※掲載内容は2026年2月時点の情報です。
タクシーアプリ『GO』のダウンロード数が3,500万を突破しました。タクシーが呼べるアプリとして、地位を確立した今、世間からは「一つの完成形」や「成熟している」状態にあると映るかもしれません。
しかし、事業責任者の江川はこの状況を、あくまで通過点に過ぎないと言います。見据えているのは、便利なアプリの単なる成功ではありません。鉄道会社がその沿線にゼロからまちづくりを進めたように、移動を起点に「次世代の社会インフラ」の一部をアップデートすること。そして、未来の日本を支え続ける巨大な基盤を築き上げることです。
この壮大な構想に対し、今どう向き合い、どのような力を持った仲間を必要としているのかについて、聞きました。
江川 絢也 GO株式会社 執行役員 GOアプリ事業本部 本部長
2007年リクルート入社。2013年ヤフー株式会社にてデータビジネスや新規広告事業の立ち上げを牽引。2017年より株式会社ディー・エヌ・エーにてタクシーアプリ事業の立ち上げ責任者を務め、事業統合に伴い2020年4月より現職。
鉄道会社にならう、次世代の「生活圏」デザイン
── 『GO』のダウンロード数は3,500万を超えていますが、責任者として、現在地をどう捉えていますか?
江川:数字だけを見れば順調に見えるかもしれませんが、正直なところ「まだ入り口に立ったに過ぎない」というのが実感です。
かつて鉄道会社が、移動手段の提供に留まらず、駅周辺の百貨店や不動産開発を通じて人々の生活圏そのものをデザインしたように、私たちが目指しているのも、単なる便利なアプリの成功ではありません。
今提供しているタクシーでの「移動」体験は、あくまで巨大な基盤を築くための第一歩。その上に、乗客の皆様への付加価値となるサービスや、将来的なタクシー事業者との自動運転の社会実装などを積み上げ、社会インフラそのものをアップデートしていくのはこれからです。その第一歩として、現状は、高頻度でタクシーを利用される方々へ圧倒的な乗車体験を提供し、揺るぎないユーザー接点を確立すること。そこに注力しています。
── その戦略の背景にある、江川さんの原動力はどこから来ているのですか。
江川:かつてリクルートやヤフーにいた際、ネット完結の仕事では海外の巨大なプラットフォームに対し、個人の工夫やスピードだけでは太刀打ちできない「構造的な限界」を痛感した局面が何度もありました。短期的には国内最適化で対抗できても、中長期では圧倒的なユーザー規模と投資余力の差で飲み込まれてしまう。その壁にぶつかるたび、純粋な悔しさを感じていたんです。
── その「悔しさ」が、GOへと突き動かしたのでしょうか。
江川:きっかけは、本当にプライベートなことなんです。10年前に娘が生まれた時、改めて自分の仕事を見つめ直しました。20代の頃は自分のキャリアのことだけを考えていましたが、いざ親になってみると、「30年後の日本社会はどうなっているのか」という問いが、急に生々しい手触りを持って迫ってきました。
日本経済の世界の中での影響力が、相対的に低下してきていることを実感する中で、その角度を少しでも緩やかにして、次世代につなぐのが自分たちの役割ではないか。「日本から世界に誇れる産業を、もう一度作らなきゃいけない」という思いが湧いてきたんです。
── タクシー業界は、法規制や既存の利害関係者との調整が非常に難しい領域です。複雑な状況下でどう意思決定を行っているのでしょうか。
江川:そうですね。実際、この領域で何かを変えようとすると、自分たちの考えだけでは動かない。変数が多くあり、国の政策、タクシー事業者、地方自治体、そしてユーザー、それぞれの利害が複雑に絡み合っています。
例えばタクシーに関連した制度変更や規制緩和はしばしばありますが、「制度が変われば全てが自然に良い方向に転がり、全員が喜べる」という単純な話ではありません。タクシー事業者にとって、ユーザーにとって、ひいては将来の日本社会にとって何が最適な進め方なのか、非常に高度なバランス感覚が求められます。
重要なのは、国レベルのマクロな制度の意味から現場の合意形成まで、すべての解像度を高めて「全方よし。」のシナリオを、あらゆる状況に対応できるよう複数描き切ることです。プランAがダメなら即座にプランB、Cを繰り出す。この思考の柔軟性と粘り強さが、新たなインフラを創る鍵になります。
事業を完遂させる、境界なき「何でも屋」の推進力
── そうした壮大な、かつ難易度の高い事業を推進するために、江川さんはどのような組織づくりをしているのでしょうか?
