水島 悠介
Marche株式会社代表取締役。大学在学中にメディア系スタートアップで月間1億PVのSEO担当兼、内部80名・外注400名の業務マネジメントを行う。その後、45億円を資金調達するVISITS Technologies株式会社にてマーケティング部の立ち上げ・toCマーケティング・40,000エントリーのイベント運営・toBマーケティング・IS・FS・カスタマーサクセス・新規事業を担当。フリーランスのマーケターとして活動後、2020年9月にMarche株式会社を設立。
1つの施策を熟知しているだけではマーケターとは言えない。マーケティングとは何かを考え続けた20代前半
ーー本日はよろしくお願いします。水島さんは1日20時間も働いていた時期があったそうですね。
よろしくお願いします。そうなんです。今では考えられないですが、学生時代はオフィスに泊まり込みで週120時間仕事をする生活をしていました。1日8時間しか働けないと、通常業務7時間、日々の改善に1時間のようなイメージで、時間が全然足りないと思いました。
例えば、100時間かかって完成する業務システムがあったときに、1日1時間しか時間が取れないと半年掛かってしまうんです。でも、週80時間残業すれば1週間で完成する。そんな事に気がついてしまって...笑
当時は徹夜でゲームをする感覚で仕事をしていたのだと思います。結果として、2人で立ち上げた部署を1年間で社内80人、外部400人という規模まで成長させることができました。また、そのおかげで月の売上も300万円だったところから、1億円ほどまで伸びたという1年間を20歳のときに経験しました。
ーー非常にストイックなエピソードですね。その後、別の会社に1人目マーケターとしてジョインされましたが、具体的にはどのようなことをしていたのですか?
累計45億円を資金調達したスタートアップで3年間勤め、最初はマーケティング部の立ち上げを担当しました。スタートアップだったということもあり、常に何か課題のある部署で仕事をしていたので、営業・架電・CS・イベント運営・店舗管理など様々な経験をしました。当時は、広告運用からビラ配りまで何でもやるマーケターと名乗っていました。
入社当初は、前職で身につけたSEOの経験を活かして1人目マーケターとして活躍できればと考えていました。しかし、事業を創る上では1つの施策ができるだけでは太刀打ちできないことを痛感しました。有機的に複数の施策を結びつける戦略を立てるために、改めてマーケティングを勉強したいと考えました。
そのため、出張でシリコンバレーに行った際、Amazon.comの日本進出責任者でありグロービスMBAにて「ベンチャー戦略」の教員をされている岡村 勝弘さんに弟子入りをお願いしました。岡村さんにアドバイスをいただきながら、マーケティングとは何かについて考え、ひたすら仕事をした3年間でした。
マーケティングに不可欠なものは徹底的な経営視点。新規事業だけでなく会社全体を変えるマーケターとしてのMarche
ーーなぜ水島さんはMarcheを設立しようと思ったのですか?
個人事業主時代、資金調達を終えた友人たちから「資金調達をしたけど、会社のお金をどこに投下したらいいのか分からない。マーケティングって何をしたらいいの?」という相談を毎週のように受けていました。
しかし、多くの人たちが広告はいくらの予算から回すべきか、SEOはいつ始めたらいいか、といった悩みを持っていて、ロードマップのない迷子状態になっていました。そんな中で様々なベンダーから「うちならばSEOをうまくやれます。成果が出るのに時間がかかるので早く始めたほうがいいですよ」という提案を受けており、そもそもその施策がその事業にとって必要か、いつからどんなリターンを期待して行うべきか、が判断できない状態にありました。
事業を理解し、財務状況に応じて戦略を考えられるマーケターは貴重であるため、「経営の武器としてのマーケティング」に取り組む会社を創ることが多くの会社を支えることになる。そのように考えて、Marcheを始動させました。
ーー実際に、Marcheは今までにどのような支援をしてきたのでしょうか?
8億円資金調達が完了したスタートアップ企業のマーケティング部の立ち上げを担当したり、上場企業の新規事業部門で1人目マーケターとして部署の立ち上げを行ったりしました。直近では、日本を代表する総合商社のエネルギー関連新規事業でマーケティング戦略を作ったりと、社会的インパクトの大きい仕事も手掛けるようになっています。
スタートアップ企業から「Marcheがいるから次の調達後もマーケターの採用はしない」と言っていただけたり、上場企業の経営企画の方から「来期の予算はMarcheと一緒に決めていきたい」と言っていただけるなど、少しずつ我々の提供したい価値が提供でき始めている感覚があります。
Marcheは1人目マーケターの経験が何回もできる場所
ーーMarcheが新規事業の支援に特化しているのはなぜでしょうか?
前職のスタートアップに入社した理由は、その会社の事業が自分の作りたい世界を実現できると思ったからでした。ただ、先程お伝えした通り、当時は実力・経験ともに不足していて、結果的にその事業は*ピボットしてしまいました。その時の悔しさは言葉にしがたいものがありました。自分の人生の意味を全うできなかった。そんな気持ちになりました。
これから自分の会社で新しい事業を立ち上げていく時に、SEO会社を作っても広告運用会社を作ってもあの時と同じ思いをする、と感じたのと同時に、自社のメンバーにも同じ思いをしてほしくないと強く思いました。
「社員が自分の人生の意味を全うできる会社」にするためにも、メンバーには手段を選ばず事業を成功させる力を身につけてほしい。そんな人達が集まった会社になれば、次の会社の成長フェーズが来た時に、非連続的な成長を起こせると確信しています。
*ピボット … 事業 / 会社の方向性を転換すること