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太陽と月の物語

 この文章を書くために、メールを遡って調べてみたら、2012年3月のことだった。台湾に帰郷していた神戸在住の友人から、台湾土産にと紅茶を一缶いただいた。実のところ紅茶は渋すぎてあまり好んでは飲まなかった。だいたい「おみやげの台湾茶ってふつうウーロン茶じゃないのか」と怪訝に思ったのだが、当の友人が言うに、台湾の日月潭の名産は紅茶だとのこと。
 せっかくいただいたものだし、手をつけず死蔵するのも申し訳ないと思い、その紅茶を家で淹れてみたところ、いわゆる紅茶の味とはまったく違う、やわらかく優しい口当たりに驚く。
 それが台湾の紅茶、日月潭紅茶だった。
 このとき自分は日月潭を訪れたことはまだなく、台湾のどの辺りにあるのかもよく知らなかった。

 日月潭とは「太陽と月の湖」といった名称だけど、最後の一字を言偏の「譚」に変えれば「太陽と月の物語」になる。もしかして「日月潭」という名前は、太陽と月にまつわる原住民の神話に由来するのかなと漠然と想像していた。