江川:私の方針はシンプルで「適材適所」に尽きます。「一人ひとりを手取り足取り育てよう」といった優しさは、正直あまりないかもしれません(笑)。組織全体がパフォーマンスを出せているということは、結果的に個々人も活躍し、成長している、という考え方なんです。
現在、GOアプリ事業本部は約90名の組織ですが、最大の特徴は「スペシャリスト」と「ゼネラリスト」の組み合わせにあります。マーケターやUX設計、業務企画・推進といったスペシャリストは当然必要です。しかし、事業環境が激しく変化する中では、専門家の間にある「誰の仕事でもないボール」が、現場ではそこら中にボコボコ落ちてくる。それらを確実に拾い、繋ぎ、ゴールまで運ぶ役割が不可欠なのです。
── その「何でも屋」に求められるのは、どのような能力ですか?
江川:一言で言えば、「事業を完遂させるための、境界線のない動き」ができる力です。
新しい課題が生まれたとき、「それは自分の職域ではない」と線を引くのではなく、自らそのカオスに飛び込んでいけるかどうか。サッカーで言えば、戦況を見ながらゲームを作り、柔軟にポジションを変えながら、時には自らゴール前まで詰めてシュートも打つ。そんな柔軟な立ち回りが求められます。
ホワイトボードの前で戦略を練る「視座の高さ」を持ちながら、同時に、タクシー事業者の現場へ足を運び、プロダクトマネージャーと仕様を詰め、時には法案の行方まで想像する。抽象的な思考と、泥臭い実行力。この両極端を自在に行き来して事業を完遂させる力こそが、今のGOに不可欠なピースなんです。
── GOでは、実際にどのような方が活躍されているのでしょうか。
江川:そうした動きができる30歳前後から40歳前後までのメンバーが30名ほどいます。特定のスキルが突出しているというより、複数のパラメータが高く、状況に合わせて自分の役割を可変させられる層です。
実際、私たちは「この難所を突破できるのは誰か」という視点で、配置をダイナミックに変えています。プロダクトマネージャーを務めていた人間が、次はマーケティング、その次は事業企画を担うといったことも珍しくありません。
── 大胆なジョブチェンジですね。
江川:全体最適の中で、その人の強みが活きる難所に配置し、「意思決定せざるを得ない打席」を次々と用意する。それこそが、プロにとって最高の成長環境になりますし、組織全体の対応力を高めることにつながると考えています。
そして、この何でも屋タイプの人材は、複雑性の極めて高い『GO』というアプリの事業において、市場から即戦力で採用するのが非常に難しい。だからこそ、ポテンシャルのある人材を採用し、激しい環境の中で揉まれることで、「最強のゼネラリスト」へと進化してもらいたいと考えています。
100年後の日本を支える土台を。「社会実装の当事者」へ
── 今、このタイミングでGOで働く面白さはどこにありますか?
江川:「次世代の社会インフラを構築する」という、日本の歴史に残るような変化を、最前線で作り上げられることでしょう。
例えば、自動運転が普及すれば、都市のあり方そのものが変貌するでしょう。これまでは「駅徒歩◯分」で決まっていた不動産価値が、道路環境へのアクセスや移動のしやすさによって再定義されるかもしれません。そうした社会構造の変化を、自らの手で築き上げることができるんです。
一方で、私たちの主戦場はステークホルダーが多岐にわたり、極めて難易度の高い問いが立て続けに押し寄せる領域です。それでも、「100年後の日本社会のために」という情熱を持ち、長い時間軸で物事を捉え、粘り強く最適解を導き出し続ける。そんな「解き甲斐のある巨大なパズル」に没頭できる方にとっては、これ以上ないエキサイティングなフィールドだと思います。
ここで数々の難所を突破した経験は、将来どんなビジネスの世界に行っても通用する、圧倒的な価値になるはずです。この壮大な社会実装の当事者として、自らの手で未来を確定させていく。そんな野心を持った方と共に、歴史に残るような“コト”にチャレンジしていきたいですね。