ー まず、ツナグバが展開している事業について教えてください。
ツナグバは20代に特化した人材紹介サービスを提供しています。月間登録者数は1万人を超えており、取り扱い求人数も累計で6万を超えました。事務系から営業、エンジニアなど特定の職種にこだわらないからこそ、求職者・企業のニーズに合わせた提案が可能です。また、中でも、労働力不足がより深刻化すると言われている業界への転職支援にはとくに注力しています。2021年から3期連続で増収を実現しており、今後も200%超の成長を目指して体制強化を進めています。
ー 事業立ち上げの背景を教えてください。
私たちツナグバが目指しているのは「キャリア創出型エージェント」です。人材業界には大小さまざまな会社がありますが、若手ノンデスク市場を中心に、エージェントによる転職支援はこれまで手厚いとはいえず、フリーペーパーなどエージェントが介入しないサービスが多い傾向がありました。今後の日本において若手の働き手が少なくなってきている現状を踏まえても、私たちは20代こそしっかりキャリアアドバイザーが面談し、キャリアを共につくっていく必要性が高いと感じています。20代求職者は企業側と比較して情報非対称性が高く、キャリア形成について迷走しがちだと思います。また、企業側も業界や職種未経験の若手人材に対して、数回の面接で判断せざるを得ないため「ポテンシャルはあるが要領を得ていない」という理由で採用を見送らざるを得ないなど、双方ミスマッチを起こしていました。
20代の若手求職者のキャリアをともにつくることで、法人からも求職者からも感謝される。「社会を良くしている」という手触り感もある。これが私が20代向けの人材事業を選んだ理由であり、ツナグバ創業の背景です。社会的に価値があり、人から感謝される仕事だと日々感じています。
ツナグバはパーパスに「VUCA時代で働く一人一人の価値を創造し、一人一人が輝く社会を建設する」を掲げています。変化が激しい世の中だからこそ、若い人材の可能性は無限大だと考えています。自分の将来に希望を持つことができる、一人ひとりが輝ける。そんな社会を作り出すことが私たちの使命です。
ー 20代のキャリア市場はどういう状況なのでしょうか。
20代の転職市場は年々拡大を続けています。リクルートキャリアによると、2009〜2013年の平均を1とした場合、2018年時点ですでに2.15倍になっています。これは20代前半だけに絞るとさらに顕著で、その3.82倍にも上ります。
すべての年代で転職はもう当たり前の世の中になっていますが、20代は特にその傾向が強いと言えるでしょう。新社会人の転職サイト登録者数は2023年時点で10年前と比べて30倍になっており、若手人材ほど「ひとつの会社でずっと働く」という考え方は持っていない傾向にあります。
さらに日本全体を見ると、深刻化する少子高齢化の影響で「働き手不足」が大きな問題になっています。2025年度からこの労働需給バランスは加速度的に崩れていき、2040年には1,000万人もの労働力不足に陥ると予測されています。
一見求職者に有利な売り手市場に見えますが、その一方で、希望する雇用形態や業種に就職できずに明るい将来を描けない若者も増えているのが現実です。また、近年よく聞かれるリスキリングも、すでに専門性や社会経験の多い層が対象になっており、なかなか若年層が自分ごととしてとらえられていないという問題があります。
こうした社会課題を解決することで、企業も人材不足を解消でき、個人も自分の将来に希望を持てる社会を実現できると信じています。
ー 人材業界には多くの企業が存在しますが、ツナグバの強みはなんでしょうか。
ツナグバの一番の強みは「面談力」です。「どこよりも求職者に深く関わるエージェント」として、キャリアアドバイザーは目先の転職ではなく、求職者の将来の夢やライフスタイル、性格などに深く入り込むことを大切にしています。さらに転職先の業界知識や企業側から求められる能力・スキル、面接官への伝え方などについて正確な情報提供と改善提案ができます。対話を重ねることで、求職者は新たな視点で長期的なキャリアを描くことができるようになる傾向があります。
私たちが対象としている層はいわゆるジュニア層と言われる若手人材のため、雇用形態も正社員ではなく非正規しか経験がない方も多い傾向にあります。また、持っている知識も特定の業界や職種に偏っていたり、経験したことのない仕事に対して実態とは異なるイメージを抱いているケースも少なくありません。そのため、エージェントがより多くコミュニケーションをとらないと求職者の本来のニーズや将来設計を把握することは難しいのです。求職者の伴走者として、自己分析のお手伝いからしっかりサポートしていくことが重要です。
求職者の人生観、価値観の根源を把握するほど手厚くフォローするため、必然的に求職者との関係性が強くなります。そのため転職後も仕事の悩みや相談を受けることもあり、今の職場でより活躍できるためのアドバイスをするケースもあります。
ー 最後に、今後の事業戦略を教えてください。
2027年までは現事業、つまり20代のキャリア創出支援事業の拡大に注力し、市場をとりに行きたいと考えています。また、20代のキャリア支援という観点で事業の横展開、近接領域への進出も検討しています。
2030年はこうした領域に加えて、20代起業家へのVC事業、つまり若手経営者への出資やキャリア支援も考えています。今あげたもの以外にも新規事業として挑戦する可能性もありますが、いずれにしてもミッション・ビジョン・バリューに合っているかが実行の判断を行う上での重要なポイントになります。
私たちの掲げるミッション・ビジョン・バリューに共感してくれ、ともに社会をよりよく変えていきたいという方と一緒に会社を作り上げていきたいと考えています。