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追求してきたものはデジタルでも活かせる。越境デザイナーが目指す「新しい体験」のデザイン

今回インタビューしたのは、フォーデジットのSERVICE DESIGN Div. でアートディレクターを務める荒井康豪さん。グラフィックデザインで20年以上のキャリアを持ちながら、なぜデジタルデザインの領域へ挑んだのか?「これからのブランディングは、デジタルの知見がないとできない」と語る彼の、デザインにかける思いを聞きました。

荒井 康豪 Yasuhide ARAI - 2019年入社
SERVICE DESIGN Div. アートディレクター

20年続けたグラフィックデザインからデジタル領域へ

− 現在の仕事内容について教えてください。

SERVICE DESIGN Div.のアートディレクターとしてプロジェクトに携わっています。サービス全体に一気通貫のブランド体験をつくる、そのためのあらゆるデザインをしています。

何かサービスを利用するとき、サービスに出会う前のポスターやチラシ、プロモーションサイト、会員サイトやアプリなど、さまざまなものに触れますよね。そこに統一した世界観をつくるアートディレクション、というイメージです。大きなサービスになればなるほど制作物も増え、関わる人も多くなり、全体のデザインを見る人ってこれまでなかなか居なかったんだと思います。自分たちでは「デザインヘッドクォーター」なんて呼んでいます。

− 具体的にどんなものを作るんですか?

大元のサービス内容や情報設計から、もう本当に細かいWebサイトのボタンの動きや注意書きの文言まで。トンマナや世界観を作るものすべてです。アートディレクターとしてアウトプットに責任を持ってはいますが、指示するというよりデザイナーと一緒に考えていきます。ゴールは「どうすればより良い体験を作れるか?」なので、実際に作る部分だけでなくリサーチやユーザーテストにも参加しています。

▼SERVICE DESIGN Div. 事例

https://www.4digit.com/projects/imhds-01

− これまでのキャリアについて教えてください。

最初にデザインに興味を持ったのは雑誌です。大学を卒業して、雑誌系のデザイン事務所でアルバイトを始めました。今では考えられないぐらいブラックでしたね!休みもないし徹夜続きで…。原研哉さんの「ポスターを盗んでください」を読んで耐える日々でした。デザインにはこういうことができるはずだ、こういう世界があるはずだって。その頃から、日本デザインセンターに入りたいと思っていました。

その後転職して、アニュアルレポートを作る会社に。アニュアルレポートって日本ではあまり話題にならないですけど、欧米だとすごく重要な企業ブランディングなんです。世界中の様々な企業のアニュアルレポートをたくさん見て、そこからブランディングデザインに興味を持つようになりました。ワッと一瞬盛り上がるものよりも、何年も時間をかけて事業のためになるようなもの。そういうデザインの方が興味を持てたし、自分に合っている気がしました。

− その後、憧れだった日本デザインセンターに入社されています。どうやって自分のデザインを磨き上げていきましたか?

入ってみたら華やかでもなんでも無いんですよ!(笑)目の前のものをひとつずつきちんと作っていけば、仕事はある程度できるようになると思います。ただ誰が見ても「あの人が作った」とわかるようなものはなかなかできない。とにかく何でもやって「荒井が作った」と思われないとダメだなと思っていました。それで当時は個人的なアートワークとか、友人のショップのツールとか、仕事以外の制作をずっと繰り返していました。前時代的なのかもしれないんですけど、そういうよくわからない鍛え方をしないと、個性や持ち味みたいなものは磨かれないのかなと、個人的には思っています。

グラフィックデザイナーこそDXするべき

− グラフィックデザインの長いキャリアを持ちながら、どうしてデジタル領域に?

