エラー(失敗)はリスクではなくコストだ
失敗を恐れ、挑戦を避ける人たちへ
私はこれまで、数え切れないほどの失敗をしてきた。時には悔しい思いをし、どうすればよかったのかを考え続けてきた。でも、その経験があったからこそ、今の自分がいる。そして、過去の私と同じように悩み、挑戦をためらう人たちに伝えたい。
失敗は悪ではない。エラーは避けるものではなく、成功のためのコストなのだ。
エラーを「リスク」と考える誤解
多くの人が、エラーを「リスク」と考えている。しかし、それは本当にそうだろうか?
もちろん、
- 事業継続が危ぶまれるリスク
- ブランドが毀損するリスク
- 人命に関わるリスク
これらのリスクは慎重に回避すべきだ。だが、日々の業務や新しい取り組みの中で発生するエラーは、それとは異なる。「許容すべきコスト」として捉えるべきものだ。
挑戦しなければ価値は生まれない
未知の課題に挑めば、エラーは必ず発生する。エラーがないということは、新しいことに挑戦していない証拠とも言える。挑戦を避ければ、新たな価値は生まれず、結果として個人も組織も成長が止まってしまう。
それでも、エラーを避けようとするのはなぜだろう?
本当のリスクは「評価のリスク」なのかもしれない
実際、エラーを「リスク」だと感じる人の中には、「エラーをすると評価や査定に響くリスク」を恐れている人もいるだろう。確かに、そういう企業があるのも事実だ。
そういう会社では、最適解が「失敗しないこと」になってしまう。しかし、そうした環境では挑戦しにくくなり、成長の機会を逃してしまうことも多い。エラーを過度に恐れる文化があると、新しい試みが生まれにくくなり、組織としての成長も停滞してしまう。
もし「失敗しないこと」が最優先の環境にいるなら、それが自分にとって本当に最適な環境なのか、一度考えてみるのもいいかもしれない。
エラーはコストであり、投資である
コストとは「発生することが前提」のものだ。もちろん、無駄なコストは減らすべきだが、ゼロにはできない。たとえば、
- すぐに取り組めば3営業日で結果が出る施策を、エラーを恐れて何度も会議を重ね、3ヶ月かけてしまう。
- エラーを避けようと慎重になりすぎて、意思決定が遅れ、競争優位性を失う。
こうしたケースでは、エラーを恐れるあまりに生まれるコストが、逆に大きな損失を生んでしまっている。慎重に進めるべき「リスク」と、許容すべき「コスト」を混同すると、本来不要なコストまで発生してしまうことがある。コストを回避するためにコストをかけるような状況になってしまう。
さらに、試行回数が減ることで得られるはずの学びや成長が失われる。これは「機会損失」という名のコストでもある。
早く転び、早く学ぶ
「早く転ぶ(Fail Fast)」という言葉がある。早期に失敗し、そこから学び、改善することで、最終的な成功確率を高めることができる。私自身、これを何度も経験してきた。失敗するたびに悔しい思いをしてきたが、その積み重ねが今につながっている。
漫画『Dr.STONE』では、登場人物たちが試行錯誤を繰り返しながら科学の発展を進めるが、誰も失敗を謝罪しない。むしろ、「この方法ではダメだった」という知見を得たことを前向きに捉えている。
失敗を過剰に恐れ、謝罪する文化があると、挑戦が生まれにくくなる。絶対に成功する方法があると信じている人もいるかもしれないが、それは「当たり馬券だけ買えば損をしない」と言っているようなものだ。そんな確実なものは、ほぼ存在しない。
エラーを避けることが最適解なのか?
エラーはリスクではなくコストであり、投資でもある。そして、それは挑戦の証だ。挑戦にかかるコストを「無駄」と考えるなら、それは本当にそうなのか、もう一度考えてみる価値がある。
私は、失敗を悪とは思わないし、謝る必要すらないと考えている。むしろ、素早くトライ&エラーを繰り返し、成果を最速で出すことこそが理想的な姿だ。
エラーをリスクと考えるのではなく、コストとして許容し、積極的に投資する。この考え方が、新たな価値を生み出し、未来の可能性を広げていくのではないだろうか。