弊社Daisybell Japanでエグゼクティブアドバイザーを務める田畑は、コールセンター業務受託の会社でキャリアをスタートし、Yahoo! JAPAN、楽天、EPARKと一貫してカスタマーサービスの現場に携わってきました。国内EC企業として初めて世界標準規格COPCの認証タイトルを取得するなど、現場改善において20年以上の実績を重ねています。
現場25年の視点から見た音声AI導入のリアルを、全3回にわたって聞くインタビューの第2回。テーマは「AI音声対応、現場のリアル」です。
これまでの音声認識自動応答との違いから、応答精度をどう見極めるか、そして採用難・離職といった現場の構造的な課題にAIがどう向き合えるのか──検討中の企業が一番知りたい「精度の中身」を、専門家の視点で具体的に聞きました。(聞き手:Daisybell Japan 広報担当)
目次
1. ChatGPTの衝撃と、Daisybellとの出会い
── ChatGPTが登場したときの印象を教えてください。
田畑:ChatGPTで会話ができる機能を初めて体験したときは、本当に衝撃的でした。これでコールセンターが変わる、と率直にすぐ思いましたね。
── その後、音声AIの動きをどのように見ていましたか。
田畑:私のパートナーに優秀なエンジニアがいて、内製でそうしたものを開発していました。ある程度形になっていましたので、こうしたソリューションがいずれ世に出てくるのだろうと強く感じていました。
昨年ごろからこうしたソリューションが実際に出てきましたが、機能や精度、価格の面で、まだ市場に合っていない部分もあると感じていました。
── そんな中で、Daisybellとはどのように出会いましたか。
田畑:知人とのご縁がきっかけです。サービスの説明を聞き、デモを体験したときに、特にAIと直接会話した際の精度に正直驚きました。あわせて価格帯にも驚いたというのが、率直な第一印象です。
── 数ある選択肢の中で、アドバイザーとして関わることを決めた理由を教えてください。
田畑:精度と価格です。昨年、パートナーとこうしたソリューションが必要になると話していたものが、すでにできあがっていました。価格帯も含めて他社と比較しても、現時点で知り得るソリューションの中では、一番コールセンターにマッチしていると思いました。
もう一つの視点として、ツールベンダーに足りないのは、コールセンター全体に対する網羅的なコンサルティングスキルだと考えています。私は事業会社側の人間ですから、ツールの選定やリプレースは、全体の課題の中の一つにすぎません。
課題を俯瞰して中長期で考えたとき、AIが担う部分、人が改善する部分、仕組みで改善する部分があります。そうした総合的な視点が必要だと考えたことも、理由の一つです。
2. 割り込み・相槌・共感力── AIの応答精度を見極めるポイント
── これまでの音声認識自動応答と比べて、明確に違うと感じた点はどこですか。
田畑:ChatGPTが出る前から、ボイスボットの各ソリューションを比較選定し、実際に導入もしてきました。ただ、それらは決められたフローチャートに沿って、AI側が質問してお客様が答えるという、非常に定型的なものでした。どんな表現で話しかけても自然に会話して応えるものは、これまでなかったと思います。
── 応答の精度は、どのような観点で見極めるものでしょうか。
田畑:お客様は、オペレーターの話を遮って追加情報を話されることがありますよね。そういうときに、AIが一旦話を止めて聞き、その内容も考慮して回答する。これは非常に優れた機能だと思います。
もう一つが相槌です。相槌のたびにAIの説明が止まってしまうと、お客様は話しづらいですから、会話を止めずに話し続けられるのは大切なポイントです。こうした機能が非常に早いスピードでバージョンアップされていることも、技術レベルの高さだと感じています。
── 共感力や、ご高齢のお客様への対応についてはいかがでしょうか。
田畑:これまでのAIソリューションに、共感力はなかったと思っています。ところが、お客様に対して「大変申し訳ございませんでした」と、共感を持ったお詫びができている。お客様満足度調査(サーベイ)で重要な要素は共感力ですから、ここが実現できていることも精度の一つとして素晴らしいと思います。
もう一つは、会話のスピードをコントロールできることです。ご高齢のお客様はゆっくり話される方が多く、早く話しかけてしまうと伝わりにくくなりますが、そのスピードに合わせられるのも特徴だと思います。
── シリコンバレーで開発され、月1,000万件を超えるグローバルの通話データで磨かれていることは、精度にどう寄与していると思いますか。
田畑:サンプル数が多いほど、課題の発生頻度や、改善したときの効果検証ができますので、そうした効果はあると思います。月に1,000万件という数字は、非常に大きな規模です。
3. 採用難・離職・応対品質のバラつき── 現場が抱える構造的な課題
── 今、日本のコールセンターが抱えている課題を、深刻な順に挙げるとどうなりますか。