デザインって、好きでやっているんだからいろいろ無理できるでしょと、お客さん側から言われることが結構多くて、それがすごい嫌だったんです。でもグラフィックデザインの世界にいると、それを否定しきれない自分もいて。極端に言えば、クライアントのお金を使って表現をしている、と言えなくもないですよね。それが自分の中でずっと引っかかっていたんです。自分のための表現じゃない、社会のため、ユーザーのためみたいなものができたら、変なモヤモヤが無くなるのかなと。そう考えた時に「ユーザーのため」というゴールが実現しやすいのが、デジタル領域のデザインでした。

あとはもう時代の変化というか。CI(Corporate Identity)・VI(Visual Identity)だけ作ってブランディング、って今ではもう全然足りないじゃないですか。その世界観をすべてのサービスやツールに練り込んでいかないと、これからのブランディングは達成できない。それこそすごく細部のボタンの動きだったり、注意書きのテイストだったり。そうなったときにデジタルの知見がないと、本当の意味でのブランディングは実現できないんじゃないかと思ったんです。グラフィックもデジタルデザインの中に当たり前に内包されているし、大きな方向転換をしたつもりはなくて。あくまでブランディングを突き詰めていく流れにいると思っています。

− デジタルデザインの醍醐味を教えてください。

デザインしたサービスが広く使われているという実感がすごく嬉しいです。アプリのダウンロード数や、SNSでの評判なんかで実感します。携わったサービス名でエゴサーチとかめちゃくちゃしてます!(笑)

グラフィックデザインの達成感は大きな広告掲出やアワード受賞などにありましたが、デジタルデザインはユーザーが見えるのが醍醐味です。実際に使われている、たくさんの人が体験しているということに、自分はすごく意義を感じていて、そういうプロジェクトに携わりたいという思いが強いです。

− デジタルに媒体が変わり、デザインする上で変わったことはありますか?

今となってはないです。違いはないんじゃないかって思ってます。最初はやっぱり質感、シズル感のようなものが違うと思っていました。例えば倉庫に何十年も眠っていた紙のような、アナログ媒体の雰囲気、モノ特有の積み重なった深度みたいなものが、デジタルだとどうしても出しづらいと思っていたんです。

でもその見て触った感覚を、一度自分の中に取り込んで翻訳して、その「感じたもの」をデジタルで再現することはできるんじゃないか?デジタルデザインには、ビジュアルだけでなくモーションやインタラクションがあって、その気持ちよさで肌触り、空気感を作り出すことができます。それはアナログ媒体に負けないくらいの、ものすごく奥深い表現ができるのではないかと思っています。

技術だけでなくデザインで「新しい体験」をつくる

− グラフィックデザイナーが、デジタル領域で活躍できることは何でしょう?

コンサルティングに強みを持つ人たちと、全く違う強みを持っていることです。自分は「右脳と左脳をいったりきたり」と表現しているんですけど。サービスデザインでは、機能や設計をロジカルに考える左脳的な部分と、感性に訴える右脳的な部分の両方が必要で。今サービスデザインに携わっているのは左脳的な人たちが多いんじゃないか?と感じているんです。

「デザイン」を日本語で言うと「設計」ってよく言われますよね。「デザイン」が見た目だけでなく機能やサービスの根っこに関わるものになって、「設計」と呼ばれるようになった。でも「デザイン」という言葉を「設計」だけに取られていいんだっけ?って思うんです。人の感性に訴えかけたり、肌触りや空気感をつくることも自分は「デザイン」と呼びたい。

グラフィックデザインで習熟してきた人たちは、右脳的な強みを持っていると思っています。長い歴史あるデザインやアートの文化で、切磋琢磨してきた感覚があるんです。その良さは絶対にデジタルでも活かせるし、その融合によってサービスデザインはもっと面白くなるんじゃないかと思っています。

− 今後目指していることはありますか?

サービス全体のデザインを全部見る、っていうのを突き詰めていきたいです。最近はデジタル起点で広告や印刷物に展開していくプロジェクトも増えています。ユーザーの目線から見て一貫したブランド体験を作るために、自分の技術的にもチームや組織としても「全部見る」の精度を上げていきたいです。

あとはアウトプットのジャンルにはこだわらないのですが、新しい体験を作りたいです。「枯れた技術の水平思考」ってあるじゃないですか。新しい体験を作るのは最先端の技術だけじゃないんです。新しい技術は一般化するまでには何十年もかかるし、今あるものを組み立てて全く違う体験をつくるっていうのはまさにデザインの役目で、自分の興味もそこにあります。エンジニアリングとデザインを掛け合わせて、新しいサービスやプロダクトを作りたいですね!

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