弊社Daisybell Japanの星野は、建築系専門商社、リクルート(ホットペッパービューティー)で営業経験を積み、立ち上げ期のDaisybell Japanに初期の営業メンバーとして参画。新規開拓から契約後のカスタマーサクセスまでを一貫して担当しています。
営業の最前線から見た音声AIのリアルを、全3回にわたって聞くインタビューの第2回。テーマは「導入企業で実際に何が起きているか」です。
代表的なユースケースから、人の約7倍という架電量が生んだ変化、電話が「分析できるデータ」に変わる価値、そして導入の実際の流れまで──検討中の企業が一番知りたい「効果の中身」を、具体的に聞きました。(聞き手:Daisybell Japan 広報担当)
目次
1. まずは「任せられる業務」から始める
── 日本の導入企業では、まずどんな業務から任せていくのですか。
星野:「本当に電話対応をAIに任せて大丈夫なのか」という不安を持たれる企業がほとんどなので、「この業務ならAIに任せられる」という範囲を、一緒に決めていくところからスタートします。いきなり全部ではなく、任せやすい業務から段階的に、というのが基本です。
── インバウンド(受電)では、どんな使い方が代表的で、どう電話をさばくのですか。
星野:代表的なのは、営業時間外・夜間の問い合わせ対応、設備トラブルの受付、代表電話の一次受付です。問い合わせ内容がある程度パターン化されている業務ほど相性がよくなります。
流れとしては、AIが最初に「誰からの電話か」「何の問い合わせか」「何を希望しているか」「緊急度はどれくらいか」を確認し、その上でAIだけで回答する・担当部署へ転送する・折り返し対応にする、と振り分けます。人が対応すべき電話だけを人につなぐイメージです。
── アウトバウンド(発信)では、いかがですか。
星野:基本は、新規営業の一次架電、督促、リマインド、アンケート調査といった使い方です。AIが最初の接点を作り、興味がありそうな企業や具体的な提案が必要な相手には後から人が折り返す。その場で温度感が高いと分かれば、直接人に転送してそのまま対応する、という流れも取れます。
2. 架電量は人の約7倍── アウトバウンドで動いた数字
── 導入後の効果を、人が架電する場合と比べて具体的に教えてください。
星野:前回お話しした、コールセンター事業で豊富な実績を持つ企業の例です。BtoBのインサイドセールス(法人向けの新規開拓架電)でAIが日々架電していて、まず明確に効果が出ているのがアプローチ件数です。
どれだけ経験のあるオペレーターの方でも、人が1日にかけられる件数には限界があります。AIはその制約がなく毎日安定してかけ続けられるので、熟練のオペレーターと比べて約7倍の架電量を実現できています。
── 量だけでは意味がないと思いますが、成果はどう測っているのですか。
星野:おっしゃる通りで、単純に大量架電できればOKではありません。指標のひとつにしているのが、ご担当者様への到達です。ただし人が架電したときと同じ基準ではなく、担当部署が分かった/ご担当者のお名前が直接聞けた/「資料を送ってください」と明確な反応があった/ご担当の方がいらっしゃる時間帯が聞けた、といった部分を「情報取得率」と定義して運用しています。
── その情報取得率は、どう変化しましたか。
星野:始めた当初は1%を下回ることも多かったのですが、実際の通話ログからフィードバックを繰り返した結果、今では平均2%、多いときで3%程度で稼働できるようになりました。
ここで大事なのは、導入した瞬間が完成ではないということです。導入後に「今どんな課題があるのか」「なぜ成果が出ていないのか」を分析し、トークの回答や切り返しを修正して再度架電し、結果を見る。この改善サイクルを回し続けることこそが、成果を左右します。
3. 電話が「分析できるデータ」に変わる
── 数字に表れにくい変化で、お客様が喜んでいることはありますか。
星野:結構感じるのは、電話の通話ログがそのままデータになることです。大きな会社でも、意外と通話ログは管理できていません。録音は取っていても、その先の日々の業務改善に活かされていない企業がほとんどで、すぐ見られる環境がないことも大きな要因です。
Daisybellの管理画面では、録音はもちろん、通話内容をすべて文字起こしと要約で確認できます。AIで対応して終わりではなく、電話そのものを分析可能なデータに変えられる。ここは喜ばれることが多い部分です。
── そのデータは、どう活きていくのでしょう。
星野:アウトバウンドなら、アポが取れない原因が必ずどこかにあるはずで、トークスクリプトの品質改善につなげられます。どんな人がどのタイミングで入社しても一定の成果を残せる仕組みにも展開できます。インバウンドでも、同じ質問が何度も来る・特定の商品への問い合わせが多い・同じポイントで詰まる・この時間帯に集中する、といった傾向が蓄積されるので、FAQやWebサイト、商品説明を先回りで改善することにも活かせます。コスト削減の手段としてだけでなく、こうしたデータが蓄積できること自体が企業としての新たな価値になっていく、と受け止めていただいています。
── お客様から実際に言われた言葉で、印象に残っているものはありますか。
