まず手始めに案件の単価を引き上げることです。矛盾している様ですが、実はこれが一番大事です。マーケティングコンサルティングと一口に言っても、その意味するところは広くSNSの運用からSEO対策、チラシの制作まで様々で“マーケティングコンサルタント”を謳っている事業者も増えています。

一方で、その質はマチマチでまさに玉石混交。そのような市場ではサービスの質が安定しないため、当該市場の人材の単価は下がる傾向があります。単価が下がっていくと、相関して報酬も下がるため業界に優秀な人が入ってきません。まずは案件単価を上げることで、マーケティング業界・職種を優秀な人材が入りたいと思えるような環境にすることが重要だと思っています。

―顧客単価を上げることで優秀な人が増えれば、サービスの質も高まるということですね。

優秀な人が増えることはサービスの質に直結します。単価を上げる目的には、先ほども話したように1人あたりの担当案件を減らすこともあります。単価が低いと1人で何件も案件をこなさなければならず、結果的に案件一つひとつのアウトプットの質が下がってしまいます。

類似サービスを提供しているマーケティング業界の方に話を聞くと、同時に3~5の案件を兼任するのは当たり前で、10件もの案件を兼任している方もいました。その状態でいいサービスを提供できるとは私は到底思えません。

単価を上げることができれば、優秀な人材が、一つの案件に集中できるようになるため、より質の高いサービスを提供できるようになるのです。

―単価を上げることで営業の難易度が高まると思うのですが。

価格にふさわしい価値が提供できれば、営業は決して難しくはありません。実は先ほど1.5倍の値上げをしたと言いましたが、最終的に平均単価が5倍にも上がっているのがその証拠です。参画当初は赤字だった会社の業績も2年でV字回復させました。これが私のマーケティング戦略の実行結果です。この経験すらも弊社の知見として強みにし、クライアントのインパクトを重視して実績を作っていきたいと思っています。

実際に価格が高くてもそれ相応のサービスに価値を感じてくれるクライアントは意外といます。まずはそのようなクライアント様とともに実績を出していきたいと思っています。

―最後に、どんな人と一緒に働きたいか聞かせてください。

マーケティング戦略立案というコンサルティングサービスをゼロから作っていきたいという、腕に覚えのある方と働きたいですね。一般的なコンサルティングファームも質を安定させるためにパッケージ化し、本当の意味で顧客ごとにサービスをカスタマイズするようなプロジェクトは本当に減りました。そのような環境では、優秀な人ほど“作業”に感じて物足りなさを感じてしまうものです。私達がやろうとしていることは、クライアントごとにゼロからマーケティング戦略を立案すること。そしてそれを価値あるサービスとして啓蒙し、名前のついた市場を作ること。後者ですら、私たちにとってはマーケティング・ブランディング行為なのです。これらには高いスキルが求められるため、誰でもできる仕事ではありません。その分、案件の単価も高くなりますし、自分の報酬にも反映されていきます。自分のスキルを思う存分発揮したいと思っている方は、ぜひ話を聞きに来てください。

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