田畑:まず採用の難しさです。時給はどんどん高くなっていて、そのうえすぐに辞められてしまいます。特に電話応対は敬遠されていて、チャットやメールなどのノンボイス業務なら採用できるという声が現場ではよく聞かれます。
── 特に若い世代は、電話を避ける傾向があるようですね。
田畑:LINE世代ですから、電話は嫌われますね。ただ、ノンボイスがいいと言っているのは、人と話すのが億劫、感情を互いに感じるのが負担、ということだと思います。AIと会話することと、人と会話することは、おそらく違うのではないでしょうか。
これは何の根拠もありませんが、AIが電話で対応するなら、ノンボイスのチャットよりも、もう一度電話での問い合わせに原点回帰するのではないかと思っています。話した方が早いですからね。
── 応対品質のバラつきについてはいかがでしょうか。
田畑:私がコンサルティングに入るときに見るポイントが、オペレーター別の生産性、品質、業務習熟度、勤怠遵守率のバラつきです。かなりバラついていることが多く、ボトム20%を改善するだけで、全体の生産性・品質・勤怠に大きな改善効果が出ます。ここが現場の最も直面している構造的な課題と言えます。
4. 応対率100%のインパクトと、業務ごとの向き不向き
── 取りこぼしている電話があること自体に、企業はどの程度気づいているとお考えですか。
田畑:応対率で確認しますので、基本的には可視化されていて、認識されていると思います。ただ、本当は電話して解決したいのに諦めているお客様は、多くいらっしゃるはずです。これは機会損失や離反につながる可能性がありますから、事業にとっては、本来もっと電話をいただいた方が良いと思います。
一方でコールセンターは、問い合わせが増えるほど費用が発生します。費用は抑えたい、でも離反は避けてリピート率を上げたい、という相反する考え方があるわけです。人件費で考えると安価なソリューションですから、困ったお客様の声をより多く受け止め、応対率100%で解決していくのが良いと思います。
── 応答できていなかった電話がすべてつながる水準は、業界の常識に照らしてどう受け止めるべきでしょうか。
田畑:これは衝撃的だと思います。応対率の目標値は、85%が妥当だ、90%であるべきだ、受注を扱うなら100%だ、とさまざまな議論がありました。このAIソリューションは基本的に応対率100%ですから、その議論自体をなくすわけです。
困ったお客様が問い合わせをせず、セルフサポートでも解決しないと、離反してしまいます。致命的なトラブルが起きたお客様には、電話をすればすぐにつながる環境が欲しいわけで、そういう環境になり得るソリューションだと思います。
── 特に効果が現れやすい業務はどこだとお考えですか。
田畑:まず深夜の時間外対応です。深夜は人件費単価がとても高く、人材の確保も本当に難しい時間帯です。Daisybellの単価は昼間と同じですので、コストへのインパクトは大きいと思います。
次にインバウンドの一次受付です。アウトバウンドの架電は、こちらが求めた時間に、1時間に何件と、件数をコントロールしやすい点が特徴です。さらに、効果の大きさで言えば、アウトバウンドが2番目になる可能性もあると思っています。
お客様とつながって会話した時間だけが課金対象ですので、つながらなければ費用はかかりません。人が架電する場合は、つながらなくても人件費がかかりますから、ここは大きな違いです。
5. 現場の不安と、SVの役割変化
── AIが入ることに現場が身構えるとき、その不安の本質はどこにあるとお考えですか。
田畑:間違いなく、自分の仕事が奪われるのではないか、なくなってしまうのではないか、という不安です。ここに尽きると思います。特にスーパーバイザー(SV)やマネージャーの方が、そう身構えられることが多いですね。
ただ、安心していただいて良いと思います。なくなるのではなく、役割が変わるんです。
── SVの役割は、具体的にどのように変わるのでしょうか。
田畑:これまでSVは、教育・トレーニング、モニタリング、定着率、バラつきの可視化、生産性の向上、ソリューションの設定、エスカレーション対応、クレーム対応の交代まで、すべてを担っていました。まさにスーパーマンです。
そのほとんどがなくなり、代わりにAIソリューションのチューニングを担う役割に変わっていきます。今後ますますニーズが高まる役割ですし、導入時から一緒に、そのスキルセットを身につけていただけると思います。
── 現場の受け止めが前向きに変わった瞬間は、ありましたか。
田畑:いろいろな企業様の支援に入ってこのソリューションを紹介するのですが、特にSVの方に、とても喜ばれます。採用や育成の苦労、離職率、業務習熟度のバラつき、モニタリングとフィードバック。こうした苦労が基本的になくなると伝えたときの、SVの方の笑顔は忘れられません。
SVとオペレーターの比率は、一般的に1対7と言われますが、エスカレーションが少ないセンターになれば、1対20や1対30という世界も考えられます。それだけ大きな変化になり得ると思っています。
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