星野:個人的に一番嬉しいのは、AIそのものの技術を褒めていただくことよりも、「次はこの業務にも広げられるんじゃないか」と、社内で広げようと動いてくださることです。「本当にAIで大丈夫なのか」と不安にされる方はまだ多いので、デモや導入の後に「もっとこういうところで使えるよね」「この部分も改善したい」とご相談が増えていくのは、営業として嬉しい瞬間です。
── うまくいくことばかりではないと思います。正直なところはいかがですか。
星野:そうですね。まだプロダクトとして弱い部分もあり、AIの回答がよくなかったり、そもそも応答できなかったりも必ず発生します。全員が最初からAIに前向きなわけでもありません。そういったところも日々改善しながら、小さな成功体験を一つずつ積み重ねていくことが重要だと思っています。
4. 最短1ヶ月で立ち上がる── 導入の流れ
── 導入はどんな流れで進み、お客様側では何を用意すればいいのですか。
星野:AIの導入は「時間がかかって大変そう」「初期費用もランニングコストも高そう」と思われがちですが、外部システムとの複雑な連携がなければ、比較的スピーディーに進むことがほとんどです。まず問い合わせ内容の初回ヒアリングを行い、実際に使いたい業務のマニュアルや会話フロー、スクリプトをいただきます。それをもとに我々がデモを作り、お客様に体感いただき、フィードバックと修正を繰り返して本番稼働まで持っていきます。
ご用意いただくのは、現在の電話マニュアルやスクリプト、よくある問い合わせのFAQ、実際のオペレーションや対応フローが分かるものです。「AI用の仕様書を一から作ってください」とお願いすることは一切なく、今の業務内容を共有いただければ、それをDaisybell側でAIに落とし込んでいきます。
── 期間はどれくらい見ておけばよいですか。
星野:早いケースでは、1ヶ月かからずに本番稼働まで進むこともあります。時間がかかるのはシステム連携が発生する場合で、Salesforceやkintone、自社開発のCRMといった基幹システムとつなぐ際は、要件のすり合わせやAPI連携が必要になります。それでもAPI接続は平均約1ヶ月が目安です。
── 連携まで全部そろえてから始めるべきでしょうか。
星野:いえ、すべてを完璧にしてから始めるより、徐々に連携やAIの応対範囲を広げていく進め方をおすすめしています。実際に使える状態と成果を確認し、安心感を持っていただいた上で広げていく。この進め方が結果的にうまくいくと考えています。
5. 現場で初めて分かることもある── 期待値調整と進化
── 正直に伺います。うまくいかなかった導入と、そこから学んだことは。
星野:要件定義で十分にやり取りし、導入前にはDaisybell側でも十分にテストをしていますが、それでも実際に現場で動かして初めて分かることは多いと感じています。本番環境でしか起こりえない突発的な質問、電話環境の雑音でAIが正確に聞き取れない、受話器越しの声が小さくて認識できない、といったケースは実際に発生しています。
だからこそ、最初から100%完璧なAIを作ってスタートする、という考え方は現実的ではありません。ある程度の完成度は当然大事にした上で、稼働後もアップデートし続けることを、お客様にもしっかり認識いただいた上で進めるのが大切だと思っています。
── 導入前の期待値調整では、何が重要になりますか。
星野:AIにどこまで求めるのかを事前に明確化し、できないことはできないと、はっきりお伝えしておくことです。相手の細かな温度感や、日本語特有の微妙なニュアンス、関係性の判断は苦手です。表面上は断っているけれど人間なら粘れば取れそう、という独特の空気を読むのは、やはり難しい。一方で、大量に電話をかける・受ける、決まったことにテンポよく答える、というのはAIが得意な部分です。この切り分けを事前にしておくことが成功につながります。
あわせて「何をもって成功とするか」のすり合わせも欠かせません。応答率が100%になれば成功なのか、情報取得率が5%に届けば価値があったと言えるのか。ゴールの定義を最初に合わせておくことが非常に重要です。
── 営業として、プロダクトの進化スピードと、日本のお客様の声の反映はどう感じていますか。
星野:半年前と今ではかなり違います。イントネーション、同時に対応できる電話の数、外部システム連携のスムーズさ、会話のレスポンスの速さ。この半年でも明確に改善しました。
日本のお客様の声も、よく反映されます。「この言葉の発音を改善したい」「この条件なら人へ転送したい」「この情報を自動取得したい」といった要望を開発チームへ共有すると、優先度を判断した上で早ければ翌週、開発難易度が高いものでも数週間ほどで反映されることもあります。
細かなチューニングは日本のエンジニアチームが担っていて、かなりのスピード感です。売って終わりではなく一緒に育てていくもの──その感覚がお客様とかみ合うと、精度が上がるだけでなく、社内の別の用途へも広がっていきます。その「お客様との伴走」については、最終回で詳しくお話しします。
Daisybell Japan株式会社:
https://www.daisybell-ja.ai/
公式Facebook:
https://www.facebook.com/profile.php?id=61591484472929